表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/62

女の子一日目→始業式?

すめらぎ うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、すめらぎ 勝利しょうり。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。


十三じゅうぞう 龍也たつや:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。のんびり屋。勝利とは幼馴染。一人称はオレ。

 休み明け初日にさ、体育館に押し込められて、校長の話聞けって?

 無理無理、たとえじいちゃんの話だったとしても、アタシはこうするね。


ーーガラガラ。


 廊下に誰も居ないことを確認すると、上の窓からよじ登る。


「よいっしょっと…」

 窓枠を乗り越え、室内に着地する。


「おー?しょーちゃんきたかー?」

 たっつんの背中越しにアナログテレビを覗き込む。

 画面にはゲーセンでも見かけるガンシューティングが映っているが、たっつんは『パッドのコントローラー』で照準を次々合わせては、華麗にゾンビを撃ち抜いていく。

 ここ、パソコン部の部室には、ガンコンがない。

 だからアタシたちはこの高難度のゲームを十字キーで照準を合わせるのだ。


「今集中してっからー、チョッチ待ってれー」

「アタシも参戦してもいいかな?」

「…」


「あ!?」

 ギュルンッ!という音が聞こえそうな速度でたっつんが振り向く。

 アタシは手をひらひらさせると、笑顔をみせる。


「へへ、アタシが誰かわかる?」

「え!?は!?…しょー…ちゃん、っぽいけど…え?」

「さすがたっつん、幼馴染」

 たっつんの隣りに腰を下ろすと、「ほら、ゾンビ来てるよ?」


「あ!あぁ!?え!?」

 絶賛混乱中のたっつんはテレビとアタシを交互に見るが、そんな状況でクリア出来る難易度ではなく、あっという間にGAMEOVERの文字が浮かび上がった。

 ちなみにこのゲームにコンティニューという甘っちょろい機能はない。家庭用に移植された際、なぜか撤廃されてしまった。


「…しょー、ちゃん?」

「うん」

「え、待って意味わかんない、何その制服、何その胸」

「どっちも本物だよ、触ってみる?」

「え!?ええ!!?」

 目を見開き、今度はアタシの顔と胸を交互に見る。

 フハハ、たっつんおもしれー。





挿絵(By みてみん)


「はぁー…じゃー、コンビニで別れた後、そんなことになってたんかー」

「そうなんだよねー、いやー我ながらとんでもないことになった」

「しょーちゃん、どっか他人事なんだよなー」

 たっつんが笑う。

 それは仕方ない、実際起きてからまだ二日目なんだから、全然実感がないのよ。


「女の子になったのはどうあれさー、家庭環境が改善されたのは、良かったなー」

 たっつんが満面の笑みを浮かべる。


「本当に、そう思う」

「しょーちゃんの悩みのタネだったからねー」

「なんだかんだあったけど、仲良く暮らせそうな気がするよ」

「うんうんー、良かったねー。ところでさー」

 たっつんが腕を組む。


「喧嘩、どうしよっかー?」

「それなー…」

 家庭の幸せと引き換えに、アタシは喧嘩を失った。

 正確には、喧嘩で勝つための力を失った。

 今のアタシは、とても二人に並び立つことは出来ない。完全な足手まといだ。


「いきなり『ハイおしまい』とはいかなくても、それとなく、終わりを匂わせるしかないのかもね」

「そっかー…慎吾にも伝えないとなー」

「し、慎吾…ね」

「?」

 不思議そうな顔で覗き込んでくる。

 いや、不思議なのは慎吾の方。アタシはふつ…普通じゃないけど、おかしいのは絶対あっち。


「たっつんさ、慎吾が女の子に優しくしてるところ、見たことある?」

「慎吾ー?いやー、っていうか性別にカンケーなくそっけないよねー」

「…だよねぇ」

「なんかあったんー?」

「んー、通学路でアイツに会ったから、先に事情を説明したんだけどさ…」


「笑顔で手を握ってきたー!?」

「…うん」

 驚き顔は次第に笑顔に変わっていった。


「それね、多分好きが溢れたんだと思うよー」

「…何それ」

「なんで勉強大好きな慎吾が喧嘩に参加してるか知ってるー?」

「もちろん、ストレス発散でしょ?」

「それは口実ー。本当はねー、忙しい時間を削ってしょーちゃんとの時間を確保してたんだよー」

「はぁ!?」

 無意識にのけぞりながら大袈裟な反応をしてしまう。


「慎吾はしょーちゃんラブだったからねー、女の子に興味なかったのは、それはそー。だってしょーちゃん一番だったからー」

「え、待って待って全然わかんない」

「言葉通りだよー」

 え、つまりだよ。アタシが男だったから、近くに居ただけで済んでたけど、アタシが女になった以上、何も遠慮することが無くなったって…コト!?


「そんなことありゅぅ!?」

「あるんだろうねー、元々しょーちゃん可愛かったじゃん。女の子になって可愛さマシマシだよー」

 こちらの葛藤をお構いなしに、おかしそうに笑う。


「…え、たっつんは?アタシをそういう目で見たり、するの?」

 恐る恐る聞いてみる。


「オレ?オレはー、そうだねー…複雑、かなぁ」

 ポリポリ頭をかく。


「一応親友ポジだったはずのしょーちゃんが、女の子になっちゃったわけでしょー?…しょーちゃんのことは好きだけど、これからどうなるんだろーって感じ」

「それはそう」

 それが普通の反応だと思う。慎吾が異常なんだ。

 とはいえ、アタシとしては数少ない友達がいなくなるのは、とても困る。なので、


「アタシは…うぃんとしてだけど、これからも一緒にいてほしい」

 たっつんは驚いた顔でこちらをみると、いつも通りの笑顔で、

「それはそー」

 と微笑んでくれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ