デスティニーパークへ行こう!6
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
兎月 美未:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、大人しめの性格。あずきとのいじめ問題は解消され、今は最初のような仲良しに戻っている。一人称は私。
狼山 あずき:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、美未の親友、小倉の姉。美未のいじめ問題を通じて、二人の仲は深まることとなった。一人称はウチ。
「慎吾…起きて、着いたよ…早く移動しないと…」
「んあッ…!ハッ、うぃんさん…もしかしてまた…」
「うん…あのトンネルでやられた…次の人たちが待ってるから、降りよう」
アタシは慎吾に肩を貸しながらゴンドラを降り、出口を目指した。
出口にはあずきと美未ちゃんが待っていて、ニンマリ笑顔で出迎えてくれた。
「さすがのスピード自慢だったし?」
「…普通に走ってるとこ見る限り、あそこまでなんて思わないじゃん」
アタシの弱音にあずきが満足そうに笑う。
アタシたちはアトラクションの建物から出ると、通路の端で人心地つく。
「非日常感、テーマパークの醍醐味を味わえましたか?」
「うん…とっても。慎吾に至っては喧嘩の時より気絶してると思う」
「…おっしゃる通りです」
双龍も乗り物相手では形無しといったところだろうか。
慎吾もかなり具合が悪そうなので、アタシは二人に聞いてみる。
「混みそうなコースターを2つクリアして、これから先はどのアトラクションもそれなりに待つんだよね?」
「そうですね。今回はクイックパスも使いませんし、ここからはゆっくりで大丈夫ですよ」
美未ちゃんがアタシの気持ちを察して「落ち着けますよ」と教えてくれた。
アタシと慎吾は二人して息をついた…。
そんなアタシたちを見て、あずきと美未ちゃんが笑う。
「…楽しかったけどさ、開始一時間ちょいでここまで異次元の経験をすると思わなかった」
「…僕に至っては2戦2敗です、しかもどちらもKO負けですからね」
憔悴しきったアタシたちを見て、美未ちゃんが動いた。
「もし気持ち悪さが酷くなければ、甘いものを少し口に入れて気分転換しませんか?」
「あ、アタシ甘いもの欲しい…出来れば飲み物、炭酸も」
「わかりました」
「少し待ってくれ、代金を渡す」
慎吾がノロノロ動いたところを美未ちゃんが手で制す。
「ここは私が持ちます。少し無茶な遊びに付き合わせたお詫びです」
「じゃあ美未は甘いもんお願い、ウチが飲みもん買ってくるし」
二人はそういうと、各々調達へ向かってくれた。
「なら、アタシらは場所確保。そこのベンチ借りようよ」
「そうですね、そうしましょう」
アタシと慎吾は近くのベンチに腰掛けると、二人で「はぁ」とため息をついた。
「…女の子って強いですね」
「…アタシも女の子のはずなんだけどね」
「女の子見習い、という事で」
「何それ、でも初見じゃなければアタシだってついていけると思う」
「それは僕だってそう思います」
二人で意味のない強がりを言っていると、あずきと美未ちゃんがこちらに向かって歩いてくる。
「やはり遊園地や映画館といえばキャラメルポップコーンです」
「そして、メロンソーダだしー!」
ベンチは三人掛けなのでどうしたものかと思ったら、意外にも空気を読んだのか、あずきがアタシの前にしゃがみ込んだ。
それを見て美未ちゃんが座り、慎吾、アタシ、美未ちゃんの順でベンチに腰掛ける形になった。
「いやーしかし九頭龍が気絶した時は笑ったし!!」
あずきがポップコーンを食べながら言った。
「いくら初めてとはいえ、本当に気絶される方がいるとは思いませんでした」
美未ちゃんもメロンソーダを飲みながら笑う。
「人間誰しも弱点はあるって事だよ、アタシだって苦手なものあるし」
「の割には、なんでついてきたんだし?」
あずきが意地悪そうに言う。
「…決まってるじゃないか、うぃんさんに誘っていただいたからだ。そうじゃなければ誰がこんな…あ」
慎吾が慌ててこちらを向く。
「あ、いえ、誘っていただいた事は本当に嬉しかったんですよ!ですから苦手であっても絶対に参加したいと思ったんです!」
必死に弁解する慎吾に思わず笑ってしまう。
「大丈夫だよ、まだ二つしか乗ってないけど、本当に苦手なんだろうなって思ったから。むしろ付き合わせちゃってごめんね」
「謝らないでください!もし次の機会があるのであれば、それがまた財布役であったとしてもお供しますッ!」
そこまで言い切るくらい、一緒にいたいと思ってくれているのか。
本当に好かれているんだなぁと思うと、ほっこりした気持ちになる。
「去年からは想像がつかないほど積極的だね?」
「性別的な障害がなくなりましたので」
「ふふ、ありがと」
アタシのお礼に、慎吾は顔を赤らめて空を見上げた。
「なんか、モヤっとするしー」
「またデスティニーザライドに乗ってもらいます?」
「やめたげてよッ!!!」
アタシらの甘ったるい空気をぶち壊す、常連組からのキツイ脅しだった。




