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女の子一日目→休み時間

すめらぎ うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、すめらぎ 勝利しょうり。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。


九頭龍くずりゅう 慎吾しんご:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。


十三じゅうぞう 龍也たつや:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。のんびり屋。勝利とは幼馴染。一人称はオレ。

「クラス分けしたヤツ誰だよ…」

「本当にねー」

「問題児を一元管理しようとしたのでは?合理的な思考の持ち主ですね」

 アタシのクラス、二年A組には、たっつんと慎吾もいた。

 慎吾のいう通りまとめて管理しようとしたのであれば、このクラスの担任はよっぽどのドMだと思う。いじめの対象になっていなければいいんだけど。


「僕としてはいつでもうぃんさんに会える、これ以上の幸せはありませんが」

「はいはい」

 クラスの女生徒たちが遠巻きにこちらを見てはヒソヒソ会話している。

 それはそうだろう。新学年になった途端、皇 勝利の姿はなく、代わりにいる女生徒は何故か双龍と親しげに喋り、さらに双龍の片割れは絶賛キャラ崩壊中だ。


ーーん?


 アタシらの囲みとは違う箇所に、別の集団があった。

 気になったので耳を澄ませてみる。


「また一緒だねー、ウチらちょー仲良しじゃねー?」

「…う、うん、そう、だね」

 おや?アタシの超絶地獄耳が、何やらいじめっ子の気配を検知した予感。

 んー、気になったら放って置けないのがアタシの長所であり短所。


「あれー?どうしたのー?」

「ちょっと友達作ってくるわ」

 席を立つと、そのままもう一つの囲みに無理矢理身体をねじ込み、混ざる。「気をつけてねー」


「ねー、何の話?アタシも混ぜてよ!えーっと、ここ四人仲良しなの?」

「…チッ」

 金髪で長髪、リーダー格と思われる女子は舌打ちすると、教室から出ていってしまった。二人の取り巻きも後を追う。

 残されたのは、えーと…髪の毛を左右で束ねている、眼鏡の女の子。

 この子が絡まれてた子かな。


「こんにちは!アタシ、皇 うぃんっていうの。良かったらお友達にならない?」

「え、…でも、私と仲良くしているところを見られると、皇さんも…」

「アタシも、何?」

 恐らく予想通りの答えが返ってくる質問を、あえて投げる。


「皇さんも、いじめられちゃうよ…」





「なるほどねぇ…いじめられる具体的な心当たりは、無いと」

「…はい。…強いていうなら、のんびり屋だったのが目に余ったのでしょうか…」

 んー。それだけでいじめられるもんだろうか。

 『兎月とつき 美未みみ』さんがいじめられている理由。

 わからない。

 この子がいじめられてしまっている理由ってなんだ?


「うん、悩んでわからないなら本人に聞いてみよう!」

「だ、ダメですよ!皇さんも標的にされてしまうかもしれませんし、私も…もっとひどいいじめに遭うかもしれません…」

 「このままで大丈夫ですから…」と必死に懇願する兎月さんを見ていると、いたたまれない気持ちになった。

 この子、眼鏡の奥の目が…曇ってる気がする。

 …晴らしてあげたい。


「兎月さん、まだ出会ってばっかりで信じろも何も無いんだけどさ、絶対悪いようにはしないから、アタシに任せてくれないかな!」

「す、皇さん…」

 救われる可能性と、今まで以上に強くなるかもしれない当たりを、天秤にかけているのだろうか。

 彼女は何度も視線をさまよわせる。

 仕方ない、ちょっとずるいけど、これでダメ押しだ。

 アタシは兎月さんの耳元に口を近付けると、


「大丈夫、もし何かあったら双龍に介入してもらうから」

「えぇ!?」

 兎月さんは心底驚いた様子だったが、今の言葉が響いたのだろう。

 やがて両手をちょこんと机に置くと、「…よろしく、お願いします」と言ってくれた。


 やはりこの学園を守る双龍の存在は偉大だ。

 …いや、双龍がいるから、学園が危険なんだけれども。





 さて、そうなると次にアタシがやる事は、もちろん本人への聞き込みっしょ。

 あのパツキンはどこへ行ったかなーっと、…あ、いた!

 三人仲良く中庭でジュース飲んでる。

 アタシは怒られない程度に早足で階段を降りる。二年生から三階になった分降りるの楽だわ。


 中庭へ出る扉を開けると、三人はまだそこにいた。


「やっほー、『狼山ろうやま あずき』さん!親友になりに来たよん」

「アンタ…皇?…何なんだよさっきから!」

 ダンッ!と敷き詰められたレンガを踏み鳴らし、長椅子から立ち上がる。

 おお、気性荒れぇな。

 アタシは猛獣に接するように、どーどーと両手を柔らかく上下させる。いや猛獣との接し方知らんけど。

 その態度が火に油を注いだのか、持っていた紙パックのジュースを投げつけてきた。

 アタシは上半身を捻ると、飛んできた紙パックを避ける…ついでに、キャッチ。


「くれるの?サンキュー」

「あっ!」

 アタシがストローに口を付けようとすると、狼山が声をあげる。


「んー?間接キッス未遂、びっくりしちゃったー?」

「…ッ!!」

 やばい、ナチュラルに煽ってしまった。

 狼山が顔を赤らめて睨みつけてくる。

 狼山はズカズカとこちらへ歩み寄ると、そのままグッとアタシの胸ぐらを掴んだ。


「アンタ、何がしたいわけ?ウチらにボコられてーの?」

「いやいや滅相もない!ただ、ちょっと聞きたいことがあってー」

 ヘラヘラと笑って見せたあと、


「なんで兎月さんのこといじめてんの」

 直球で切り出した。


「…か、カンケーねーだろ!」

 狼山は顔と顔を近付けると思いっきり叫んだ。

 正直場慣れしてるこっちとしては、全然怖くない。


「関係はあるよ、アタシの認識している範囲のいじめは絶対に許さない。ずっと前から決めてんだよね」

 胸ぐらを掴まれながら、狼山を睨みつける。

 無表情の睨みが応えたのか、狼山はアタシの胸ぐらから手を離してそのまま突き飛ばした。


「とにかく、そういうわけだからさ、兎月さんのことは解放してもらうね。アタシ、彼女と友達になったから」

 にっこりと微笑む。

 特に異論はないようなので、これで良しとする。

 アタシはクルリと半回転すると、教室へ戻るべく元来た道を引き返した。

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