体育祭だってよ6
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
兎月 美未:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、大人しめの性格。あずきとのいじめ問題は解消され、今は最初のような仲良しに戻っている。一人称は私。
狼山 あずき:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、美未の親友、小倉の姉。美未のいじめ問題を通じて、二人の仲は深まることとなった。一人称はウチ。
鳥谷 楓子:うぃんと同じクラスで、あずきと美未をいじめていた陸上部員。一人称は楓子。
「楓子はあずきの人柄は知らなかったし、あずきは走りがすごいって事だけが全てだったから、目の前のソイツが酷く(ひどく)醜く思えて、楓子はソイツを否定する事で、自我を保った」
鳥谷は首だけをぐるりと回して、あずきを睨みつける。
「ごめんね、勝手に期待して、勝手に失望して、勝手にいじめて」
その声に感情は感じられなかった。
あずきは地面に落としていた視線を鳥谷に向ける。
「…ウチだって、今こんな感情ぶつけられても困るし」
それはそうだろう。何が原因かもわからず、一年近くもいじめられ、美未ちゃんへのいじめにも加担させられていたのだから。
いじめが無くなったのも、アタシが半ば強引にやめさせただけで、当人同士は冷戦状態のようなものだった。
ただ、どうしても指摘したい事があるので、そこに触れる。
「鳥谷が間違った原因は理解したつもりだけど、それと『美未ちゃん』は関係ないよね。いじめは何が理由であっても許される事ではないけど、巻き込むような形で美未ちゃんを被害者にした事は論外だよ」
アタシの指摘に、鳥谷が顔を上げる。
「それは、そう。皇さんの言う通り」
鳥谷は立ち上がると、美未ちゃんの前で深々と頭を下げた。
「兎月さん、楓子の身勝手な振る舞いに巻き込んでしまって、ごめんなさい」
「…はい、私はもう大丈夫ですから」
美未ちゃんがアタシを見て笑う。
「いじめられている間はすごく辛かったですけど、そのおかげでうぃんちゃんに声をかけていただけたので。とても大切な出会いを与えて下さって、こちらこそありがとうございます」
美未ちゃんの微笑みを見て、鳥谷は苦笑した。
現状、解決出来るのは、きっとここまでだ。
「あずきも、鳥谷も、今日はここまでにしようよ」
「皇さん」
「ん、何?」
「楓子、って呼んでくれない?」
「え、どうして」
「嫌いなの、鳥谷って苗字。飛ぶように走る事も出来ないくせに、鳥なんておこがましい」
「…あー、わかったよ、楓子」
楓子は満足したのか、鞄を肩にかけて部室棟の方へ歩き出した。
きっと部活の準備だろう。
残されたアタシたちは、言葉を交わすでもなく、ただ座っていた。




