女の子二日目→刹☆那
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
「皇 勝利の居場所を知りたい?それとも、アタシが誰か知りたい?」
相手の言葉を返すように問いかける。
「そんなん決まっとるやろ、皇 勝利の居場所や。何のために連日ここ来とる思ってんねん」
「でもアタシ、口が軽い男は嫌いなんだよね、みんなに言っちゃうでしょ?」
小石を蹴るようなポーズをして見せる。
「言わん!大阪人は皆おしゃべりやと思ってんねやろ!?」
「そう?なら安心した」
「…うぃん、さんッ…だめ、…です!」
まだ這いつくばったままの慎吾が、声を振り絞ってくれる。
「待っててね、慎吾」
アタシは大阪弁の前まで来ると、大きく息を吸い込んだ。
「…アタシに勝てたら教えてやる」
「はぁ?」
身長差、約25cm差かな。
上等。
「アンタはアタシの大事な二人を傷付けた、理由はそれだけで充分だ」
「せやけど、負けることも覚悟の上で勝負受けてんねやろ?それで負けたから、怒りますは子供っぽいんちゃう?」
ケラケラと笑う。
「わかるよ、アンタの言いたいこと。間違ってない。でもね、
それはそれ、これはこれ」
「ブハッ!めっちゃ自己中やんけ!!」
「そうなの、アタシ自己中だから。だから、アタシを倒さないと教えてあげない」
「…ええやろ、普段女は殴らん主義やけど、今回は話が別や。簡単にギブアップさせたる」
指をパキパキと鳴らしながらアタシを見下ろす。
「行くよッ!」
瞬発力で懐に飛び込む、アタシの常套手段。
その瞬発力は、見る影もなかった。
鈍い。
思いっきり左腕を持ち上げて、駄々っ子のように振り下ろす。
ーーパシッ。
「…お前、何しに出て来てん」
そのまま相手の右腕にグイッと引き寄せられる。
「雑魚の分際でしゃしゃり出てくんなや。
サッサと皇 勝利の居場所を吐け」
ーーコンッ。
引き寄せられたことでリーチ差を埋め、アタシは全身全霊の右こぶしを相手の顎に掠らせた。
ややあって、拘束された左腕が解ける。
呆然と立ち尽くす相手の上半身を全力で押しながら『小外刈り』を仕掛けた。
なすすべなく倒れた相手に素早くまたがると、そのまま相手の目の前に2本の指を突きつける。
「…ぁ、あ?」
「意識、戻った?」
「!…ワイが、なんでや!」
「脳を揺らしたの、ごめんね…こんな姑息なことしか出来なくて。アタシは目を潰せる状況にあったけど、しなかった。
お願い…これで、アタシの勝ちを認めてくれない?」
「…お、おぉ…おおおおぉぉ!?なんやアンタ!!めっちゃ強いやんけ!!何が姑息やねん!!自分が出来る全力で相手倒したんやから、実力やろ!?こんなん、油断しとったワイの完全敗北やッ!!」
そういうと、アタシの下で満足そうに笑う。
「良かった…ありがとう」
「…うぃんさん、あなたは本当に、バカですね」
ようやく身体を起こせるようになった慎吾が言った。
「ごめん、本当馬鹿だよね。慎吾の介抱より、敵討ち優先しちゃった」
へへと笑って見せると、慎吾も仕方ないといった様子で笑顔を見せてくれた。
「いやー、しっかし先輩らがこんな強いんやったら、ホンマ皇 勝利にも期待出来るでぇ!」
「…え、先輩?」
「せや!清峯学園一年、狼山 小倉!苗字みたいやけど名前やで!っていうんが持ちネタやねん!」
だからコイツ、学校が始まった昨日から現れたのか…って、
え、狼山?
「あー!小倉おせーしー!何時だと思ってんのー?」
「おう姉ちゃん!今先輩らと遊んでもらっとってん!」
「「ろ、狼山 あずきー!?」」