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女の子二日目→朝の教室から

すめらぎ うぃん:元地域最強クラスの男子高校生、すめらぎ 勝利しょうり。現在は親族の意向により女体化しており、女性として生きることを決意。一ヶ月の入院生活により、筋力は一般女性クラスまで低下している。一人称はアタシ。


九頭龍くずりゅう 慎吾しんご:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。成績を重要視しており、喧嘩は勉強のストレス発散として位置付けている。基本的に人付き合いが悪い。一人称は僕。


十三じゅうぞう 龍也たつや:私立清峯学園二年生、双龍の片割れ。のんびり屋。勝利とは幼馴染。一人称はオレ。


兎月とつき 美未みみ:私立清峯学園二年生。うぃんのクラスメイトで、大人しめの性格。あずきとのいじめ問題は解消され、今は最初のような仲良しに戻っている。一人称は私。

 おかしい。


 確かに、昨日の就寝は早かった。それがこのグループにアタシの既読がつかなかった理由。


 なら、『たっつんの既読がつかない』理由は?


「おはようございます、うぃんさん」

「あ、慎吾、おはよう…ねえ、たっつんと連絡取れてる?」

「…いえ、僕も取れていません」

 慎吾の表情は優れない。

 それもそのはずだ。


 たっつんは昨日、『学園の門番担当』だった。


ーーバンッ。


 たまらず机を叩く。

 周囲の生徒がこちらを見ているだろうが、関係ない。


「…アタシの、せいか」

 ギリッと歯を食いしばる。

 アタシも門番を担当していた頃は、常に二人組以上で行動するようにしていた。

 一人の日が出来るようになったのは、アタシがいなくなってからだ。

 慎吾もわかっているのだろう。あえて何も言わないでいてくれる。


「慎吾、アタシたっつんの家に電話入れてみる」

「…そのお声で、ですか?」

「…あ」


 クッソ、どこまでも不自由だなッ…。


 ダメだ、冷静じゃない…良い考えが浮かばない。


 どうしたらいい、アタシに出来ることッ。


ーーガラガラッ!


「うぃんちゃん!!」

 美未ちゃんが息を切らせながら教室に入ってきた。


「美未ちゃん!?どうしたの!」

「今、職員室で先生から聞きました!十三さんが昨晩、中央病院へ運び込まれたようです!」

「!?」

「もしご存じなければ伝えておかなければと!」

「ありがとう美未ちゃん!!」

 アタシは鞄を掴むと慎吾に視線を送る。

 慎吾は頷くと同じく鞄を取り、二人で教室の出口へ向かった。





「たっつんッ!!」

「病室では静かに」


ーービクッ!!


「お…おばあさま…!」

「…おや?勝利かい?」


 あぁ、アタシは本当に混乱しているんだな。

 たっつんの家に電話しても良かったじゃないか。

 おばあさま、『十三 ウメ(じゅうぞう うめ)』はきっとアタシの事をわかってくれたはずだ。


「おばあさま!たっつんは!?」

「さっき起きたところだよ、ホレ」

 アタシはベッドの横まで駆け寄るとひざまずいてたっつんの顔を覗き込む。


「…おー、しょー…うぃんちゃん、慎吾ー、ごめーん、やられたわー」

 にへらと笑いながら、たっつんは言った。


 …良かった、良かった、ひとまず、良かった。


「勝利、あんた幼くなったかい?…スカート?」

「あ、ああぁぁぁ!!あの、それについては改めて説明しますので!」

 アタシがあたふたしていると、おばあさまはフッと笑って席を立った。


「おばあはね、勝利の親族には感謝しているよ。でも、この子の命まで預けた覚えはない」

「!…はい」


「そこの所はよく理解しておいておくれ。先立つのは子供達だけで充分さ」

「…おばあさま…申し訳ありませんでした」

 ベッド脇から立ち上がると深々と頭を下げる。

 おばあさまは手をひらひら振ると、病室を出て行った。


「…たっつん、何があったの」

「大阪弁の、すげーつえーヤツがきた。今まで見たことねーヤツで、正直、最後は何されたのかわかんねー」


 見たことのないヤツ。

 この一年で顔ぶれは固定していたかと思っていたけれど、年度が変われば顔ぶれも変わるということだろうか。


「多分だけどー、今日も来るんじゃねーかなー。アイツ、しょーちゃんとやりたかったっぽいから」

「…アタシか」

「変な考えを起こさないでくださいよ。…僕が終わらせます」

 慎吾が釘を刺してくる。

 だが、相手はたっつんを倒したヤツだ。

 しかも、フィニッシュムーブは不明ときた。

 慎吾だってやられる可能性は充分にある。


 いざとなったら、アタシが。


 …正直、1ヶ月の間に筋力は大幅に低下していて、これから鍛えたからといって強くなれる保証はない。

 そんな状態であっても、アタシが降りるわけにはいかない。


 これは、アタシが始めたルーティンだ。

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