宵の灯
「暁ちゃんがいる高校、分かるかな?」
想太さんが聞く。手元のミルクティーはもうすでに冷めきっている。
「わかんないです」
ポツンと呟くと、
「そうか」
と想太さんは苦笑いした。
「そんなに困った顔しないで」
どこまでも優しい想太さんに、ちょっと泣きそう。こんなに優しい人と一緒に居れて、自分は幸せ者だ。
だから。
だから、と強く思う。
自分は幸せだからこそ、暁を放っておいちゃいけないんだ。
この幸せに浸って、立ち止まってはいけないんだ。
「多分、ですけど」
あたしと同じくらい幸せに想太さんの気持ちにこたえたくて、
「暁がいるところ、並木町だと思われます」
自信は無いけれど、あの日父さんが『並木町に』どーたらこーたらと言っていた気がする。そのときあたしは『暁と離れ離れになっちゃう』ってことで頭がいっぱいで、よく聞いていなかったけれど。
「男子校で、武道が強いところ…しか分かんないです」
自分の頼りなさに、ちょっと眉を下げる。
「ううん、並木町ね。俺の出身校があるところだから、いろいろツテを探ってみるよ。情報ありがとう」
並木町に想太さんの出身校があるなんて、初めて知った。ツテがあるなら、暁探しもはかどるかもしれない。
「こちらこそ、ありがとうございます」
感謝してもしきれなくて、あたしはテーブル越しに深く頭をさげた。
頼りがいのある想太さんの協力のおかげで、光が見えてきた。
ここからは、あたしがしっかりしないと。全力で暁に会いに行かないと。
待っててね、暁。