表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/215

ノウード・タウン【6】


やがて徐々(じょじょ)に謎の黒く長く大きな物体のスピードは落ちてゆき、そこで初めてそれが何か認識する事ができた。


私はその正体に目を白黒させる。


「うへー……この中から探せって事───?」


もう安全だと判断したのか、私を(かば)ってくれていた黒いネコ科の大きな使い魔がゆっくりと身を起こし、ついでにしがみついていた私もそのまま起き上がる結果と相成(あいな)った。


「なかなかそう簡単にはいかないな」


ずらっと居並(いなら)ぶ心なしか威圧(いあつ)的な本棚の(たたず)まいに、流石(さすが)弥七(ヤシチ)も困った様子(ようす)できょろきょろと辺りを(なが)めている。


それは図書館のようと表現するには(あま)りにも異様(いよう)景色(けしき)だった。


ガッ……タン……… !!


遠くの方から奇怪(きかい)振動音(しんどうおん)が、本棚が停止したと同時に鳴り(ひび)いてきた。


途端(とたん)にこの空間を静寂(せいじゃく)が支配する。


それは古びた皮製の背表紙が一様(いちよう)にずらりと並び、それらを収納した古い大きな本棚が一直線に何列も際限(さいげん)なく並び続けるという不可解(ふかかい)な光景であった。


アンティークなマホガニー色のその本棚の高さは2mほどで、似たような背表紙が延々(えんえん)と真っ(たいら)らと(おぼ)しき白いこの空間の(はるか)彼方(かなた)まで伸びている。


この不可思議(ふかしぎ)な空間に消失点があるのか、遠くの方は(かす)んでどうなっているのかすら全く(うかが)い知れない。


取り()えず本棚から一冊取り出し、中を開いてみる。


そこには入信年月日と、どこの誰がトスリッチ教に帰信(きしん)聖洗(せいせん)し、聖洗名を(さず)かったか、生年月日、出身地、家族構成、学歴、職業、賞罰、(いく)ら寄付したかなどが事細(ことこま)かに(しる)されていた。


これだけの膨大(ぼうだい)な個人情報───()み手でウハウハと関わっている為政者(いせいしゃ)───王族や貴族、政治家、官僚(かんりょう)様々(さまざま)な企業や有象無象(うぞうむぞう)がいるのも当然だろう。


いずれの時代や国、世界であっても個人情報は(ぜに)の山にしか見えないはずだ。


これも以前、マックス坊っちゃんの分身(ダブル)であるミッシャが調べてきた話の通りだ。


そしてこの中に真の名───聖なる名前(ヘイラフト・ナプン)が隠されているという。


これってあからさまに生殺与奪権(せいさつよだつけん)(にぎ)られてるってことだよ、ね……?


私はその事実に軽く身震(みぶる)いし、とんでもない事に関わっている自分の現状に改めてぞっとしていた。


とは言えここまで来ている以上、今更(いまさら)逃げ隠れする訳にもいかない。


「うーん……もっかい詠唱してみようか?」

「さっきのをか? やめとけ。多分、今この現状だともっと面倒臭(めんどうくさ)い状態になるかも知れんぞ。恐らく、この空間にかけられてるのは魔術士ファーマンだかマックス坊っちゃんだかの呪い、だぞ」


私の黒い使い魔は、辺りを鼻ですんすんと()ぎながら渋い低音(バリトンボイス)でそう(いさ)める。


また呪い、か……こんなだから魔法を駆使(くし)する連中は歴史上迫害(はくがい)されてきたんだろうな。


とは言えトスリッチ教に限らずどんな宗教でも、自分達が似たようなモノ使って起こした結果は『奇跡』とか平気で言えて、それで新しい信者さん達を沢山(たくさん)集めてたりしてるし。


それで誰もが納得できる関係になれればある意味幸せなのだろうし、歴史や文化の一端(いったん)(にな)ってきた全ての宗教を否定など出来ないけど、信じる者は足元が(すく)われやすくなり、巣食(すく)われる……もとい、救われるのだろう。


どんな事であっても誰かを不幸に(おとしい)れるようなシステムがあるのなら、それをひとつでも減らせる社会であってほしいなと個人的には思うし、自分は少しでもそうなるような行動をしていきたいと思う。


だって、いつそれが自分に降り掛かって来るか判らない訳だし、現に今、私はそれに巻き込まれてしまっているのだから。


()にも(かく)にも今は目先の事態(こと)に対処するしか(すべ)がない。


「じゃあ、どうすんの?」

「メグはそいつに会った事あんだろ?」

「うん……超気持ち悪かった」

「まぁ、そうだろうな。とにかく、メグならそいつのその魔力の残滓(ざんし)が追えるはずだ」


私は正直、あの背筋も(こお)るような悪意の(かたまり)みたいな魔力を思い返すのも嫌だったが、それもこれもサーシャを助け出す(ため)なのだ───


「……判った、やってみる」


また後ほど加筆修正させて頂きとう存じます

何とぞよしなに願います

【’24/05/02 加筆修正しました】

【’24/07/13 誤字訂正しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ