デスティニーパークへ行こう!3
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
兎月 美未:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、大人しめの性格。あずきとのいじめ問題は解消され、今は最初のような仲良しに戻っている。一人称は私。
狼山 あずき:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、美未の親友、小倉の姉。美未のいじめ問題を通じて、二人の仲は深まることとなった。一人称はウチ。
「な、なぁあずき!?アタシら今どこに向かってるんだ!?」
パークの入場後も全くスピードを落とす気配のないあずきに走りながら問いかける。
あずきはチラッとこちらを見ると、
「三大コースターの真ん中、フライングチェーンソーだしー!」
「真ん中?位置的な意味か!?」
「そー!先にフライングチェーンソーに乗って、その後最奥のデスティニーザライド!パーク入り口付近のフリーリィは、並ぶ覚悟で最後に乗るし!」
なんて計画的。
空いている手で先ほど入場時にもらった地図を見る。
入り口付近のフリーリィは一度捨て置き、残りの二つをいかに効率的に乗るかという作戦か。
物理的に遠いデスティニーザライドはフライングチェーンソーに乗った後でも並びが少ないと判断したのだろう。
恐らくあずきと美未ちゃんで練ったプランだろうが、なんとも頼もしいことだ。
後ろを見ると、やや遅れて慎吾と美未ちゃんもしっかりついてきている。
慎吾は余裕なのだろうが、美未ちゃんも走れているのは意外だった。
体育であればここまで走れてはいないだろう、恐るべしパークマジック。
「うぃんはこの広さ、どう思うー?」
「そうだね、ワクワクする広さだと思うよ!広いって事はアトラクションの数も多くなるだろうし!」
「だよねー!ウチも同じ意見だし!」
こちらを向いてあずきが笑う。
「だから、このダッシュもアトラクションの内!もうちょっとだし!」
「なるほどね!確かに移動まで楽しくなってきた、ありがと!」
「にしし、楽しめ楽しめー!」
ただ疲れるだけの移動だと思っていたが、不思議と楽しくなってくる。
あずきの気遣いがとても心地良かった。
◆
「走ったかいがあったしー!すぐ乗れそうだし!」
「やったねあずきちゃん!」
二人は混み具合の確認をすると、アタシを見てニヤリと笑った。
な、なんだよ。
「うぃんちゃん、フライングチェーンソーの経験はあるんですか?」
「いや、アタシは初めてなんだよね。だから楽しみ!」
「へー…初めてなんだしー?」
どう見ても、ニヤニヤしている二人。
な、なんだよ、何を企んでいる。
「…ねえ慎吾、二人に含みがあるんだけど、心当たりある?」
「いえ、僕は特に…なんでしょうね?」
アタシと慎吾はハテナマークを浮かべながら順路を歩く。
行列を想定した順路なだけあって、並ぶ人こそ少ないものの、少し歩かされる。
しかしスイスイ進めるため、このアトラクションがどんなものなんだろうなーという思いを馳せながら歩き続ける。
そう、歩き続ける。
「ようこそ!お客様は四名様ですか?」
「そうだしー!」
「それでは足元一番の列にお並びください!」
アタシたちは言われた通りに一番の列まで…。
「…待って、一番って、最前列なんじゃ…」
「にしし、これはこれはー」
「楽しみですね、うぃんちゃん」
二人はとてもご機嫌そうだ。
ちなみに特に決めたわけではなく、並び順は奥から、あずき、アタシ、美未ちゃん、慎吾になったようだ。
「それでは足元にお気をつけて奥から詰めてお乗りくださーい!」
キャストのアナウンスがあり、アタシたちは座席の前に…え?
「ね、ねぇ…これ変じゃない?座る所はあるけど、足元宙ぶらりんだよ?」
「今でこそ普通に座れるけど、発進前に前傾姿勢に稼働するんだし」
マジかよ…なんかそれって、怖すぎない?
『座席に着きましたら安全バーを下ろしてキャストの確認をお待ちくださーい』
スピーカーからアナウンスが流れる。
直後、キャストが現れてアタシたちの安全バーを確認していく。
…え、待って、アタシ気付いたことがあるんだけど。
「ねえあずき、美未ちゃん、アタシ、ふわふわしてる。ここまで一切待たずに来れたから、『なんの心の準備もできてないの』」
「…それが狙いだし」
「あ、あずき!?」
「楽しみましょうね、うぃんちゃん」
「美未ちゃん!?」
アタシの右手をあずきが、左手を美未ちゃんが、それぞれ恋人繋ぎで握ってくる。
「ま、待って二人とも、手を握られたら安全バーを持てな…」
『それでは空を切り裂いていきましょー!フライングチェーンソー、はっしーん!!』
ーープルルルルルル!!
アナウンスの後、恐らく発車を告げる音が鳴る。
ひッ!乗り物がやや上昇し、あずきの言った通り前傾姿勢になった!
稼働する乗り物…そのまま頭の方に向かって進んでいく。
落ち着け…大丈夫、少なくともデスティニーパークで事故が起こったという話は聞いたことがない…今回も何事もなく終わる、大丈夫、大丈b
「ね、ねぇ…嫌でも足元丸見えなんだけど、そして…なんか高くない?やばい、なんか『もう無いのに』股間がスースーするッ!!」
「めっちゃ上がるしー!うぃん、これからもっとすごくなるよ!」
「…うぃんちゃん、落ちたら大変ですね?」
「美未ちゃんサラッと怖いこと言わないでッ!本当最近ドSだよッ!?」
アタシは繋いだ両方の手をギュッと握る。
乗り物の上昇が終わらない…え、ウソ、どこまで上るの?
え、どこまで…あ、もうダメ。
「…アタシ、遠くを見る事にする」
「うぃんさん」
遠くから慎吾の声が聞こえる。
「僕は、最初から遠くを見ていますよ」
「同志よ」
アタシは左右のモンスターより、一つ席の離れた相棒と心を通わせた。
と、上昇が止まる。
そのままの高度で少し進んだかと思ったら、徐々に頭が下がって行き…!
ーーゴオオオオオオオオッ!!
「ぎゃああああああああッ!!!!!」
「「キャアアアアアアアアッ!!!!!」」
アタシの悲鳴と両サイドの歓声がユニゾンする!
なんて感想を言ってる暇もないほど高速の落下!!
からの急上昇ッ!?背中のシートに身体が押し付けられるッ!!
「怖いッ!!死ぬッ!!」
「あははは!うぃん!面白いね!?」
「面白くなあああああいッ!!!!」
「うぃんちゃん、ループきますよ!!」
「くんなあああああッ!!!あああああああッ!?」
やばいやばい!!本能が身の危険を感じているッ!!
アタシは席の離れた同志の事を思い出した!!
「慎吾ッ!大丈夫ッ!?」
「…」
返事がない、ただの慎吾のようだ。
「九頭龍さんなら最初の落下以降悲鳴が聞こえなくなりましたよ!」
「逝ったああああああああッ!!!!」
美未ちゃんからの報告を受け、アタシは先立ってしまった同志に思いを馳せながら、モンスターマシンの責めに耐え続けるのだった。




