表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/215

ノウード・タウン【4】


「メグ、オレに(つか)まれ」


本来の姿というところの(ブラック)ジャガーたる弥七(ヤシチ)は、(おもむ)ろに私に向かってそう言うと、私がその筋肉質の壮美(そうび)な黒い(からだ)に抱きつくと同時に、



清流浄化(ラグズ)!」



と低い声でひと()えしたかと思うと、不意(ふい)()り込められたような闇の四方八方(しほうはっぽう)から地鳴りのような音がし始める。



何か来る───



ザァアァアァ…………… !!



魔杖(ワンド)柄頭(ポメル)から発せられているトーチ魔法の薄明かりに怒濤(どとう)が迫ってくるのが見えたかと思うと、一気に私達はその波に飲み込まれた。


驚く間もなかった。


上下左右から錐揉(きりも)み状に(おそ)い来る波に、私は目をきつく閉じ、()(すべ)なくただただ必死に黒い大きなネコ科の使い魔にしがみつくしかない。


息が………()まる……………!


あまりの息苦しさにやがて手の力が抜けてゆき、ずるずると弥七の下半身の方にずれてゆくのが判った。


もう、駄目だ───


私がそう観念(かんねん)した次の瞬間、



聖光を(ソウェイル)満たせ(ダガズ)!」



再び低くよく通る渋い声がそう吼える。


それと同時にこの空間を(おお)っていたずっしりとした質量(しつりょう)すら感じる暗黒が、一気に鮮烈(せんれつ)な光によって切り()かれてゆくのが見えた。


ま、(まぶ)しっ………。


白く(さわ)やかな光明(こうみょう)と共に、この場にあった(おも)った苦しい空気感までが一気に払拭(ふっしょく)されてゆく。


気づけばあの猛烈(もうれつ)波濤(はとう)もすっかり消え去り、辺りは白い静けさに満ちていた。


そこでようやく、自分が弥七に(もた)れかかって座り込んでいる事に気づき、津波のような水流に巻き込まれなかった事に胸を()で下ろす。


それどころか、あの荒波に散々(さんざん)洗われたはずなのに私達は()れてすらいなかった───とは言え、この魔法が当たり前な世界では、それを不思議と考える事すら不粋(ぶすい)以外の何ものでもないのだろう。


「大丈夫か、メグ?」


私の使い魔たる(ブラック)ジャガーは(わず)かに私を振り返り、短めの尻尾(しっぽ)を使って私の背中をぽんぽんと(たた)いてきた。


その感触に(なつ)かしさを覚えながら私は(うす)微笑(ほほえ)み、弥七の綺麗な梅花紋柄(ばいかもんがら)の入った少しごわごわする黒い体毛を右手で数度(すうど)さすってやる。


「何とか大丈夫」


私はそう言うと、改めて周りをぐるりと見回した。


「………でもここって、同じ場所なの?」


今度は真白(ましろ)な闇が私達を(むか)えていた。


神々しさすら感じさせる程の明るい白さだ。


上下左右どこを見ても純白───


自分達の影すら見えない。


平衡(へいこう)感覚がおかしくなるほどの、ある意味()暗闇(くらやみ)の時以上の不確かさだった。


「オレは移動してないし、メグだって何もしてないだろ?」

「そんな余裕あったと思う?」


つか、あったとて、私は移動魔法なんてまだまともに使えないし、間違って発動させてもとんでもない場所に飛ばされてしまうのがオチなんだろうし………言ってて自分で悲しくなるのはやめよう。


私は黒い従魔の大きな背中に頼りながらゆっくりと立ち上がり、魔杖(ワンド)柄頭(ポメル)の不必要になったトーチ魔法(あかり)を消す。


「だな。誰かに移動させられたっていう魔力の痕跡(こんせき)も感じられなかったし、同じ場所だと思って間違いないだろう」

「この白さって、弥七っつぁんの魔法のせい?」

「んな訳ないだろが。ただの浄化魔法だぞ」

「そっかー……()()の、ね」


その黒い使い魔の言葉に、ただ単純に気が遠くなる。


じゃあ、どうやって目的の書物(ブツ)を見つけて、どうやってここから脱出するか───そもそもバレてないのか?


「……あっ」


そこで弥七が何か思い出したのか変な声を上げた。

それに思わずびくりと反応する。


「───何かあったの?」

「いや、リワから渡すように言われてた物があったの忘れてた」


このタイミングで言う!?


眉間(みけん)(シワ)を寄せる私に構わず、弥七は平然とした態度で言葉を続ける。


「手ぇ出せ」


手?


私は仕方なくそのまま(ブラック)ジャガーの前に行き、左(てのひら)を差し出して一言───


「お手」

「………阿呆(アホ)か。オレ様は犬っコロじゃねーぞ───つか、この状況で意外に余裕あるな、メグ。いいから手の(こう)を出せ」


ったく、何なのよ!


どっちが主人(マスター)なんだか、と内心むっとしながら私は言われた通りに手の甲を出す。


そりゃ、ここに(いた)るまでほぼおかしな目にしか()ってないんだから、おかしな度胸も余裕もあるさ───!


厄災回避(エイワズ)守護結界(アルジズ)無我愛の恵投(ゲーボ)


私の使い魔たる(ブラック)ジャガーの渋い良い声が再度詠唱すると、差し出した私の手の甲に蛍光色(ネオンカラー)の青白い光が印章(シジル)となって浮かび上がる。


んなっ………何じゃこりゃ───!?


そして気づけば自分の左手の甲に、直径3cmほどの大きくて玲瓏(れいろう)とした輝きを放つ石が()りついていた。


また修正しまくるかもですが、何とぞよしなに願います

【’24/04/28 加筆修正しました】

【’24/05/04 微修正しました】

【’25/01/07 誤字修正改行調整してます】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ