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7 扉の向こうには不思議な体験がまっていました。(下)

皆さんフィクションですよ。


史実を参考にした創作ものですので、

実際に伝えられた歴史とは異なる点がありますよ。


キャライメージが違ってもこーゆーもんだって思っていただけると

うれしいです。


チリンチリン。


「・・・鈴の音?」


容保がその鈴の音のほうに目を向ける。

そこには首に鈴を付けた日の光の中で銀色に輝く毛と

鮮やかなエメラルドグリーンの目の太った猫がドカッと座っていた。


「あれは結が鈴をつけてやった猫ではないだろうか・・・。」


完璧な猫の毛並みと瞳が太っていることによって

台無しになっていると思ったことは記憶に新しい。

すると猫は容保と目が合うと「ミャ」と鳴いて

ついて来いというかのように容保の方を見る。

そして、猫は尻尾をピンと跳ね上げると歩き出した。




「江戸にこんなところもあったのか・・・。」


猫が色々な裏路地を通るので、つい見たこともない風景に

容保は周りをキョロキョロしてしまう。

猫はツンと澄ましてこちらを見ずに進んでいるにも関わらず、

ちゃんと立ち止まって容保を待つ。

そして、容保が追いついて来たのをみると、馬鹿にしたような

目で見ると歩を進めだす。


(この猫こんな性格悪かっただろうか?

結にはいつも甘えて可愛らしかった記憶があるが・・。)


容保は首をかしげる。




すると猫は一軒の民家の前に立ち止まった。


(民家の裏手から入ってきたから、この垣根の向こうは庭だろうか?)

と思案していると、猫がまた鳴く。


「ニャ。」と、生垣の中に入っていった。


まるで来いと言っているようである。


(しかし、ここは民家で、ここには垣根がある。ここから入れと?)




猫が入っていた生垣から顔を出した。


「ニ~アニャア」


(いいから来いといいたいのだろうか?この猫は)


声からして苛立っているのがわかる。


「わかった。」


ヒトの家に勝手に入ることは罪悪感に苛まれたが、

この江戸の民家に興味が無かった訳でもなかったのでついて行くことにした。






猫はその庭に植えられてたツツジの根元まで行くと


容保の方を向き、一度「ニャ」と鳴くと丸くなって、目をつぶってしまった。




その時だった。


容保はその家から声がするのに気がつく。



************




「オイ。キク。お母上が帰って来いと言われているそうだぞ。」


と容保と同じくらいか少し上の若者が縁側に腰掛けてる小さな男の子供に話しかけていた。


目を下に向け、、少年は口を開く。


「シチロウ、断る。まだ帰りたくない。

 お城はいつも嫌な感じで息がつまりそうになる。」


シチロウと呼ばれた若者がため息をつき、少年というか幼児に近いキクに言う。


「はー。キク。それはワガママだ。いくら辛くても

 あんまり母上を煩わせちゃーいけねぇよ。」




「・・・・・・・・・・・・・・・。それにユウもいるし・・。」


顔を真っ赤にしながら、ソッポを向き呟いている。


「ガキとはわかんねーモンだな・・・。

 先ほどまで嫌がっていたくせに、

 もう離れたくねえってほどまで仲良くなっているとはな・・。

 しかもホの字かよ。おまえいくつだよ・・。」


とシチロウと呼ばれた良い色に日焼けした青年は小さな声でため息をつく。




その時だった。


タッタタタタッーキュー!!




良い音を立てて止まった者がいた。


「ねえ!!キクったら遊ぼうよぉ。」


おかっぱにかわいい澄んだ瞳。


高価そうな振袖なのだが少年のように活発な動き。


(結だ。

 結がいる。

 わたしは結が目の前にいる事実に思考が止まる。)


「今、シチロウに捕まっているのだ。

 結。ど・・・・・・・。」


(縁側に座っているキクという少年が答えるが私の耳には入らない。)

 

容保は思わず生垣から飛び出すと


「結!!!」と叫んでしまっていた。


目の前の3人は目を見開き容保の方を向いた。

シチロウは容保を見ると間髪をいれずに大刀を抜く。

曲者くせもの!!!!」

それと同時に結は駆け出すと容保に飛びついた。


「兄上!!!」


「結!!」


(まずい!!結を切っちまう!!)


いきなり飛び出してきた結にシチロウは刀を止めようとするが


刀は止まらない。


「シチロウ!!」


キクの声を後ろに聞きながら、シチロウは手に力をこめる。


(だっだめだ。)


シチロウは目をつぶり、そう結のいる位置を刀が切り裂いた。


「!?」


(感触がない!?)


シチロウはハッと目を開ける。


すると地面に座った少年の首に結が幸せそうに巻きついていた。

その少年にはまだ青年というには年若く、16前後と思われる。

彼は結の勢いは受け止めることができなく

後ろにしりもちをついたのだろうと想像がついた。


シチロウは胸を撫で下ろした。


容保は安堵感と嬉さにぎゅっと結を抱きしめた。


(私はこのぬくもりを手放すものか

 まだ2日と離れていないのに、これを手放すことが

 できなくなっているなんてな。)


容保は自分の反応に驚きつつ結の少し癖のある髪に顔を寄せる。


「結。会いたかった。」


「兄上、結もだよ。」


結はキラキラっと爽やかに微笑む。


「結。兄上は・・・「あの。すまない結。この人誰だ?」


そういって2人の世界を遮ったのはキクだった。


結はサッと容保から離れて立ち上がる。


「あのね。私の兄上。

 兄上。このひとたちはキクとシチロウ。

 迷子になっていた結を優しくして、助けてくれたの!!」


結にあっさり、サッと離れられたことに若干ショックを受けつつ、

容保は立ち上がり居住まいを整え挨拶した。


「会津藩士  松平 容保と申します。

 この度は我が愛妹を助けてくださり本当にありがたく・・。」


「おまえ。それお前のホントの名まえか?」


シチロウが目を細め容保を見据える。


容保は真っ直ぐシチロウの目を見つめる。


「無論でございます。結を守ってくれた人に嘘を吐くわけにいかないですし。」


クククッククックックック


急に笑い出したシチロウに3人は吃驚した顔をする。


「おまえ。おもしろいな。よし結、キク。遊びに行って来い。」


「うん!」「そうする。」


2人は手を繋ぐと屋敷に奥に消えていった。


「さってと・・・おまえ。オレたちは誰だ?」


シチロウはそうちょっとなぞなぞを出すように言うが目は笑っていない。

それに容保は答える。


「キク様は徳川慶福よしとみ様。シチロウ様は一橋慶喜様でしょうか?

 なぜこんな城下町の一角にいらっしゃるのですか?」


「おいおい、待て待て。まだオレはそうだなんていってねーぜ?」


容保はキョトンとして答える。


「慶福様や義信様の動きには洗練された美しさがあります。

 これを町人が身に付けることはできないでしょう。

 それに私が会津藩士と言った時、驚いた素振りもありませんでした。

 決定的であったのはその呼び名でございます。


 父上からお二方の幼名は聞いておりました故。」


(確かにオレの幼名は七郎麿でキクは菊千代だ。)


「そうか。

 ここはとある火消しの親分の家の一角だ。

 時々こうして身分も肩書きもなく過ごしたい時に来ている。

 そういうとこだ。ここは。

 だから容敬のムスコ。ここではオレのことはシチロウそしてキクと呼べ。

 わかったな。

 にしても、あんなにキクが楽しいそうなの初めて見たぜ。」


「はあ。さようですか?」


容保は恐縮そうに答える。


「だから、おまえ。その口調やめろって言ってるだろう。

 ここまで来てききたくねえんだよ。」


「うっですが・・・。お願いします。

 これ以上はご勘弁を。

 お名前はシチロウとお呼びしますから。」


本当にあたふたしながら答える容保に

慶喜は少しいじめ甲斐があると思いながら口を開く。


「まあいい。

 キクあいつの周りはオレ以上に大変だ。

 囲まれるには大人が大方。

 そして子供が近づいてきても底には親の思惑が絡む。

 そんな友だちって友だちって言えると思うか?

 それに比べ、結と一緒にいるときのキクはホント輝いている。

 あいつにとって結が初めての友だちなんだろうぜ。

 もしおまえの方が良ければまた結を預けに来い。

 なんならあと1日預けたっていいんだぜ。」


*************


「それでどうされたのですか?」と梶原が興味ありげに聞く。


「その日は江戸屋敷の方も私までいなくなったものだから大騒ぎでな。

 慶喜様にしっかりとした道を教えていただき引き上げたが、

 慶福様から何度もお呼びがかかって火結は消し屋敷に行かせていた。

 なるべく外泊はさせないようにさせていたし、

 慶喜様に慶福様と二人きりにはさせないよう頼んでおいたから

 大丈夫だと思うが本当に心配だった。」


大きなため息をつく。


(容保様・・・。あなたに引きます・・・。ホントに。

 それってシスコンっていうんですよ。)


梶原はか固まるのであった。





中途半端ですがここで次は一気に終章に参ります。

完結にはせずに短編を後ろに、連ねていこうと思っております。

今後共々よろしくお願いします。




**********


容保はその結というぬくもりを手放すものかとぎゅっと抱きしめた。


(結。こいつは誰だ?)キクの眉間のしわは深さを増していく。


まだ2日と離れていないのに、、このぬくもりを手放すことが

できなくなっている自分に驚きつつその少し癖のある髪に顔を寄せる。


慶喜(おお。幼児相手によくやるぜ。結はかわいいがそこでやめとけ少年よ。

    結やキクの教育上いただけない。犯罪だ。)


キク(結から離れろ!!!変なおじさんめ!!)




ちょっぴり2人の心の声でした。



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