宵の芯
泣きじゃくっていた。
部屋のベッドで体を抱え込むように丸め、ひたすら泣きじゃくっていた。この際、制服がしわになったって構わない。目が腫れたって気にしない。ただただ、悲しい。
暁に会えないのは悲しい。辛い。
けれど、父親のことを知らなかったのも、苦しい。
あたしは今、どっちを取るべき?
暁に会うには父親をないがしろにしなければいけない。父親を知るためには暁のことをあきらめなければならない。
そんなこと無理だよ。あたしはできない。どっちも選べない。
また、家族になりたい。
そう思った途端、その思いは幼いころからずっと持っていたもののような気がして、さらに涙が溢れてきた。
母さん帰ってきて。父さんは普通に戻って。暁も女の子として生活をして。あたしはお嬢様じゃない、ただの娘になりたい。
四人家族。幸せだったはずなのに。これからだって幸せに暮らしていけるはずなのに。
幼いころから、あたしはこんなことを思っていたのか。こんな風に思わなければならなかったのか。
あたしは不幸? これは悲劇? 違うけれど。そんな大層なもんじゃないけど。でも、そう思わざるを得ないほど、歪んでいるのだ。この家族は、あたしは、歪んでいる。
あぁ、普通になりたい。ゆがみのない、ただの家族に戻りたい。
かつてあったはずの、道端にさえ転がっていそうなはずの、その思いは涙となって消えた。