アタシは馬鹿ではないらしい2
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
ーーコンコン。
「はーい!」
「開けてちょーだい、手が塞がってるのー」
「もちろーん!」
ドアを開けると、両手でトレイを持っている母さんがいた。
「失礼するわね」
母さんの言葉に、慎吾が頭を軽く下げる。
「これ、スフレチーズケーキ。さっきうぃんちゃんが買ってきたの」
「え、美味しそうなケーキに見えますけど、お店は開いていたんですか?」
自分が十時きっかりに到着したことを覚えているのだろう。
「ふっふっふ、パン屋さん兼ケーキ屋さん!朝七時から開いてるんだよ」
「なるほど…それは盲点でした」
アタシもケーキ屋さんは早くても十時開店な印象はあるが、パン屋さんを兼ねているお店は早くからケーキを置いてくれている場合がある。
「慎吾だって、昨日勉強会が決まってからお土産準備してくれたんでしょ?」
「ま、まぁ…そうですね」
「アタシも一緒だよ、慎吾に何かしたいなと思ったら、相互で送り合えたから嬉しい」
あははと笑って見せる。
「…うぃんさんがご機嫌みたいで、僕も嬉しいです」
おお、慎吾がイイ笑顔してる。
うんうん、それでこそアタシも買いに行った甲斐があるというもんだよ!
部屋のお片付けより、勉強より先に、お茶を済ませようという共通認識のもと、まったりした雰囲気を楽しむのだった。
◆
「そろそろ休憩は終わりにして、勉強の準備をしましょうか」
「はい、先生!よろしくお願いします!」
「…可愛い」
「え?」
「なんでもないです」
コロコロ表情スイッチが入る慎吾。
「そうですね、まずは復習がメインになると思いますので、とりあえず教科書を出してもらえますか?」
「わかりました!」
アタシは膝で歩きながらクローゼットへ向かう。
「…三年間共通して使う教科書も多いのに、クローゼットに入っているのはさすがと言いますか」
「へへ」
「褒めてないです」
ピシャリと言い切られる。
「…んーと、確かこのダンボール…あれ、これじゃないや。んー?じゃあこっちかな…あれ、違う。んんー?じゃあこっちかな?」
四つん這いのままクローゼットをあさる、あさる、あさる。
「…ッ」
「ん?慎吾?どうかした?」
「い、いえ…なんでも」
「そう?ごめんね、今探してるから…」
「おっかしいなぁ…、あ、あった!」
「先生!教科書を発見しました!」
「お手柄です、ではこちらへ持ってきてください」
「はい!」
発見したダンボールをずるずると引きずっていく。
「これです!」
「…教科書が、綺麗過ぎますね」
「へへ、使っていないですから」
「そこは恥じるところです」
「ごめんなさい…」
しゅん。
「…し、心機一転という意味では、新しい教科書も良いかもしれません」
「…フォローしてくれるの?」
「…はい」
「ありがとね!」
「ッ…し、しかし、教科書からも察しましたが、うぃんさんの学力を測るには一年生の学年末テストを再度解いていただいた方が良さそうです」
「えー!」
「これで苦手の傾向と対策を立てていきましょう」
「…はい」
仕方ない、今の学力でやれるだけやってみるか!
◆
「うぃんさん」
「はい、先生」
「諦めましょう」
「せんせええええええッ!!!」
先生の足に縋り付く。
「ッ、は、離してください!」
「いやですうぅぅ!見捨てないでー!!」
「冗談ですから!面倒は見ます!」
少し顔が赤くなった慎吾が制服を整える。
そして、アタシの答案用紙を束ねると、点数を確認する。
「国語65点、数学10点、英語0点、理科25点、社会17点」
「…はい」
「うぃんさんは、海外に行く予定はなさそうですね?」
「…はい」
「冗談なので、そんなに沈まないでください」
慎吾が苦笑する。
「しかしこれはまぁ、なんとも教えがいのありそうな点数です」
「…アタシ、頑張るからさ…お願いね?」
「もちろんです。まずは中間試験を赤点なしで乗り切ることを目標にしましょうか」
「はい、先生!」
今日から一生懸命勉強して、友達にアタシの馬鹿がバレないよう頑張るぞ!




