デスティニーパークへ行こう!からの帰り道
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
「でも本当に今日はありがと、めっちゃ楽しかった!」
「もう、何度目ですか、僕も楽しませていただきましたし、本当お気になさらないでください」
そう言うと慎吾は困ったように笑う。
お礼を言われ慣れていないのだろうか(失礼
ーー清峯ー、清峯ー。
「あ、意外と早かった」
「…本当に送らなくていいんですか?もう結構暗いですけれど」
「大丈夫だって!そんな気にしないでよ、駅からそう遠くないのは慎吾も知ってるでしょ!」
「それは…まぁ」
納得のいっている様子ではないが、実際何か起こる事なんて稀だ。
まぁ、じいちゃん関連で何度か誘拐されかけたことはあるが、今のアタシはうぃんな訳で。そんな厄介な連中とは無縁なのである。
◆
「お嬢ちゃん可愛いねぇ…暗い所だと危ないよ、おじちゃんの家に帰ろうか」
厄介な連中とは未だ縁があるようだった。
こっちはこっちでこういった危険があるとは思ってもみなかった。
「い、いえ…親が心配するので、お心遣いありがとうございますぅ」
「待てよぉ」
ーーガシッ。
わあ、気持ち悪い、鞄を持っていなかった右腕を掴まれる。
…うん、正当防衛だよね?ちょっと痛い目見てもらって。
「え」
と、思っている間に、両腕を掴まれ…、
ーードンッ。
道端の塀に押し付けられた。
え、ちょ、何これ…コイツ、力強くね?
違う、
アタシが…弱い。
ーーゾワッ。
気付いて、震える。
そういえば父さんに抱きつかれた時もそうだった。
男だった時の力は、もうない。
この程度のおっさんを振り払う事も出来ない。
いくら家が近いからと言う理由で、こんな街灯がまばらな道を歩くべきではなかった。
どうする、どうする。
そうだ、叫んで…
「大声出すと、乱暴にしなくちゃいけないからさぁ…大人しくしててね」
…力で優位に立っているのに、
刃物まで出してくるんですか?
アタシに出来る事は?
何が出来るの?
怖い、
怖い!!!
「さぁ…おじちゃんの家に行こうねえああああぁぁぁッ!!!」
気持ち悪い顔が近付いてきたと思ったら、ものすごい勢いで横にすっ飛んでいった…。
おっさんは道路に転がりながら、右脇腹をおさえている。
…誰かが、蹴った?
アタシがサッと顔を向けると、パーカーを着た二人組がこちらを見ていた。
「大丈夫か」
二人組の内、身長の高い方が声をかけてくれる。
「は、はい…」
「コイツどうするッスかねー、警察呼んじゃうッスかねー?」
おっさんは痛みに悶えながら、こちらを伺い怯えた様子を見せる。
「おじさん、その子はちょっとハードルが高いんで、ボクらと遊ぶ?ッスかね」
背の低い方の子がそう言って笑う。
「ひ、ヒィイイイイイッ!!!」
おっさんはそのままよろよろとよろめきながら暗闇の中へと消えていった。
背の高い方が無言で後を追う。
「やっぱこのまま逃したんじゃ、今後も嫌な思いするかもしれないッスから、ケジメつけてくるみたいッスね」
背の低い方の子はケラケラ笑う。
…確かに、ここを通らなくても、これからこういう場所を通るたびに、思いだす。
犯人が捕まっていないのであれば、尚更。
「じゃ、行くッスかね。送るッスよ、うぃんさん」
「え、なんでアタシの名前を知ってるの?」
その子はただニンマリと、笑顔を見せるだけだった。




