暁の先
眩しい。久々の太陽は、わたしの目を焼いた。
それでも、わたしは学校へ向かう。唯人に言わなければならない。いや、言わなくてもいいか。唯人なら、多分何かしら読み取ってくれる。
今だけは、唯人の優しさに甘えたかった。
「おはよう」
あけっぱなしのドアから入ると、芦威と目があった。
「よう、暁。体調悪かったんかー?」
肩に手を回し慣れ慣れしく、触ってくる芦威に、無性に抱きつきたくなった。あぁ、わたしは寂しかったんだと、今更気がついた。人肌恋しくて、仕方なかったんだ。
「芦威」
「何?」
「唯人は」
どこに行った、と言い終わる前に
「おはよー」
爽やかな笑顔をまき散らして、唯人が教室に入ってきた。
普段通りで、かつ胡散臭さが増している唯人に絶句していると、唯人はこちらへと近づいてきた。
「芦威、暁借りるよ」
強引に腕を掴まれ、教室から引っ張り出される。思いの外強い力に、わたしは為すすべもなかった。
「ねぇ、暁」
屋上に連れて来られたわたしは、今唯人と向き合っている。わたしの中を重苦しい空気が流れた。
真剣な眼差しをした唯人は、なんだかとても綺麗だ。整った顔立ちは、胡散臭い笑顔よりも鋭い瞳がよく似合う。
「これからのこと」
「何も言わないで」
唯人の言葉を遮って、わたしは吐きだした。
「何も言わないで、気にしないで、もう関わらないで」
踏み込んでほしくない。わたしは、ただそれだけを伝えたかった。
これ以上、唯人を巻き込むわけにはいかない。わたしは、自分の力で宵を探さなければならない。
もしこの人に“助けて”と言ってしまったら、それこそわたしは戻れなくなる。唯人に頼り切って、宵のことも見つけられなくなってしまう。
それだけは、嫌だから。
「なかったことにして。何もかも、見なかったことにして」
わたしはそう言い残すと、後ろを振り返らないようにして屋上を去った。