表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

宵の芯

 泣きじゃくっていた。

 部屋のベッドで体を抱え込むように丸め、ひたすら泣きじゃくっていた。この際、制服がしわになったって構わない。目が腫れたって気にしない。ただただ、悲しい。


 暁に会えないのは悲しい。辛い。

 けれど、父親のことを知らなかったのも、苦しい。



 あたしは今、どっちを取るべき?

 暁に会うには父親をないがしろにしなければいけない。父親を知るためには暁のことをあきらめなければならない。

 そんなこと無理だよ。あたしはできない。どっちも選べない。


 また、家族になりたい。


 そう思った途端、その思いは幼いころからずっと持っていたもののような気がして、さらに涙が溢れてきた。

 母さん帰ってきて。父さんは普通に戻って。暁も女の子として生活をして。あたしはお嬢様じゃない、ただの娘になりたい。


 四人家族。幸せだったはずなのに。これからだって幸せに暮らしていけるはずなのに。


 幼いころから、あたしはこんなことを思っていたのか。こんな風に思わなければならなかったのか。

 あたしは不幸? これは悲劇? 違うけれど。そんな大層なもんじゃないけど。でも、そう思わざるを得ないほど、歪んでいるのだ。この家族は、あたしは、歪んでいる。



 あぁ、普通になりたい。ゆがみのない、ただの家族に戻りたい。


 かつてあったはずの、道端にさえ転がっていそうなはずの、その思いは涙となって消えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ