お友達とお買い物!4
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
兎月 美未:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、大人しめの性格。あずきとのいじめ問題は解消され、今は最初のような仲良しに戻っている。一人称は私。
狼山 あずき:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、美未の親友、小倉の姉。美未のいじめ問題を通じて、二人の仲は深まることとなった。一人称はウチ。
狼山 小倉:私立清峯学園一年生。あずきの弟。喧嘩好きでタイマンとはいえ双龍の二人に勝利している。一人称はワイ。
「ふぃー!めっちゃ食ったー!美味いわ量食ったわでホンマ天国やったでー!」
小倉がお腹をさすりながら満足そうに笑う。
実際、小倉はおかわりを含め五人前は食べている。
だが、アタシが直接支払うでもなし、小倉には色々助けてもらっているからこれくらいの投資は安いもんだ。
「小倉、今日はありがとね。喜んでもらえて嬉しいよ」
精一杯の愛想笑いを試みる。
「…あれ?ワイの隣に天使おったやん、さすが天国」
「なんかさー、うぃんズルくない?」
あずきがテーブルに身を乗り出す。
「ず、ずるいってなんだよ」
「イヤ、ズルいしー。アンタ、女の子歴言ってみ?」
「…一週間、だけど」
「その間に、クラスの女子二人を助けて虜にしー、喧嘩では双龍に勝った男を打ち負かして舎弟にしー、散々カッコ良さを見せつけた上で、今は女の子の可愛さを身につけつつあるわけだしー?」
そう言われると、本当に濃密な一週間だったと言えるが…なんだこの感じ。
「確かに…うぃんちゃんは、主人公し過ぎてると思います」
「美未ちゃん!?」
まさかの美未ちゃん参戦で不意を打たれる。
「ここまで順調だと、そろそろ誰かとお付き合いしても不思議ではありませんよね?」
「いやいや!それは不思議でしょ!?」
「正直に言ってください。うぃんちゃんは男性狙いですか?女性狙いですか?」
み、美未ちゃんの目がすわっている。
「ね、狙いってわけじゃ…そりゃ心はまだ男だけど、身体は女だし、そんな今すぐ決められないよ…」
緊張で喉が渇く。
アタシはお冷やを口に運ぶと、コクコクと水を流し込む。
「なるほど、『ハーレム系』をお目指しということですね?」
水が逆流した。
「ゲホッ!ゴホッ!み、美未ちゃん!?」
「ほー、ハーレム系とか…なるほど、ウチらもパーツなわけ?」
あずきが悪ノリする。
ダメだ、あずきはともかく、美未ちゃんがこういうタイプだとは思わなかった。
ふと、この間フォークを突き立てた母さんを思い出す。
もしかして、女性って大体そうなの?
うぃん、怖い。
「まぁまぁ、うぃんちゃんが困っとるやん。キミらがうぃんちゃんいじめるなら、ワイがうぃんちゃん守りながら独り占めするで?」
「お、小倉ぁ…」
アタシに向かって親指を立てる小倉。
どうしよう、トゥンクしちゃう。
すると、あずきがニヤッと笑う。
「小倉、アンタこれから飯抜きね」
「お姉様に服従します」
「小倉!?」
アタシの唯一の仲間は、胃袋を握られているらしい。
あっという間の手のひら返し、一瞬で懐柔されてしまった。
「どうします?うぃんちゃん…孤立無援ですよ?」
美未ちゃん…なんで楽しそうなの。
アタシは、さっきまでの楽しかった気持ちを思い出して、少し切なくなった。
「お願い、あまりいじめないで…」
「「「きゅううううんッ!!!」」」
謎の奇声を発した後、三人が紅潮した顔でアタシを凝視する。
え、本当にどうしたの。
「…本当ズルいしー、これウチが面倒見る」
「ダメです、私の役目ですから」
「いや、うぃんちゃんはワイの嫁やから」
「アンタは飯抜き」
「エンッ!!!」
なんだか新しい争いが始まったようだけれど、アタシにヘイトが向かないのであればもうなんでも良かった。
…ただ流れ的に、両手を引っ張られた子供の落語みたいな展開になりそうなので、頃合いを見計らって脱出するべきだとアタシの本能が告げていた。




