アシレマ【13】
*続きを読んで下さっている方へ*
話がつながらない場合、地味に前回新たにお話を追記してありますので、お時間ございましたらお読み下さい
気になさらない方はそのままどうぞ
乾いた赤土の砂埃の舞う魔法陣の真ん中で、鯖トラの小猫は軽く全身を震わせぐーんとひとつ伸びをする。
そのままにもしておけないので、私はその小猫のそばに近寄り右手を伸ばして抱き上げようとしたのだが、その前に鯖トラちゃんは妙に人懐こい仕草で私の腕の中に飛び込んできた。
かっ……可愛い!
無類の可愛いもの好きで動物好きの私は、無意識のうちに表情が緩んで鼻の下が長くなるのを覚える。
そんな小猫の頭をぐりぐりとかいぐりながら、こちらに集まってきた皆のところへと私は歩いてゆく。
ライカちゃんと蘭丸さんは素直に可愛いと喜んでいたが、例によって例の如く、黒髪の青年だけは私の腕の中の小猫に訝しげな視線を投げかけていた。
どこまでも職務に忠実な男だな、カイル氏って……。
そして気づけばミッシャの姿が見えなくなっており、きっと私の召喚が滞りなく(?)終わったので、早速グロスマン財団の本部に潜入するために行ってしまったのだろう。
そんな最中、意外な反応をしたのが体半分の里和ちゃんだった。
へぇ、と声を発したっきり、私が抱き上げて連れて来た鯖トラの小猫をしげしげと眺めていた。
ぱっと見グレーっぽい毛並みの鯖トラ猫で、ビー玉みたいに真ん丸な瞳の色は若草色をしていてとても綺麗だ。
ちっさくてめっちゃ可愛い猫ちゃんなんだけど、とても蘭丸さんのような従者といった感じにはならない。
況してや黒髪の青年の代わりにはなりそうもない。
私は深く溜め息をついた。
「イメージしたのは、黒豹だったんだけど───」
私は己の不甲斐なさにがくりと頭を垂れる。
皆に注目されて地味に緊張しちゃってたから、集中しきれなかったんだろうなぁ……。
またやり直しだね、これじゃ。
ところが、美女エルフは苦笑いしつつも、私の予想外の話をしだした。
「まぁまぁ、そう落ち込まないでいいよ。そんな香月が思うほど悪いモンじゃないよ、この猫」
「そうだぞ、メグ! オレが来たからにはもう安心だ。戸塚、じゃなくて大船に乗った気でいてくれていいぞ」
……………。
「何か今、物凄く渋い良い声でオヤジギャグ言うの、聞こえなかった?」
「そだね……突っ込むのも躊躇われるような神奈川県民にしか通用しない駄洒落がこの猫ちゃんから聞こえてきたみたいだったけど?」
「オレだよオレ! 他に誰がいるっつーんだよ!!」
そんなオレオレ詐欺みたいに言われても……。
こんな可愛い顔して、中身がオッサンだなんて───
私は地味にげんなりする。
「この子、ホントに大丈夫なの? あれだったら、お引取り願っても───」
「おいおい、オレ様を呼び出しといてそりゃないだろ!」
「あっははは! ダイジョブダイジョブ。それよりこの子に名前、考えてあげてね」
里和ちゃんは愉快そうに笑いながら、私の腕の中の鯖トラ小猫の顎を撫でながらそう言った。
でれでれした表情になる小猫をよそに、私はその美女エルフの言葉に目を見開く。
「え、このままでいいの?」
「うん、充分。香月を頼んだよ、小猫ちゃん!」
「おう、オレ様に任せときな! おーふなに───」
「じゃ、こっち立て込んできたから、また後でね! カイル、行こうか」
里和ちゃんは鯖トラちゃんの言葉を遮るかのように食い気味にそう言うと、カイル氏の右腕を掴んで歩き出す───と、言っても足は見えないのだが。
黒髪の青年は引っ張られながら何か言いたげに私を見たが、突如目の前に現れた空間の歪みの中に、美女エルフと一緒にそのままこの場所から姿をかき消した。
あぁ、しんどい………。
カイル氏が里和ちゃんに連れて行かれ、ようやく張っていた気が弛んだ。
あれ以降、意識しないようにすればするほど私の態度は固く不自然になり、結果カイル氏に嫌な思いをさせていたに違いない。
別に彼の事が嫌いな訳じゃない───ただ、ひとつの重大な事実が私にそれ以上に行っちゃ駄目だ、とブレーキをかけてくるのだ。
私は本当のマーガレット・マクシェインではない、と。
ちょいちょい手直しばかりしてすみません……そして懲りずにまたすると思いますので、何とぞよしなに
【’24/04/18 かなり追記してます】




