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アシレマ【12】


自力で使い魔を召喚───黒い火竜(ズメイ)を呼ぼうとして黒い飛竜(ワイバーン)を呼び出してしまう私には、かなりハードル高し。


はっきり言って途方(とほう)に暮れていた。


現在、再度使い魔を呼ぶためにアシレマ南東部にある巨大な砂漠───エヴァジョム砂漠のど真ん中に拠点の出入り口を開き、念のため体半分の美女エルフに私が派手に失敗した時の保険的な意味合いで、大きめの結界を三重に張ってもらっている。


それになぜか里和ちゃんが、同じく保険的な意味合いで黒髪の青年にもこの場にいてもらう、と(のたま)った。

要するに魔法じゃ収集つかない不測の事態に備えて、と言う事らしい。


なので結果これまでとほぼ変わらない状態で、私の後ろに腕組みしたカイル氏が立っているのは言うまでもなく───ここまでくると、うしろの○太郎か!と、ツッコミたくもなる私であった。


今回も可愛い魔導師見習いの少女が私の指南(しなん)役になり、荒野の固い地面に魔法陣を書き込む指示をしてくれていた。

そのライカちゃんの隣には美女エルフの従者(ヴァレット)の蘭丸さんもついてくれている。


その二人の向こう側に、移動拠点の出入り口の掃き出し窓が岩山にはめ込まれているかのように不自然に開いており、その前に体半分の里和ちゃんとミッシャが何事か話し込んでいた。


ミッシャはこの後またグロスマン財団に潜入する予定らしいので、恐らくその話をしているのだろう───私が出したはずの分身(ダブル)君なのだが、美女エルフが更に強化魔法をかけたせいなのか、そもそも元がマックス坊っちゃんだからなのか、里和ちゃんがいると彼女の(そば)に忠犬の(ごと)くついている。


いやいや、それどころじゃない。

今自分のやる事に集中しないと───


私は気を引き締め直す。


今回は極力(きょくりょく)失敗を防ぐため、里和ちゃんが最近作ったという柄頭(ポメル)に強力な魔鉱石(まこうせき)───アイラーツァのイティプ・アプク魔鉱山から採掘したと(おぼ)しき、乳白色に淡いパステルカラーの遊色が綺麗な大きなオパールだ───をつけた(オーク)魔杖(ワンド)を借りる。


本来なら自分で作らなければならない魔杖(ワンド)なのだが、材料も自力で見つけて作製するのが望ましいらしく、自分に合った材なら向こうからアピールしてくるからすぐ判ると里和ちゃんは言う───例えて言えば、イティプ・アプク魔鉱山のオパールと似た感覚らしい。


とにかく、その借り物の魔杖(ワンド)のトップで自分の血数滴(すうてき)とこの土地の清らかな水、そして家畜から(しぼ)ったミルク、魔鉱石化した辰砂(ピグメント)の朱色の岩絵具(いわえのぐ)を混ぜた触媒(しょくばい)を使って魔法陣を引いている。


言わずもがなの話になるが、勿論(もちろん)この方法も美女エルフが私に合わせて鬼アレンジを加えた召喚術だ。


生き物も人も草木もほぼ皆無(かいむ)な鬼暑い荒野の真ん中で、時折(ときおり)吹く埃臭(ほこりくさ)い熱風に(あお)られながら、黙々と汗だくで魔法陣を引いてゆく。


ジリジリと焼きつけるような陽光の最中(さなか)、苦手な作業を続けているとやたら時間が長く感じてしまう。


そうなると当然のように思考回路もマイナス方向に(かたむ)いてゆく。


「……ライカせんせ、また失敗して別な飛竜(ワイバーン)が大量に出て来たらどうしよう?」

「何言っちゃってるんですか、真夜(メグ)さん! 普通は飛竜(ワイバーン)呼ぶのだって大変なんですよ? それもあんな大量に!」


百科事典(ひゃっかじてん)並の大きさの、三本足の驢馬(ロバ)の皮製古代魔法書を両腕で抱えながら、愛らしい魔導師見習いは頬を(ふく)らませてぷんすこ私を(しか)ってくる。


「ライカちゃん、耳が痛い……」

「大丈夫です! 真夜(メグ)さんは運が悪いのかも知れませんが、それ以上に悪運が強いのは今までの真夜(メグ)さんの魔法での活躍から証明済みです!」


それって、ほ、()められてるの?


私は首を(かし)げながら、それでもどうにか指示通りに魔法陣を完成させた。


それから両手で魔杖(ワンド)を握り地面に立て、呼吸を整えながら魔力を()ってゆく。


あー、今日は人が多いし、何だかキンチョーする………いやいや、そんな事考えないで、集中、集中、集中───


そして頭の中でイメージし、呼び出す精霊に形を与える準備を整えつつ詠唱を始める。


「 我が血の(しがらみ)()ちて、我が遥念(ようねん)の声を()き、銀の車輪の女神(アリアンロッド)の名の(もと)()せ参じ、我が同胞(はらから)となりてその比類無き力を三千世界にて(あまね)顕現(けんげん)せよ!」


言い終わるや否や、魔杖(ワンド)柄頭(ポメル)を魔法陣に向かって一気に魔力を開放する。


それと同時に(あか)く魔法陣が光り、そこから白い閃光が上空に向かって発せられたかと思うと、魔法陣の中央から何かが出現し始めた。



あれ………?



白く(けぶ)る大きめに書いた魔法陣の中心に、想像以上にちっさいケモノが鎮座(ちんざ)していた。


そしてそのちっさいケモノは、ちっさな口を開けて一言鳴いた。



ミャー!



その場がしんと静まり返る。


私が召喚したのは、(サバ)トラのあまりにも小さな猫だった。


思わず目が点になる。


結果、皆に大爆笑されたのは言うまでもなく……。


【参考資料】

岩絵具はムサビさんの『造形ファイル』

http://zokeifile.musabi.ac.jp › 岩絵具


また重複表現等修正してます

【24/04/17 かなり加筆修正しちゃってます】

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