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暁の文

 一通の手紙が届いた。差出人は書かれておらず、写真が一枚入っていた。

 誰だ?なんて訝しがりながらも写真を見る。

「っ」

 声が、出なかった。


 セーラー服を着た、女の子の隠し撮り。女の子は胸元まである黒髪を、二つに結んでいた。

 清楚で真面目な雰囲気の、可愛らしいお嬢様。

 その子の顔は、


「宵っ」


 わたしとそっくりで。


 思わず泣いた。

 宵はわたしの知らないところで、こんな風に成長していたのか。あんなに活発でやんちゃだった宵は、これほどまでにちゃんとした“お嬢様”になっていたのか。

 わたしが心配する必要なんてなかった。宵はちゃんと宵だった。

 見た目はずいぶん変わったけど、顔立ちはわたしと瓜二つ。しっかりと前を見据える強い力を持った目は、今も変わらず。

 横顔だけど、写真だけど、間違いない。この子はわたしの妹。双子の宵。


「あぁ」

 息とともに、そんな声が漏れる。

 あの子にわたしは必要ないのだな。ずっと心配していたけれど。ずっと気にかかっていたけれど。

 あの子はちゃんとやっている。演じているのかは知らないけれど、立派な“お嬢様”だ。父親の望んだとおり。


 誰がこの写真を送ってくれたのかはわからない。父親かもしれない。


 今だけ。この瞬間だけ。父親に感謝する。

 ありがとう。これでわたしは、もう少し頑張っていける。落ち込んだりいじけたりしないで、前を向いていられる。


 がんばろう。

 宵のためじゃなく、自分のために。


 こんなに前向きになれたのは、宵と別れて初めてかもしれなかった。


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