宵の動
「それじゃあ、お姉さん捜索の第一歩は聞き込み、かな」
たった今、あたしの彼氏になった想太さんは、張り切って言った。
「知り合いのお兄さんが、確か先生なんだよ。男子校にいるって聞いてるから、そこら辺あたってみるね」
ふんわりと微笑む想太さんは、とてもカッコいい。詰めていた息をハッと吐き出せば、想太さんは柔らかな笑顔を見せてあたしの髪を撫でた。
「想太さん、」
「なに?」
寄りかかっている腕から、想太さんの声が直に響く。
「ありがとう」
小さく笑う気配がして、想太さんはそっと
「キスしていい?」
と聞いた。
もちろんそれを、あたしが拒むはずもなく。
柔らかな時間は、静かに過ぎ去っていった。
「もうそろそろ、帰るね。バイトの本屋、4時にあがれる予定だから、そのころ店にきてくれないかな?」
いつも通り、窓から帰っていく後姿。それがなんだか愛しくて、あたしは何も言えずに頷いた。
明日の4時。あたしは、あたしに出来るだけのことをしておこう。
暁が辿りそうなルートを見つけておこう。あの親父なら、きっと武道を一通りやらせれいるはずだ。それを辿れば、きっと暁に近づける。
あたしはグッと拳を固めて、暁への思いをはせた。