なんでアタシに言わねえんだ!1
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
十三 龍也:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。のんびり屋。勝利とは幼馴染。一人称はオレ。
兎月 美未:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、大人しめの性格。あずきとのいじめ問題は解消され、今は最初のような仲良しに戻っている。一人称は私。
「昨日はごめんね、美未ちゃん…」
「全然大丈夫です、また何かあったらぜひご連絡ください」
通学路でたまたま一緒になった美未ちゃんに、昨夜のお礼を言う。
昨夜のお礼。
つまり、アタシの愚痴。
「…自分でもなんであんなメッセージを送ったのかわからないんだけど、気付いたら送ってたよね」
ため息をつく。
「気持ちはわかります!自分に好意を見せておきながら、即日女性関連の報告をしてくるなんて、デリカシーがなさすぎです!」
「そ、そう…?」
「そうです!」
「…本当に困っているから相談したんですけど」
背後から聞こえた声に振り向くと、慎吾と…、
見慣れない女子がいた。
ーーイラッ。
「…美未ちゃん、行こ」
「ちょ、ちょっとうぃんさん!」
慎吾の慌てた声が聞こえる。
聞こえるけど、聞こえない。
アタシの耳には届かない、あーあー。
「慎吾さーん、きっとあーしたちに嫉妬してるんですよー!」
ーーピクッ。
後ろを向くと、女子が慎吾の袖をつまんていだ。
「…お仲がよろしい事で」
アタシはニコッと愛想笑いをすると、美未ちゃんの手を握る。
「う、うぃんちゃん?」
「いこ、美未ちゃん」
「は、はい」
美未ちゃんはアタシの手を握り返す。
そのまま美未ちゃんは歩きながら振り返り、
「ライバルが一人減ってくれて、私は助かりますけどね?」
慎吾に聞こえる声でそう言った。
そこからはもう、スピードを緩めるようなことはせず、美未ちゃんと学校を目指した。
◆
「あれー?うぃんちゃん、慎吾と喧嘩してんのー?」
「なんで?」
ショートホームルームの後、たっつんがアタシに問いかけた。
だから、アタシはそっけないとわかっていながら、短く問い返す。
「んー、明らかに慎吾がソワソワしてんだよねー」
「だから?」
「いやさー、慎吾がソワソワする時って、大体うぃんちゃん関連なわけよー」
「何それ、知らない」
たっつんはアタシの不機嫌を感知したらしく、「あー、やっぱりかー」と言った。
「で、慎吾は何やったのー?前も言ったけど、うぃんちゃんのことを特別視してるから、怒らせるようなことはしないと思うんだけどー」
※『女の子一日目→始業式?』参照
「そうよそれ!たっつん、アイツ本当にアタシのこと好きなの!?今、全然知らない女子にくっつかれていいようにさせてるんだよ!?」
「へ?…それは、妙だねー」
たっつんが慎吾の方を見ながら言った。
慎吾はチラチラとこちらを見ながら、気にしていない…風を装っている。
たっつんは「んー」と唸った後、
「ちゃんと理由、聞いたー?」
「え?」
「理由ー」
「…聞いて、ない」
「それはダメでしょー。ちゃんと聞いてあげないと」
「だって、なんか…不快感がすごくて」
たっつんがびっくりしたようにアタシを見る。
…やめて、多分アタシも自分で冷静じゃないと思ってるから。
やれやれといった様子で席を立つと、たっつんは慎吾の所へ向かった。
ーー何を話してるんだろ。
ソワソワしながら2、3分待っていると、たっつんが戻ってきた。
「な、なんて言ってた?」
「なんかねー、昨日助けた子。『鵜飼 沙耶』っていうらしいんだけど、その子が絡んでた子に『自分と慎吾は付き合っているから、今度から手を出さないように』って言っちゃったらしいんだよねー…」
「はぁ!?何それ!」
思わず大きな声が出てしまう。
遠くの席に座っている慎吾も想像以上の反応だったのか、びっくりしているようだ。
「そんなのさっさと訂正すればいいじゃん!」
「…それがー、その子が言うには何度も言い寄られてるらしくてー。今後の抑止力になるならやむなし…と思ったらしいよー」
「…そんなこと言い出したら、今まで助けた全員が同じじゃん!みんないつまた絡まれるかわからないわけでしょ!?」
「それは…そうだねー」
たっつんはポリポリと頭をかく。
ムカついた。
沙耶とかいう女にも、沙耶に絡んだ奴も、慎吾にも。
…慎吾に関しては、半ば八つ当たり感は否めないが、それはもう知らん。
「たっつん、ありがと。あとはアタシが解決すらぁな」
「あいあいー、力不足を実感したらいつでも呼んでー」
「たっつん、本当好き」
たっつんにウィンクして見せると、やり取りを見守っていたのか、慎吾が『ガタッ』と立ち上がった。
せっかくだから慎吾には、あっかんべーをしておいた。




