なんでアタシに言わねえんだ!3
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
狼山 小倉:私立清峯学園一年生。あずきの弟。喧嘩好きでタイマンとはいえ双龍の二人に勝利している。一人称はワイ。
鵜飼 沙耶:私立清峯学園一年生。街で絡まれている所を慎吾に救われたことから、ベッタリとくっついている様子だが。一人称はあーし。
鵜飼に連れられて、アタシたちは一年C組の教室にきた。
「ここ、あーしのクラスなんですけど、ソイツらも同じクラスなんです」
「そっか。じゃあ心が休まらないわけだ」
「…はい」
鵜飼が苦笑する。
事情を聞いた今では、慎吾を頼りたい気持ちも理解出来る。
不快感を抱く相手とずっと同じクラスでは息も詰まるだろう。
鵜飼は教室の外から四人組のグループを指差した。
「あのツンツン髪がリーダー、犬神です」
「オッケー、じゃあチャチャっと解決しちゃおっか」
アタシはズンズンと教室内に侵入すると、犬神に向かって歩いた。
犬神の背後にきたところで、「おい」とグループの一員が声をかけた。
その声に、犬神がアタシを視界に捉える。
「ん?誰?…ってあれ、沙耶ちゃーん!自分から来てくれるなんて珍しいねー!」
「…気安く呼ばないでもらえる」
犬神に気色悪い顔で見られた鵜飼が吐き捨てるように言った。
なるほど、こんな顔を向けられちゃあげんなりするわけだ。
「誰この人、めっちゃ可愛いじゃん。何、二人とも遊んでほしいの?」
四人グループがニヤニヤしてこちらを見る。
教室内がザワザワしてきた。
「鵜飼さんはアタシの友達なの。ちょっかいかけるのやめてもらえないかな」
「ちょっかい?それって、こういうこと?」
犬神がアタシの胸に手を伸ばす。
「やめて」
パチンと伸ばした手を叩き落とす。
ニヤニヤ笑っていたグループメンバーたちが驚いた表情を浮かべる。
犬神に至ってはニヤニヤ顔で静止し、鵜飼はポカンした顔でこちらを見ている。
「な、なんだお前、痛えだろうが!」
急に怒り狂った犬神がビンタしそうな腕の振りだったので、アタシは首を後ろにそらして軌道から回避する。
ーーブゥン。
空を切る犬神の右腕。
「わあ怖い。叩かれたら痛そうだから、避けちゃった。ごめんね?」
「くッ、コイツ…!!」
犬神がアタシの襟に手を伸ばす。
それを先ほど同様に叩き落とす。
「だから、やめてって」
「こ、このッ…!!」
我慢の限界がきたのか、いよいよ大きく振りかぶって殴りかかってきた。
右腕で。
アタシはその腕を両腕で掴み、自らの右肩を犬神の脇の下に潜り込ませる。
腰を下げ、自分の腰に相手の腹を乗せると、そのまま勢いよく両足を伸ばす。
ーーダァンッ!!
机と机のわずかな隙間に、犬神の背中を叩きつけた。
一本背負。
身長の低いアタシは相手の懐に潜り込みやすいため、度々この技に助けられてきた。
「先…輩」
鵜飼が信じられないといった表情でアタシを見る。
「ごめんね、びっくりしたからつい」
床で悶絶している犬神に、てへへと笑ってみせる。
「あちゃー、めっちゃヤバい音したと思ったら、どえらい人とやり合ってるやん」
「あれ、その声は…」
アタシが声の方を振り返ると、狼山 小倉がそこにいた。
「よっす!うぃんちゃん、よーこそ我がクラスへ!」
小倉が笑いながら近付いてくる。
「なんだー、小倉がいるなら早く言ってよー。この子たち、鵜飼さんにちょっかい出してるっぽいから躾けといて」
「あらあら、君ら気ぃつけんとあかんで?この人はワイに勝った人やからな。相手は選んでちょっかいかけなあかん」
「…ちょ、ちょっかいはコイツから」
取り巻きの言葉はスルーし、小倉がご愁傷様といった表情で忠告する。
鵜飼はというと、キョロキョロと忙しそうにアタシと小倉を見比べている。
アタシは鵜飼に向かってピースサインを作った。
「はい、解決。これで慎吾に付きまとうのはやめてね?」
「は…はい」
鵜飼が素直に返事する。
うんうん、これにてアタシの不快感もおさまることでしょうよ。
「もう、慎吾さんには迷惑をかけません!『お姉様』!」
「ん?」




