女の子二日目→喧☆嘩
皇 うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、皇 勝利。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。
九頭龍 慎吾:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。
大阪弁は両手を胸の前に出した。
慎吾のいう通り、投げ技主体、柔道の構えに近い。
「それでは、行きますよ」
慎吾の選択は、勢いよく踏み込んでからの蹴り。
大阪弁の左側面を思い切り蹴り抜…けない!?
「ええ蹴りしてるやんか、質自体はええねんけどな」
「チッ…硬い」
慎吾は軸足を切り替えると、今度は相手の右側面目掛けて蹴りを放つ。
だが、右足で蹴った時同様に右腕でガードされる。
「驚いたわ!アンタ左右の強さ変わらんねんな!両方鍛えてんのは厄介やで!」
「…それが効かないから、憎らしいですね」
慎吾はもう一度軸足を切り替えると、相手の肘を目掛けて右足を振り上げる。
「おぉ!?それはあかん!」
大阪弁が一度距離を取る。
「あっぶな、肘破壊されたら腕上がらんくなってまう」
手をぶらぶらさせ、余裕を窺わせる。
「…肘の破壊は突破口になり得るでしょうか」
腕が上がらない、つまりは組ませることが出来なくなる。
それは投げ技主体の相手にとっては致命的なはず。
慎吾は狙いを定めると、今度は強く踏み込み、ピンポイントで相手の左肘目掛けて足を振り上げる!
「ぐうッ!!」
呻いたのは、慎吾だった。
「狙いが読めとったら、足の甲を肘で迎撃したらええねん、ちょろいやろ?」
何がちょろいもんか。
慎吾の蹴りは決して遅くない。
それを見てからピンポイントで狙い撃った。
アイツ、柔道以外にも何かやってんのか?
「…なるほど、打撃戦にも強いと…これは、本当に厳しいですね」
「アンタも悪ないで、皇 勝利さえおらんかったら、目標として遊びに来るんもやぶさかちゃう相手や」
そう言いながら自分の肘をさする。
「ワイは強いヤツがおったら挑戦したなるんや。せやから、皇 勝利の話を聞いた時は心躍ったで」
大阪弁が胸の前で腕を組む。
「双龍より強いくせに、身長160ちょいのチビッ子なんやろ?そんなん体感したないわけないやんけ!」
「確かに、あの人の強さは異常ですからね。こんな馬鹿みたいな喧嘩ごっこが成立しているのも、あの人の力によるところが大きい」
慎吾が姿勢を正すが、やはり足の甲が痛むのだろう、地に足をつけるのも厳しいといった様子だ…。
それを見た大阪弁は興味がなくなったようにため息をついた。
「…終わりやな。おしゃべりで回復待ってみたけど、無理そうや。アンタの凄まじい蹴りとワイの肘、相性最悪やで」
「…まだ、やれますよ」
慎吾が『ダンッ!』とレンガ畳みに足を踏み鳴らす。
「双龍舐めんじゃねえッ!!!!」
勢い良く距離を詰めるとグッと体勢を低くし、顔を目掛けて鋭い蹴りを放つ!
が、大阪弁は振り上げた方の足首をガッシリ抱えると、そのままの勢いで慎吾を背負った。
歪な弧を描きながら慎吾が宙を舞い、大阪弁が腰を前に屈めると、程なくして慎吾が地面に打ち付けられた。
「…完璧に入ったで」
「慎吾ッ!!」
「…ぅ、ぁ」
「まぁ、これは起きられへんやろうな」
叩きつけられる寸前、普段は使わない両手を使ってまで衝撃をやわらげていた。
それでも…強烈過ぎる一撃。
決着が、ついてしまった。
「ほんで?…皇 勝利はどこやねん。お前、何や?」