アタシが馬鹿だったらどうする?3
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
兎月 美未:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、大人しめの性格。あずきとのいじめ問題は解消され、今は最初のような仲良しに戻っている。一人称は私。
狼山 あずき:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、美未の親友、小倉の姉。美未のいじめ問題を通じて、二人の仲は深まることとなった。一人称はウチ。
【四月二十九日(月)】
昭和の日。
祝日。
学校はお休み。
なのに、アタシは教科書と睨めっこしていた。
不思議なもので、今までは前提がわからなかったからつまらなかった勉強だったが、最近は問題が解けるため面白ささえ感じている。
「本当に九頭龍さんを誘わなくて良かったんですか?」
喫茶店の一区画で、不安気に首を傾げる美未ちゃん。
アタシは人差し指を立てるときっぱりと宣言する。
「美未ちゃんは気を遣いすぎ!アタシには美未ちゃんがいれば大丈夫!」
しかし、美未ちゃんの不安が伝染したのか、今度はアタシが尋ねる。
「…もしかして、美未ちゃんの勉強時間、削りすぎちゃってる?慎吾にバトンタッチする?」
「い、いえ!私は本当に大丈夫なんです!」
美未ちゃんが慌てて手を振り、否定する。
ーーズズズッ。
オレンジジュースを勢いよく吸い、「ぷはぁ」とあずきが言った。
「大丈夫だしー、美未はウチらがちょっかいかけてても成績キープしてたし!ごめえええええんッ!!!」
ーーゴンッ!
あずきは美未ちゃんの事を自慢したかったようだが、途中で自分がやってきた罪悪感に押しつぶされたようだ。お前は巻き込み型自虐爆弾か。
美未ちゃんがクスクス笑う。
「そうだよね、あずきちゃんにいじめられてても頑張った勉強、うぃんちゃんの復習くらい何の邪魔にもならないよ?」
時折見せるイジワル美未ちゃんがあずきに追い討ちをかける。
あずきは弱々しそうに顔を上げる。
「ごめん…ウチ、美未の事自慢したくて、自滅した…」
うぅ、と再びテーブルに突っ伏すあずき。
「美未はすごいの…本当に…」とうわ言のように呟いている。
しかし、慎吾との事をずっと放置するわけにもいかない…よなぁ。
アタシは何となく美未ちゃんに聞いてみる。
「美未ちゃん、アタシの慎吾への対応って、不自然?」
「不自然、だと思います…」
「そうかぁ…美未ちゃんがしきりに気にしてくれるくらいには、不自然なんだねぇ」
はぁ、とため息をつく。
とはいえ、どうしたものか全くわからない。
沙耶への嫉妬から始まった一連の宣言。
…。
え、結局慎吾のせいじゃね?
「ねえ、始まりは慎吾の対応不備なんだから、よくよく考えたらアタシ悪くなくない?」
「それはそう、ちょっと情けないしー」
ガバッと起き上がり、あずきが言う。
「…そうなんですよね、私も強く言えないのは、九頭龍さんが不甲斐ないというか」
控えめにズバッと直球を放り込んでくる美未ちゃん。
とはいえ、少なくともここにいる三人の意見が一致しているのであれば、アタシは何も怖いことはない。
「アイツが悪い」
「うん」
「…はい」
よし、この件はこれで終わり。
よくよく考えたら、なんでアタシがサービスしてあげなきゃいけないの。
アタシ達の時間は有限!
主従関係こそあれ、そこまで気にしてあげる必要はないのだ。
「アタシ、頭切り替えるために糖分摂取する!」
「いーねー!ウチパフェ食べよっかなー」
「私はケーキ頼みたいです!」
こうして、アタシ達は勉強会の後半戦に備えるのだった。
「ってなんであずきがいるんだよおおお!!!馬鹿がバレるだろうがああああ!!!」
「あ、ごめんなさい」
美未ちゃんが口に手を当てて驚いたように言った。
あずきはキョトンとした様子でこちらに顔を向ける。
「え、うぃんは残念おバカキャラって認識だしー」
「あああああああ手遅れだったあああああ!!!!」
静かな喫茶店に、アタシの絶叫が響く。
カウンターの奥で、マスターが微笑んでいた。




