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      2  その頃男爵家では

 マリエール達が転移した時、男爵家では宴会が行われていた。マリエールの婚約を祝った。

        2  その頃男爵家では



 2人が転移した時点で男爵、息子、男爵妃の3人はエールを飲んでいた。

「これであちらに顔向けができると言うもんだ。どこがいいのか向こう様はえらくマリエールに御執心でいろいろ便宜を図って貰った。船まで出して貰って他領で獲物を狙えていい稼ぎがあったからな。マリエールが嫁げばずうっと便宜が期待できるわけだ。」

男爵は機嫌良さそうに語る。

「マリエールもシルビアも別嬪ですよ。紹介してくれと何人かが言って来ますものね。2人にはこの領に利益持たらすところに嫁に出さないといといけませんね。」

息子はもう酔ったようだ。エールが初めてというわけでもないが成人する前は堂々と飲めなかった。

「あなたもそうよ。働き者で身体が丈夫な素直な子を貰っておくれよ。マリエールに出てかれるとこっちに負担がくるからね。社交だって難しくなるよ。」

男爵位の難しいところは社交にどこまで手を掛けるかだ。伯爵、公爵ほど求められるわけではないが貴族として最低レベルの付き合いは必要だ。この男爵妃は社交が派手で衣類やジュエリーにこだわる。最低限の社交でとどめればメイドの一人くらいは雇えただろうにマリエール達がメイドや厨房、農作業までしなくてはならない。そういった作業はこの男爵妃はしない。割と最近まで、農家の主婦に交代でやらせていた。息子が盗賊活動を始め、男手が必要になり主婦達の代わりはマリエール達の仕事になった。

 毒婦だ。身分不相応な金をかけ身を飾り社交する。主婦としてやるべきことはせず、浪費を重ねる。夫や息子が悪事を重ねるのは根っからの悪人だからもあるが、この毒婦の浪費を支えるためでもある。

 酔った息子は酔ざましをかね

「ちょっと、妹達の様子を見てくる。」

今までそんな気持ちになったことがなかったが、特にマリエールに異性を感じるようになった。何となく興味を持つ程度だが。

「2人ともいないぞ。」

息子の叫び声の意味を夫婦は理解できない。

「マリエールもシルビアもどこにもいないぞ。」

今度は2人共に判った。しかし理解できない。ほんのさっきまで一緒だった。2人が二階に上がるのは見届けている。彼女達が降りて来れば判る筈だ。家出したとすれば窓からだ。ロ゙ープまたはロープの類がある筈だ。男爵はマリエールとシルビアの部屋の窓を調べた。その形跡はない。3人はマリエール達が魔法が使えるのに気付いていない。2人は日常的に魔法を使っていたが、誰も気付かない。やった事もないことをすばやくされても気付かないものだ。外に出た形跡がないからには家の中にいる筈だ。3人は家中を探した。見つからない。しかし、3人は一定のことを理解した。2人の部屋から毛布、洗面用具、タオル、着替えの類が消えているのだ。村中の捜索を今直ぐかけようとする息子を諌め

「あいつらが逃げられるところなどありはしない。早朝探せば直ぐ見付かる。2人にはお仕置きが必要だな。」

 3人は中段された宴会を再開した。口々に2人への悪口雑言を募らせた。曰く親不孝者、育ててやった恩も忘れたか。子どもは親が決めたままに結婚するものだ。しかし、これが彼らの破滅へのプログナードと成ることなど考えもしなかった。 

 2人の家出が判っても、たかをくくっていた。宴会は再開された。

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