プロローグ
文豪コンビが活躍する短編小説。
落ち着いて俺の話を聞いてくれ。
計画はシンプルなものだ。
妻は、毎週、木曜日の午後に料理教室に通っている。俺に、少しでも美味しい料理を食べさせたいと考えているのだろう。昼過ぎに自宅を出て、戻って来るのは午後四時前後だ。俺は一旦、会社を出て自宅に戻り、お前を自宅へと招き入れる。
幸い、自宅の防犯システムは契約更新が間近に迫っており、このまま更新せずに放っておくと動作しなくなる。うちを監視する者がいなくなるのだ。
契約の更新を止めておく。
妻は自宅に戻ると、先ず、二階の寝室に上がる。身に着けたアクセサリーを外して部屋着に着替えるのだ。そして、一階に降りて来て夕食の支度を始めるはずだ。
二階の寝室の前にアンティークの花瓶置台がある。その下に人が一人、隠れることができるスペースがある。そこに隠れるのだ。
妻が寝室から出て来たら、後ろから突き落としてくれ。階段を転がり落ちて、首の骨でも折って死んでくれれば良いが、万が一、妻が生きているようなら、階段下に巨大な置時計がある。あまり安定が良くないので、倒れたとしても、誰も不思議に思わない。それを頭の上に倒せば息の根を止めることができるはずだ。
なあに、二階から落ちた拍子に置時計に当たり、運悪く下敷きになって死んだと警察は思ってくれるだろう。
妻は事故死として処理されるはずだ。
犯行後は、直ぐにうちを離れろ。夕方、自宅に戻った俺が妻の遺体を発見する。もし、まだ妻が生きているようなら、その時は仕方がない。俺が止めを刺す。
あいつさえいなくなれば、俺たちは一緒になれる。
大丈夫。心配するな。全てうまく行くさ。