体育祭だってよ7
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
十三 龍也:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。のんびり屋。勝利とは幼馴染。実は負けず嫌い。一人称はオレ。
狼山 あずき:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、美未の親友、小倉の姉。美未のいじめ問題を通じて、二人の仲は深まることとなった。一人称はウチ。
狼山 小倉:私立清峯学園一年生。あずきの弟。喧嘩好きでタイマンとはいえ双龍の二人に勝利している。一人称はワイ。
鳥谷 楓子:うぃんと同じクラスで、あずきと美未をいじめていた陸上部員。一人称は楓子。
19時、校門。
門番をしているたっつんと小倉を横目に、アタシはボーッと校庭の方を眺めていた。
『今解決出来るのは、きっとここまでだ』
さっき、そう思ったはずなのに、アタシはなんでここにいるんだろう。
「げ、皇…さん」
ジャージから着替えたであろう楓子が、心底嫌そうな…実際、嫌なんだろうけど、そんな顔でこちらを見ている。
「やっほー楓子。部活お疲れさん、ちょっとだけいい?…いや、別にイチャモンつけにきたとかじゃなくて、ただ、話したいだけなんだけど」
楓子は「うぇ」と唸ったあと、おでこに指を当てると、
「…いいですけど、手短にお願いしますね」
と言ってくれた。
◆
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします」
「失礼します」
店員さんが軽く頭を下げて厨房へ消えていく。
「『お願いします』じゃないんですけど?…どっぷり話す気満々じゃないですか」
半目で抗議するような眼差しを向けてくる楓子。
「まぁまぁ、ここはアタシが出すからさ」
『気楽にしてよ』という気持ちで手をひらひらして見せる。
「…こんな所にまで連れてきて、何が聞きたいんですか」
楓子は肘をテーブルにつけ、手の上に頬を乗せると、つまらなさそうに店内を眺めた。
「んー、アタシもさ、何が聞きたいとかじゃないんだよね。ただ、仲良しな子が悩んでるのは気分が良くなくて」
「仲良しって、あずきですか」
「そ。だから、早いうちになんとか出来ればいいなーと思ってて」
楓子が「はぁ」とため息をつく。
「だったら、あずきと話した方が早いんじゃないですか、楓子が話せる事はもう話しましたけど」
「うん、でもこのままだとアタシとあずきだけの意見で進んじゃうじゃない?アタシ達は楓子の事を知らなさ過ぎる。だから、楓子の事を知りたくて、この機会を設けたの」
楓子がこちらに視線を送り、再び「はぁー」と長い息を吐く。
「楓子の事も考えてくださると?そいつはお優しい事で」
「でしょ?アタシ自称女神だから」
「でも女神って泥水すすった事あるんですかね?上から見下ろすだけじゃ、下々の事はわからないんじゃないですか」
楓子が吐き捨てるように言った。
「なるほど言われてみればその通り。アタシは泥水をすすった事はなくても、カート3台分の荷物をタクシー2台持ち帰った事ならあるよ」
「…は?何が言いたいんです?」
楓子がこちらを睨んでくる。
「お互いに、状況は違えどそれなりに苦労はしてるって言いたい。アタシもスポーツではなかったけど、努力してる大事な事があるんだ」
「…なるほど?」
「だから、楓子の事をもっと知りたい。努力している人間を、頭から否定したくないから」
「そうですか…潔癖な事で」
楓子はつまらなさそうに『ふぅ』と息をつくと、チラッとこちらに視線を向けて、
「…いいですよ、話しましょう。楓子の空回りを努力と言ってくれるなら、話をしてみても良いかなって思えましたので」
「ありがとう、楓子」
アタシが笑顔を見せると、仕方ないなぁといった様子で楓子も笑った。




