プロローグ その2
「暁、お前は今日からこの道場に通いなさい。学校も変わる」
父さんの、厳しい目つき。それだけで、わたしの体はカチコチになる。
「お前は、これからもっと強くなるんだ。いつまでもメソメソしてないで、強くたくましくなるんだ。弱虫で泣き虫な自分は捨てろ、いいな」
コクンと、うなずくことしかできなかった。父さんの目は、うまく言えないけど異常で。わたしを通り越して、どこか違うものを見ているみたいだった。
じわじわと、目に涙がたまる。
おかしな父さんを見るのは、嫌だった。母さんの死に顔は綺麗で、今にもまた瞳を開けそうだったのに。死んだ母さんより、生きている父さんが怖いなんて。こんな自分は、おかしいよ。
「うなずくな!!返事は“ハイ”だ!!」
急にどなられて、たまっていた涙が一滴、頬を滑り落ちた。
「泣くな!!」
「・・・分かった。」
これ以上、なにも言えなかった。
あふれる涙は、長い髪で隠した。
「宵、お前はこの学校だ。もっと女の子らしくなりなさい。」
隣にいた双子の妹はまた違う寮制の学校を指定された。
あんなにもわたしの力になってくれる妹と離れることになるなんて、母さんが死ぬことよりも辛い。
母さん、助けて。
ボクの願いは、幾度となく空に消えていく。