なんでアタシに言わねえんだ!2
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
十三 龍也:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。のんびり屋。勝利とは幼馴染。一人称はオレ。
鵜飼 沙耶:私立清峯学園一年生。街で絡まれている所を慎吾に救われたことから、ベッタリとくっついている様子だが。一人称はあーし。
「慎吾さーん!」
昼休み、クラス中に響く声で鵜飼が慎吾を呼んだ。
クラス内がざわつく。
当の慎吾は頭を両手で抑えている。
相変わらず不快感は拭えないが、放っておくわけにもいかない。
アタシは『ガタッ』と椅子を鳴らして立ち上がる。
「たっつん、行ってくる」
「あいあいー、いってらっさーい」
たっつんはヒラヒラと手を振りながら見送ってくれた。
「鵜飼さん?ちょっといいかしら」
アタシは精一杯の営業スマイルで鵜飼に話しかける。
「は?あーしアナタのことなんて呼んでないんですけどー」
めちゃくちゃ生意気な態度を取られてしまった。
初期のあずきを彷彿させる。
それでもアタシは平静を装って続ける。
「…いいから、ついてこいっつってん…ですよ」
いけね、思ったよりも平静さがなかった。
「ッ…な、なによ…し、慎吾さん呼ぶわよ!」
「呼んでもいいけど、慎吾はアタシの言う事を聞いてくれると思う」
「!あ、アンタ、慎吾さんの何なのよ!」
鵜飼が金切り声で叫ぶ。
ーーアタシは、慎吾の何なんだ?
ちょっと待って、それはアタシも気になる。
アタシは、慎吾にとって、なんだ?
「…、…んー、生徒?」
「何よ生徒って!アンタの方が下じゃない!なんで慎吾さんが言うことを聞くのよ!」
「あー、違う、じゃあ…えー…仲間、なんだけど」
「仲間?アンタが?慎吾さんの?ぷっ!マジウケるんですけど!アンタなんかが慎吾さんの何になれるっつーのよ!」
あは、コイツ殴りたい。
「とにかく、鵜飼さんよりも深い絆で結ばれてんのよ」
「はぁー?もしかして、慎吾さんと付き合ってるんですか?」
慎吾が『ガタッ』と立ち上がる。
「んなわけないでしょ」
慎吾は『スッ…』と静かに座り直す。慎吾も何がしたいのよ。
「いいから、ちょっとついてきなさい」
「…なんであーしが」
アタシはブツブツ文句を言う鵜飼を連れて教室を出た。
◆
階段の踊り場に着くと、後ろの鵜飼に向き直る。
「…何が目的で、慎吾に付きまとってるわけ?」
単刀直入に質問した。
鵜飼は唇に指を当てると、挑発的な目を向けてくる。
「気に入っちゃったんですよ、だってあんなにカッコ良く助けられちゃったら、好きにならない方が嘘です」
「…気持ちはわからなくもないけどね。サラッと解決すると、結構気に入られちゃったりするから」
「は?何言ってるんです?まるでアナタも助けた経験があるような言い方に聞こえますけど?」
しまった、思わず勝利時代の経験で語ってしまった。
アタシはコホンと咳払いする
「一般論よ、一般論」
「一般論なら、問題ないですよね?御多分に洩れずあーしだって好きになったってことです。邪魔しないでもらえますか?」
「ぐぬぬ…」
何も言い返せない。
うー、このままじゃアタシのモヤモヤが晴れないじゃないか。
「慎吾とアンタが視界にいると不快なのよ!慎吾は仲間!アンタが邪魔なの!」
「なんですかそれ。なんであーしが邪魔なのか、具体的に説明してくださいよ」
「具体的…昨日、…慎吾がアタシに好意を伝えてくれたの。それなのに、いきなりアンタが付き纏い出して、心の整理がついてないのよ!」
「それって、別に二人が付き合っているわけではないですよね?じゃああーしが付きまとっても問題ないのでは?」
「あーもう!ああ言えばこう言うッ!…本当に好意からくる行動なんでしょうね。何か打算的な考えがあるんじゃないの?」
鵜飼を睨む。
鵜飼は『はぁ』とため息をつくと、だるそうにこちらを見た。
「…街で声かけられんの、嫌いなんですよ。鬱陶しくて、気持ちが悪い。最近同じグループに声かけられるんですけど、ソイツらこの学校の生徒で。昨日なんて路地裏にまで連れ込まれて」
忌々しそうな表情を浮かべる鵜飼。
「そこを助けてくれたのが慎吾さんだったんです。あの人の近くにいれば、これからも守ってもらえると思って。これが真相です。ご理解いただけました?」
…つまり。
助けてくれる相手であれば、誰でもいいと解釈して良いのだろうか?
だとすれば、話は簡単だ。
「わかった。ソイツらんとこ案内して」
「え、何言ってるんですか?わざわざ嫌いな相手の所に行くわけないじゃないですか」
「察しが悪いわね、アタシが助けるっつってんの。その代わり、慎吾に付きまとうのはやめて。アイツも嫌がってるの、わかるでしょ」
「…。…本当に、アナタがどうにか出来るんですか?」
鵜飼が怪訝そうな表情でこちらを伺う。
アタシは胸を張る。
「逆に、なんでアタシに言わねえんだ!って話」




