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夢「ハグしてあげよっか。うーちゃん!」
俺は無視して話を続ける。
「あのときは、財布を拾って頂いてありがとうございました。 」
夢「ううん、気にしないでください。」
夢は女の子座りをしながら、周囲をキョロキョロして見まわしてる。散らかってるからやめてほしい
…
「相田さん、…それ、食べ終わったらもう帰ってくださいね。俺も警察とかあまり呼びたくない…」
夢「…これってうーちゃんだよね?」
「えっと、話ちゃんと聞いてますか…?」
夢「うーちゃんかわいいなぁ。21歳かあ…!うーちゃんわかいね。羨ましい。」
「…ん?」
あれ?俺の免許証だ。…それをなぜか彼女が持ってる…?
夢「ふふ、このうーちゃん変な顔しててなんか可愛い。」
「なんで俺の免許証が…」
あー…あの時抜かれたのか…全く気付かなかったな。
俺はため息をついた。食べ終わったお皿を持って立ちあがる。
「…とっととうちから出ろよ。…カレー食べ終わってるじゃん。」
夢「私、うーちゃんにはロングが似合うと思うよ。小顔だし。」
「相田さん、話聞いてる?俺の免許証置いて今すぐうちから…」
…あれ、俺はなんでこんな丁寧に対応してるんだ?こんな阿呆女、警察を呼んでつき出せばいいだけじゃないか。
俺は警察を呼ぶ為にポケットを手で探る。
「あれ?スマホは… ない。どこかに置いた?」
夢は突然立ち上がると部屋のクローゼットを勢いよく開けた。
「…!何してんだよマジで!!」
夢「もっと色んなうーちゃん見たいなあ。」
そう言って、何故か俺のスマホを持ちながら、可愛いポーズをした俺の写真を見せてきた。
夢「このうーちゃん、私に見せて。… お願い!!」
「無理。」
…
夢「…どうしても?」
「うん…」
…
何だか疲れた。どうやっても家から出てくれないぞ。根気強く話してもなにも伝わらない。人間はこんなふざけてても生きれるのかよ…。俺も冗談を言ってみることにした。
「それ見せたら、ホントに帰る?」
夢は目を輝かせて俺を見てきた。
夢「いいの!?ホントに!?」
「…警察呼ぶのも面倒くさいから。」
夢「ありがとう、うーちゃん!!」
「あと、スマホ返して。…てかどうやってパスワード解いたの。」
夢「後ろから見てた。」
…
「ちょっと着替えるからさ、外で待ってて。」
夢はキョトンとした顔で首を傾げている
夢「トイレじゃだめ?…」
「外で待たないなら着替えない。」
夢「分かりましたー。」
夢は駆け足で玄関の外に出た。
… ガチャ
きた!チャンス到来だ!!今しかない!!!
…
カギは、ちゃんとかかってるな。…よし!!ちゃんとかかってる!俺はベッドでぶっ倒れた。
「ああー!疲れた!!何だよあの女ー!!どういう神経してんだよ!!俺のカレー食いやがって!!!くそがああああ!」
…ドンドンドンドン
外から声が聞こえる。
夢「まだあー。うーちゃーん!早くー!」
「…」
…
気付くと眠ってしまっていた。時計を見ると針が6時をさしている。カーテンから外を見るとすっかり夕暮れだ。
「夕飯でも食うか。カレーがまだ少し残ってたな。」
俺は鍋に火をつけた。
今日は…本当に色々あったな。明日からまたバイトだし、早めに寝るか。ふう、 …なんだか落ち着かない。なんなんだこの不安は…!
俺は駆け足で玄関に向かって、ドアの覗き穴を覗く。
「アイツ、流石に帰ったよな。」
…
誰もいない、 …良かった。
ドアを開けようとしてドアノブを押してみた。
…あれ?開かない。
良く見ると夢がドアにもたれて蹲っている。
… ガチャ
「何やってんだよ。」
夢「…」
…ウソだろ、こいつ。
「起きろ。ドア開けれんだろ、阿呆。」
夢「…ねえ、うーちゃんちょっと寝過ぎじゃない?」
「…あのさ、すごい迷惑。」
夢「うーちゃん、着替えた…?」
…
「はぁ…」
鍋の火を止めて、夢が数時間前にリクエストしてきた服に着替えた。俺は駆け足で玄関に出る。
「おい、これ見たら早く…」
???「…こんばんわ〜」
「…」
夢「こんばんわ。」
隣に住んでる人かな…もろ見られてしまった…
「…おい、もう着替えたから!!さっさと見てもう帰ってくれよ…!頼むから。」
夢「うーん…」
なんだ?様子が変だな。
… ドサッ
夢は床に倒れた。
…
「おーい」
…
…呼吸はしている。気絶しているだけだと分かったが倒れている女をこのまま外に放っておく訳にもいかない。…救急車を呼ぶか?俺は頭を悩ませた結果、夢を抱えて、ベッドに寝かせることにした。横向きに寝かせて首と脇に保冷剤をあてて毛布をかけてやった。
… カチ カチ
静かだ、時計の針の音が聞こえる。
しばらくして夢が目を開けた。…
夢「ん…あ、うーちゃん着替えてる。あー、めちゃくちゃ可愛い…。最高…抱きしめたい。」
夢は手を上げて謎の喜びに浸っている。…とりあえず頭以外元気そうで安心した。
「体調が悪かったなら早く言ってくれ。…一人で帰れるか?誰か迎えに来れる人とか居る?…カレーには変なもの入れてないからな!!」
さっきから夢の視線が痛い。気がどうにかなりそうだ。
「気分はどう?」
夢「最高…」
「…痛い所とかない、よね?」
夢「後で写真とらせて。」
…
「…水でも飲む?」
夢「うーちゃん、今日は泊まらせてね。」
「…?」
…
夢「おはよう、うーちゃん」
「…あれ?朝か。… んんん?」
夢「うーちゃんって、可愛いからずっと見てられるね。」
「あ… 」
そうだ、昨日は確か…この阿呆女をベッド寝かせてそれから…駄目だ、思い出せん。 記憶がブッ飛んでるな。
「…この格好のまま寝ちまったのか。この様子じゃ化粧も落としてないな。バイト…そうだ!バイトは!?」
時計を見ると綺麗な9時だった…。
…
…
「あー…遅刻だ。マジやっちまったあ…!!!」
頭を抱えていると、夢が優しく頭を撫でてきた。
夢「どんまい!うーちゃん!」
「…」
いつかぶっ飛ばしてやる…。
…
俺はバイト先に電話をかけて、寝坊したことそして、遅れて行く事を伝えた。普段は怖いバイトの上司も今日はどことなく優しかった。…スマホをポケットにしまう。
「…さてと。」
夢「ねー!うーちゃん!もっと頭撫でてあげよっか…?」
「体、もう大丈夫ですか?」
夢「うーん、どうだろう…。分かんないなあ…」
「…じゃあ、救急車呼びますね。」
夢「帰る!帰るよ!」
…
夢はゆっくり玄関に向かう、靴を履いて、傘を掴んだ。まだ顔が赤い、…本当に大丈夫だろうな。
夢「うーちゃん、私もね、…よく遅刻するよ? 」
「忘れ物、ないですよね?」
夢「今日は私もお昼からバイトあるんだ …やだなあ。」
「そうですか、頑張って下さい。」
夢「うーちゃんも、バイト頑張ってね。…負けないでね!!」
手を掴まれた。すごい力だ。
「…はい。」
…
外はとても晴れてる。空気がとても美味しい。
夢「あ、そうだ!うーちゃん!」
「何ですか?」
夢「カレー、ご馳走様です!」
雨が降り続けてる。
俺は泣いている。
ここは俺の居場所じゃない。
私の人生は此処じゃない。




