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5 扉の向こうには不思議な体験がまっていました。(上)

「あー。タマめっけ!!」


結はここぞとばかり大きな声で叫んで、目の前に座っていた三毛猫のタマに飛びついた。


グエッウ


タマが潰れる。

結は構わずにのしかかるとタマの口にくわえられていた香り袋を奪った。

タマはよく江戸屋敷に遊びに来るなじみの猫で結の友だちのひとり(?)である。

潰れて、しばらくしてフギャー!!!となき、背中にのしかかる結を振るいおとそうとする。

人間の重さにかなわないことを考えていないのかひたすら暴れる。


「かわいい。タマ。」


結はニコリとし、タマをはなしてやった。

タマは少しの間、結を凝視する。


「ん?タマ。そんなに遊んでほしい?」


結が手をのばそうとすると、ドテッと転びながら慌てて逃げていった。


「今日のタマ、変なの・・・。

 でもよかった兄上にもらった香り袋とりもどせて。

 だいじにしてたから、なくなったらどうしようかと思った!


 キョロキョロ?それよりここどこ?」


結は周りを見回す。


結がこの世界に着てから、これほど遠くに来たのは初めてで、

あらためて結のいた日本とは違うのだと思わされる。


「みんな、兄上や父上と敏ちゃんとおんなじ格好してる。ビルもないし、車もない。

 スーパーもなければモールもない。知らないこんなとこ・・・・・帰れるよね?」


そうつぶやくが、答えてくれる人はいなく結とは無関係に周りは忙しそうに動く。

不安で心細い気持ちを吹っ切るように、

先日、容敬から貰った扇子のような胸元に入った懐剣を握る。

そして、「うん!だいじょーぶ!!帰れる!」と自ら断言して言い切ると元気良く歩き出した。




***************


しばらく歩いていると、前方から柄の悪そうな町人3人組の男たちが歩いてきた。

そのうちの一人が結に気づき、他のものに結をチラチラ見ながら話しかける。

そして、3人で結を囲んだ。


「お嬢ちゃん。」

「どうしたんだい?」

「はぐれちまったか?」


ニタニタとむさい顔を結に近づける。


「・・・・・・わからない。」


結はその3人が自分を見る顔に寒気を覚え、本能的に少し後ずさる。


「怖がるなよ。」

「ゲヘヘヘヘヘ」

「俺たちが母上のところに連れてってくれりゃあ!」

とその中の一人が結の腕を掴んだ。


「ちょっとまちな。」


その男の手を掴んだ者がいた。

その者の声はかなり年若く聞こえる。

しかし、健康的に日焼けした肌、無駄のない体つき、

何か見透かされそうな深い色の瞳のために年齢不詳に近くしている。

また、着物の質は程度が良いもので商人の御曹司だろうと推測できる。

気づかなかった気配に3人の男は吃驚するがすぐにガン付けはじめた。


「ああ?」

「んだっってめー!!!」

「なんか用かよ。」


「そいつはオレの妹だ。町に来てさっきはぐれた。ありがとうよ。」


その若者はそう言いさっと男たちの懐に礼を押し込んだ。

すると3人はチッっと舌打ちしたが、


「そのチビ、世間知らずもいいとこだぜ。」

「きっと箱入りなんだろ?」

「良く教育しとけよ。」


一言多く言って若者に結を渡してサッサと去っていった。




結はなんだかわからなく3人の後ろ姿を首をかしげて眺めていた。


「だいじょうぶか?」


結がビクッとして声のするほうを見た。

先ほどの若者の後ろから、男の子が出てきた。

男の子は抜けるように透き通った肌に少しムッチッとした幼児体形に

やさしく暖かいつぶらな瞳を持っていた。


あまりのかわいさに一見女の子にも見える。




結は何のことだかわからなく「なんで?」と聞き返す。

「ハー。」とため息をこぼし、若者が成り立っていない会話に入った。


「あのなあ。お前、あとちょっとで、店に連れてがれて、あいつらに売られ、

 あいつらの今晩のおかずになる所だったんだぞ。」


(”ミセ”?”売ラレル”?良くわからないし・・・。


でも、なんか大変になりそうだったのを助けてくれたのはわかる。)

結はまっすぐ若者の目を見つめると


「すいませんでした。ありがとうございました。」と丁寧に頭を下げた。


すると若者が口を開いた。


「わかればいい。それよりも、お前の家どこなんだ?」


結は唇をかみ締め急にうつむく。


「ほんと、わかんねーんだな?」


結は俯いたまま、手を強く握り締める。

男の子が心配そうにそのつぶらな瞳で結の顔を覗き込もうとする。


「こっち見ないでよ!!」


パシッ


良い音がする。

男の子は急なことにビックリし目を見開き、少しピンク色に染まった白い頬に手を持っていった。

結はもう一度顔を上げ、若者にキリリと目を向けた。

その瞳にはあふれんばかりの涙がたまっており、かみ締めすぎたせいか唇は血がにじんでいた。

若者は結から目を離すと大きくため息をつく。


「はあ。しょうがねーな。うちに来い。」と乱暴に結の手首を掴んだ。


先ほどの男に手を掴まれた時は寒気が走ったのに対し、

彼の手は不器用ながら大きくあったかく包み込んでくれるように結には感じられた。

結の目が大きく見開かれる。


「わたしをおてかないの?」


若者は結と同じ目の高さにしゃがみこむ。


「たりめーだ。こんなところにガキひとり置いとけるかよ。

 さっきのみたいなやつらの餌食になるだけだぜ。」


「ほんと?」


「ああ。うそなんかついてどうすんだよ?」


すると結は思いっきり正面から若者に飛びつく。


「だあああああい好き!!!」


「うげえ。」


ドテッ


いきなり結に首にとびつかれ、若者は思いっきり尻餅をついた。


「・・・・やめろ。首がしまる。どけ。」


「いや。」


結は袖で涙をごしごし拭き若者を見上げる。

若者は今まで色々な女の笑顔をイヤというほど見てきた。

しかし、このような裏のない笑顔を見たのは初めてだった。

彼は大輪の花が咲いたような眩しいそれについ見入ってしまう。

我に返り、結を無言で引き剥がす。


「行くぞ。」と結のしっかりと手を繋ぎなおし、男の子を抱き上げ歩き出した。






「シチロウ。なぜこのむすめをつれていく?このむすめ、だいしょうぶなのか?」


若者の耳元で声がした。

その声は彼が抱き上げている男の子の不服そうで、

ませた言葉遣いは顔に似合わない。

そんな会話に気づくことなくキョロキョロと目を忙しく動かす結を横目に見て、若者は答える。


「キクこいつの手に大事そうに持っているものを見てみろ。

 あれは香り袋だ。それに刺繍してある紋は会津の紋に違いねーよ。

 それにこの上等な振り袖と常識知らずにもほどがあるところをみると、

 これは相当箱入りなんだろうぜ。」


キクと呼ばれた男の子の見た香り袋の紋が太陽の光を反射して己を主張するようにきらりと光った。



この時点でこの2人が誰だかわかったらすごいですよ!!(^O^)

あくまでフィクションですので、ご承知おき下さい。

よろしくお願いします。





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