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体育祭だってよ8

すめらぎ うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、すめらぎ 勝利しょうり。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。


狼山ろうやま あずき:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、美未の親友、小倉の姉。美未のいじめ問題を通じて、二人の仲は深まることとなった。一人称はウチ。


鳥谷とりたに 楓子かえでこ:うぃんと同じクラスで、あずきと美未をいじめていた陸上部員。一人称は楓子。

挿絵(By みてみん)



「もうね!本当バカみたいに速いんですよッ!追いつきたいのに全ッ然追いつけなくて、いっつもいっつも差が開いちゃうッ!!」

 楓子が両手を胸の前でグーにして、興奮を隠さず語り続ける。

 火がつくのは一瞬だった。アタシが「ところで、あずきってバカっ速くない?」と言っただけで、小学1年生の頃から(さかのぼ)って自分の知り得る全てのメモリーを共有してきた。


「聞いてますッ!?こっちは必死なんですよ!?」

「き、聞いてる引いてる」

 アタシの思わずこぼれた本音にも気付かず、彼女は身を乗り出して熱弁している。

 マジ帰りたい。





「つまりさ、楓子はあずきが根っから嫌いってわけじゃないんだよね」

「…まぁ、そう言えなくもないです」

 さっきまでの熱弁はどこへやら。ここに関してはまだ歯切れが悪い。


「そこまで夢中で語れるほど追いかけてたのに、目標が腑抜ふぬけてたらアタシだってゲンナリするよ」

「そうですよね!?」

 我が意を得たりといった様子で楓子がこちらを見る。


「じゃあさ、今度の100m走、ひいてはリレーに期待しようよ。またあずきが、楓子の理想の姿を見せてくれたらさ、考え改めるっていうのはどうかな」

「…そう、ですね」

 楓子は複雑な表情ながら、「まだわかりませんけど」と呟いた。


「多分ね、今は振り上げた拳の落とし所がわかってないんだと思うんだ。また昔みたいな感動を味わえれば、きっと仲良くなれるよ」

「…そうだといいですね」

「そう思おう!幸いあずきだってやる気満々だしさ、何事も無ければいい結果が待ってるって!」


 そう、何事も無ければ、きっと大丈夫。

 きっとね。





「今日はありがとうございました。部活終わりで疲れ切ってましたけど、まぁいい気分転換にはなりました」

「キミは本当に素直なのか素直じゃないのか」

 アタシは苦笑して見せる。


「何はともあれ、体育祭を期待してます」

「アタシも。ところで、もう一人の子のケアって、しなくていいのかな」

「雅の事ですか?あの子は楓子に付き合ってくれてるだけなんで、大丈夫だと思いますよ」

「そっか、ならいいんだけど」

「はい、それじゃ楓子はここら辺で失礼します」

 背を向けようとする楓子に、


「楓子も、記録伸びるといいね」

「え…。…皇さんは、あずき側の応援なんじゃないんですか?」

 楓子がジトっとした目でこちらを見る。

 アタシは思った事をそのまま、


「仲良くなった相手が努力してるならさ、応援したくなるじゃん。他人は知らないけど、アタシはそうなんだ」

 楓子は口を尖らせて、


「本当女神だこと。まぁ、受け取っておきます」

 と言い、今度こそ背を向けて歩き出した。

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