デスティニーパークへ行こう!からの帰宅
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
「ほい、無事到着ッス」
そう言うと、その子はアタシの家の前で立ち止まった。
アタシの名前を知っていて、アタシの家まで知っている。
でも、アタシはこの子と面識がない。
「どうしたんッスか?入らないんッス?…ボクが開けちゃうッスよ?」
その子はガチャとドアを開けると、
「ただいま帰りましたッスー」
とても自然に声をかけると、先に中へ入っていく。
え、なんで?
「あら、遥ちゃん、お帰りなさい!お迎えありがとうね」
パタパタと玄関へ現れた母さんが、当たり前のようにこの子にお礼を言った。
「大丈夫ッス!少し危ない状況だったんで、瞬が後始末に向かってるッス」
「まぁまぁ!何かあったの!?」
母さんが心配そうにこちらを見る。
なんと言っていいものかわからず、アタシは曖昧な表情を浮かべた。
「可愛いっていうのも考えもんッスねー」
遥と呼ばれたパーカーの子は、涼しそうな顔で言う。
「とりあえずお迎えありがとう、二人とも中に入って」
「了解ッスー」
「うん、ただいま」
◆
「え、じゃあ二人はアタシの親戚なの?」
「そうらしいッスよー、ウチの母親がおじさんの妹なんッス。…ウチの母親はおじさんと不仲っぽいッスけど」
アタシの質問に遥が答え、冗談っぽく笑う。
父さんは苦笑しながら頭をかく。
「まぁ、そうだね…ウチは長男贔屓が凄かったから、正美、妹は苦労して育ってね…あまり兄妹仲は良くないんだ」
「それなのに、どうして存在すら知らなかった親戚が急に?」
「それなんだけど、正美の旦那さんが海外出張になったらしいんだ」
海外出張。やり手の人なんだろうか?
「正美は旦那さんをサポートするために一緒に行きたいが、この子達は日本に残りたいみたいで、面倒を見てくれないかと言われてね」
「そういう事ッス」
突飛な事情ではあるが、じいちゃんを始めとして、性転換させちゃう両親といい、血筋なのかもしれない。
なんて理解のあるアタシ。
「今は勝利くんもいなくて、他にも居候を面倒見てるって話ッスから、ボクらの面倒も見てくれないかってダメ元で頼んだんッスよ」
「へぇ…そ、そうなんだ」
「ところでうぃんさん、めっちゃ可愛いッスね?こんな可愛い親戚がいるなんて知らなかったんッスけど、皇家とはどういう関係なんッスか?」
「「えッ」」
アタシと父さんがハモる。
どうしよう、一応、一応アタシが勝利だということは隠している。
一応とにごしたのは、既にアタシが勝利だと知っている同級生が数人いるからだ。
「お義父様、モテるから」
台所から母さんの声が聞こえる。
「…え?そ、ういえば、叔母さん、うぃんさんと似てるッスね…。…あ、あぁ…聞いちゃいけない感じっぽいッス」
遥が挙動不審になって色々な所に視線を彷徨わせる。
なんだかよからぬ妄想、母さんとじいちゃんのいけない関係に想いを馳せているようだが、母さんが笑っているので特に訂正しない事にした。
…アタシと勝利の誕生日的にどう考えても無理なのだが。




