宵の悩
「明星って子、俺の出身校にいたみたい。珍しい名字だし、多分間違いないと思うけど」
いつものように部屋に来て、そう知らせてくれた想太さんは、いつもと変わらず優しかった。
「ほんとですか!」
暁が、近くなった。
そのことに胸を躍らせ身を乗り出せば、途端に眉を下げた想太さん。
「でもね、転校しちゃったんだって。転校先はわからなくて…」
申し訳なさそうに言った想太さんに、首を振った。
「いいんです。そのとき確かに暁がいたって、確認できただけでもうれしいですから」
ありがとうございます、小さくつぶやいてうつむけば、想太さんが肩に手を置いた。
「大丈夫。きっと見つかる」
その優しさに、危うく涙があふれるところだった。けれど、それを必死に我慢してうなずく。
「ありがとうございます」
本当は、お父さんから「暁のことを忘れろ」という手紙が来たことを相談するつもりだった。相談して、解決策をもらって、あわよくば慰めてもらうつもりだった。
でも、言えない。
当事者でもなんでもないはずの想太さんが、必死で探してくれて。本来なら真っ先に暁を探さなくちゃいけないはずのあたしは、学校から出られず。
想太さんにあたしがやらなくちゃいけないはずのことを全部押し付けてるくせに、「お父さんにばれちゃった。どうしよう」なんて。
――甘えすぎだよ。
こんな自分が、たまらなく嫌になった。