暁の鬱
憂鬱な気分で、毎日を過ごす。あれから、唯人は本当に誰にも言わなかった。いつも通りに接してくれる。
けれど、逆にそれが不安なんだ。
これからどうなるか予測できない、唯人が何を考えているのかわからない。不安にのみこまれてしまいそうで、どうしようもなく怖い。
「あ~き!!」
空を見て、またボーっと考える。最近は、宵のことだけじゃなく、唯人のことも考えないといけないから、空を見る機会が増えた。今日の空は分厚い雲に覆われて、泣きそうな重たい色をしていた。
「暁!呼んでるやん」
「あ」
芦威の呼びかけに、しばらく気付かなかった。
「最近えらいボーっとしとるな」
「なんで関西弁」
「どーてもいいでしょ!そこはスルーだ!!」
・・・芦威のよくわからないハイテンションが、いまだけはちょっと嬉しい。落ち込んでどうにもならないこの気分を、どうにか持ち上げてくれそうな気がするから。
「暁」
しばらく、芦威と二人でギャアギャア騒いでいると、突然唯人が声をかけてきた。
「今日の放課後、ちょっと付き合って」
芦威のおかげで上がっていたテンションが、一気に地の底へと落ちる。放課後、わたしは何をされるのだろうか。脅し?どうしよう、それしか頭に浮かばない。
「大丈夫、捕って喰うわけじゃないから」
ハハハッ、と見ようによっちゃ爽快な笑みを残して、教室を出て行った。
「おーっと、男子校禁断のBLか!?」
「ちゃかすな、バカ」
芦威のくだらない冗談は、とりあえず流そう。
でも、これからどうなるんだろう。
女であるということがばれれば、道はただ一つ。貶されて、足蹴にされて、そして別の学校へポイ。その間に、父さんから「またばれた、修行が足りない」だのなんだのと文句を言われる。それだけ。
その他になにか道を用意しているのだろうか、唯人は。
つくづく、読めない男だ。
じんわりと、胸が暖かくなっていくような不思議な感覚が何なのか、今のわたしにはまだ分からなかった。