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アタシは馬鹿ではないらしい3

すめらぎ うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、すめらぎ 勝利しょうり。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。


九頭龍くずりゅう 慎吾しんご:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。

「やはり中学の前提知識が必須となる数学、英語が難関ですね」

「…わかる、どっちもサッパリ。そのくせ授業中はサラッと流されるから、やる気出ないんだよー」

「まずは勉強の楽しさを知るために、小テストに合格しましょう」

 慎吾は地歴公民の教科書を取ると、アタシに渡す。


「ねえ慎吾、今更だけど…地歴公民の教科書って、なんでこんなに分厚いの」

「ウチは私立ですからね、教科書も独特なものを利用しているようで。他の学校では地理、歴史、公民でちゃんと教科書が分かれています」

「はぁ…絶対分かれてる方がいいよね、使わないのに毎回重い教科書持っていくとか非効率すぎる…」

「それは確かに。それでは今回は歴史からいきましょう」


「うぃんさんは小説を読むのは好きですか?」

「んー、ラノベだったら読める」

「ではそんな感覚で、まずはペラペラっと読んでいただけますか?そうですね、まずは50ページまで」

「50かぁ…多いなぁ」

「僕はその間に10問程度の問題を作りますので、50ページ読み終わったら挑んでくださいね」

「わかった!」

 アタシはまだ綺麗な教科書を開くと、歴史のページからサッと目を通していく。

 ふむふむ。

 社会の授業も、もちろん興味がなかったから聞いてこなかったけど、これは…少し面白いかな?

 過去に何かがあったから、その後の指標が出来る。

 そういう下地があって後の世が出来ると考えれば、この積み重ね、いわゆる歴史が面白いように感じられる。





「10点です…もちろん、10点満点中」

「本当に!?やったー!これが、アタシの勉強…その偉大なる1ページ、ってコト!?」


「…いや、え?これはちょっと、出来過ぎませんか?」

「歴史って面白いね!なんかさ、何があったから、こうなったっていうのが一連の出来事として物語みたいに残ってるの!一見すると突飛に思える指導者だって、何らかの不満によって台頭するんだ!」

「…ええ、そうですね。しかしその発想でいくと、数学のような公式であっても、公式を理解していれば応用出来るって言っているようなものですよ?」

「そう、かな?」


 慎吾が頭をかく。


「…まさか、本当に勉強に興味がなかっただけで、勉強でさえ軽々こなされてしまうのか?」

「ま、まぁまぁ…これはたまたまだよ、歴史が面白かったってだけ!」

 そうだ、楽観視してはいけない。

 あんなに意味のわからない数字や文字の列、とても理解が出来るとは思えない。





「…うん、二次方程式もいけるっぽい」

 アタシはタブレットを使い、中学で習う数学の公式を確認していた。


「…理解力高過ぎませんか」

「でも、みんなだって理解してるから、因数分解?とか出来るんでしょ?」

「いや、それはもちろんそうなんですけど…習得スピードがエグすぎます」

 慎吾が化け物を見るような目でアタシを見る。

 え、なんで。そこは褒めてよ。

 生徒の成長を素直に喜べ。


「しっかし、数学も一緒だね。前提知識というか、そこを理解していればあとは応用。慎吾の言った通りだった!」

「言うはやすしですよ、まさかここまで吸収出来るとは思いませんでした」

 やっと笑顔を向けてくれる。


「アタシ、すごい?」

「ええ、すごいです。惚れ直しました」

 言ってから、慎吾はハッとしたように視線を逸らす。


挿絵(By みてみん)


「…惚れ直すっていうことは、慎吾、アタシのこと好きなの?何で?


 それに、アタシまだ女の子になって一週間だよ?ちょっと早すぎない?」

 気になったのでグイグイ聞いてみる。

 すると、慎吾は不機嫌そうな顔でこちらを見る。


「一週間じゃないです」

「え?」

「一年かけて、ゆっくり好きになったんです」

「一年…え?」

「僕は、あなたが男性の頃から、あなたが好きだったんですよ」

「え?え!?」

 急な告白に頭が追いつかない。

 …男の時から!?


「なんで!?」

「…それは、まぁ、おいおい話します。とにかく、うぃんさんが女性になってくれたおかげで、僕も『一般的』になったということです」

 そう言うと慎吾はおかしそうに笑った。

 …なんか、そうなんだ。

 慎吾は皮肉は言っても、タチの悪い冗談は言わないと思う。

 だから、きっと本当の気持ち。


 男の頃から好きって、それ、



「ありがとう、純粋に嬉しい」

「ッ…そ、そうですか」

 慎吾は照れてくれたみたいだった。


「じゃあさ」

「はい?」

「これから勉強の時間を通して、お互いのことをもっと知っていこうよ、先生?」

「…はい、そうですね」

 アタシたちは穏やかに、仲を深めていくことを誓った。


「ところで、なんで今まで勉強をやってこなかったんですか?良い指導者に巡り会えなかったとか」

「あー、それはね、じいちゃんの影響」

 自分でうんうんと頷く。


「理事長…の?」

「そう!じいちゃんは昔から『お前は勉強なんかしなくてもいい!学校ならウチに入れてやる!学校は通うだけで構わん!』って」

 思い出すと面白い。

 だが、慎吾は何やら考えている様子。


「もしかして、理事長は子供の頃からうぃんさんの聡明さに気付いていた…?」

「聡明って、大袈裟すぎ!」

 アタシは笑い飛ばしたが、慎吾はぶつぶつと集中モード。

 暇だから、今度は因数分解の説明でも読んでみる事にした。

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