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おはにちばんわ、いただきます。

ねりねりねりねはローチュウに居場所を奪われた。

掲載日:2026/07/22


「ねりねりねりね! 貴様はもう必要ない!! 私はローチュウと、この()を護っていく!!」


 たくさんの物たちが見守る中、私は突如そう告げられた。

 今まであれほど売れ筋(好き)だと言ってくれていた彼の傍らには、笑みを浮かべたローチュウが寄り添っている。


「そんな……、昨日まではあれほど——」

「あぁそうだ! 昨日まで私は気づけなかったんだ!! キミが彼女に働いてきた悪事も何もかも!!」


 ホールに彼の声がこだまする。

 それほどの怒りを買ってしまうほど、私が何をしたというのだろうか。


 目が合うと、わざとらしく目を伏せるローチュウ。

 そんな彼女の肩を見せつけるように抱きながら、彼は再び口を開いた。


「彼女は、キミにバカにされたと言っていたぞ? 『その身体では不安でしょうから』と、売り場()を変えたらしいじゃないか!!」

「それは、その席が直射日光の当たる場所で——」

「言い訳は結構!! 彼女はひどく傷ついたんだぞ!!」


 溶けてしまうよりマシじゃない。


 そう思ったが、今は何を言ってもきっと彼の耳には届かない。

 ただ黙って、彼の話を聞くのが1番だ。


「それに、彼女を突き飛ばしたんだって?」

「いえ、それは——」


 答えようとして、思わず口を噤む。


 あの日は空調が壊れていて、エアコンから水が滴り落ちてきていた。

 彼女のドレスは私とは違って水に弱い。

 だから、それに気づかずそこにいた彼女を守ろうと、咄嗟に手を伸ばした。


 華奢な彼女には、その力が強く感じたのかもしれない。

 私にはそんなつもりがなくても、突き飛ばされたと本人が感じていたら……。


 口籠る私をみて、ローチュウが口を開いた。


「きっと、私のことが羨ましかったのですわ。ねりねりねりねさんは、持ち歩きには適さないですもの……」


 彼女の言葉に、私は返す言葉がなかった。

 

 手軽にどこでも携帯し、食べたい分だけ食べられる彼女と違って、私は封を開けたらそれまで。

 家で、テーブルの上で、トレーに開けて、水を入れて……。

 それが好きだと言ってくれる人もいるけれど、彼女の言い分は的を射ている。


「今は令和。もうあなたの時代は終わりですのよ」


 ローチュウのその言葉と同時に、私の居場所は奪われた。


 


 *


 それから私は、前みたいに表立って何かをすることはなくなった。


 ローチュウの言うように、時の流れは残酷なのだ。

 あれほど私を好きだと言ってくれていた人たちも、目新しいものがあればそちらにいく。

 

 わかってはいても、心苦しい日々だった。

 ローチュウは変わらず人々の心を魅了し続けており、世界でも知られるほどに有名になっていた。


 それでも、私を必要としてくれる人たちは確かにいた。

 

 かつて私を応援してくれていた人たちが成長し、その者の子供たちが私を見つけてくれるようになったのだ。

 そして、その子供たちと共に、その親が過去を懐かしみながら私を手に取る——。


 そんな、夢のような循環が起き始めてしばらく経った頃、私に一本の依頼が来た。


「ねりねりねりね、キミに頼みたい仕事がある」

「私でお役に立てるのであれば何なりと」


 今更プライドも何もなかった。

 前のように爆発的に売れることがなくても、ローチュウほど目立つことがなくても、それでもいいと思えるようになっていた。


 しかし、告げられた言葉は意外なものだった。

 

「食玩のミニチュアをやってみないかい?」

「ミニチュア、ですか?」

「うん、本物のようなミニチュアが流行っているらしいんだ」

 

 世は、再現ミニチュアブームの全盛期を迎えていた。

 ありがたいことに、その恩恵が私にも向いたのだ。


「絶対に売れるという保証はない……、だけど——」

「やらせていただきますわ」


 もう、何も失うものはない。

 ローチュウのように、常に売り場で数種類の仲間と並ぶこともない。

 派手に名を轟かせることも、爆発的に売れることもないだろう。

 

 それならば、最期に思いっきり咲いて見せましょう——。




 *


 思った以上に、花は綺麗に咲いた。

 私のミニチュアを求めて、ハシゴする人も現れるくらいに。


 そうなると、ミニチュアだけではなく私自身も手に取られることが多くなった。

 前よりずっと、子供たちがその親が私を探すようになり、見つけると笑顔になった。


 ——人って、本当に単純なものですわね。


「よかったわね、ローチュウを見返せて。ミニチュアは爆発的ヒット、あなた自身も再ブーム。ローチュウは悔しいんじゃないかしら」


 隣の棚に並ぶお菓子が、意地悪そうに笑う。

 彼女もきっと、ローチュウに居場所を奪われた側なのだろう。


 だけど、見返すだなんて言葉は正しくない。

 ローチュウから見れば、あの時の私は悪役だったに違いないから。


 言えばよかったのだ。

『日が当たると身体に触るのだから、席を替わりましょう』と。


 言えばよかったのだ。

『エアコンの調子が悪いから、そこにいると水が滴り落ちて来ますわよ』と。


 そして、ローチュウが羨ましかったのも事実だ——。


「見返せてなどいませんわ。それに私は、ローチュウに感謝はしていても、恨んではおりませんの」

「へぇ、そのトレーのように広い心をお待ちなようで」


 私が話に乗らなかったことが面白くないのだろう。

 彼女は少しトゲのある言葉を返したあと、口を開くことは二度となかった。


 仕方がない。みんな生き残るのに必死なのだから。

 常に目立つローチュウは、きっとやっかみも多いのだろう。

 あの時の私は、彼女に居場所を奪われたと思ってた。


 でも、本当に奪ったのは彼女だったのだろうか——。


「仕方がないのですわ。時代は、常に変わるものですから」


 

 テンプレというものを初めて使ってみたのですが、

 これ、ちゃんとテンプレになっているでしょうか?


 そもそもお嬢様言葉がわかりません。

 ですわ、ですの、ですのよ——。


 テンプレもお嬢様も、おやまにはどちらも難しいのですわ。

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― 新着の感想 ―
これがテンプレか…!(開眼)
ローチュウさんは相変わらず人気者でざまぁされてねえ……!! 追放されたのはチェ◯シーさんです。
完璧にテンプレですw
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