アシレマ【10】
*続きを読んで下さっている方へ*
話がつながらない場合、地味に前回新たにお話を追記してありますので、お時間ございましたらお読み下さい
気になさらない方はそのままどうぞ
それがボタンの掛け違いなのか、どうしてこんな事になってしまったのだろうか?
今やマックス坊っちゃんは魔術士マイケル・ファーマンとして、ミズガルズを騒がせる悪の枢軸と化してしまっている、と。
そしてもっと笑えない事に、里和ちゃん達がグロスマン財団を去った後、また新たな武器商人が以前グロスマン商会が独占していた市場を支配しだしているらしい───それが示唆する事は、里和ちゃん達が去ったグロスマン財団と無関係であろうはずもない。
拠点の宿屋に帰る道すがら、蘭丸さんを始めライカちゃん、時折私の背後からぼそっと口を挟むカイル氏の話を聞きながら、ぼんやりとそんな風に思う。
ライカちゃんが最初にファーマンの分身のミッシャを惘然と見ていたのは、彼女が幼い頃にマックス坊っちゃんと会っていたからだった───しかし、私は何となくそれ以外の理由もある気がしたが、それは訊いてはいけない事のような気がしたので変に追求はしなかった。
そんな私達をよそに、異国情緒の色濃い街にすっかり夜の帳が下り、ボヘミアン硝子のようなカラフルな瓦斯灯がマジックアワーの空間に更なる彩りを加えている。
スパイスの匂い多めのエキゾチックな雰囲気に酔いそうになりながら、賑やかなリトル・イェクルートの歩行者天国を人波を縫いながら皆でぞろぞろと歩を進めてゆく。
見慣れぬ民族衣装の獣人たちや様々な服装と髪型の人々が、笑いさざめきながら次から次へと行き交い通り過ぎる。
当たり前だが、私とは異質な人々。
袖すり合うも他生の縁、とは言うけれど。
サーシャは今どこにいるんだろう……?
こんな時、不意に思い出してしまう。
考えても仕様がないから、なるべく考えないようにしていたのだけれど。
もしかしてと思い、一度里和ちゃんの拠点の書庫にあった太古の魔法書の中に記されたやたら難解な召喚術を、ライカちゃんに解読してもらいながら黒い火竜を呼び出せないか試してみた事があった。
結果は惨敗───なぜか私が書いた魔法陣からは、極北にある小さな火山島に生息している黒い小型の飛竜を大量にわらわらと出現させてしまい、何気に辺りを驚愕と恐怖の渦に巻き込んでいた。
その時はたまたまアイラーツァ中央部の誰も住まない荒野に移動拠点の出入り口を開いており、またたまたま戻っていた里和ちゃん達が速やかに対応し、人的被害と物的被害は何とか最小限に留めることが出来た。
とは言え美女エルフとイアンさんは腹を抱えて大爆笑するわ、ライカちゃんは久々にオロオロするわ、私の兄になって久しいヴィンセントさんと私の護衛をしてくれているカイル氏には大目玉を食らうわで、結果散々だった。
「心配なのは判るけど、ちゃんと助けるから安心して?」
里和ちゃんには珍しくそう慰められたが、辛かったり、痛かったり、悲しい思いをしてなければいいんだけど───
それにしても、魔術士マイケル・ファーマンもとい、マクシム・ジュダ・グロスマン氏は本当にセレグナ・ソルにいるのだろうか?
そして、サーシャも───
するとそこで、背後から声が掛かる。
「おい」
「……何?」
「どこ行く気だ?」
え、どこって………?
気づくと、私と黒髪の青年はリトル・イェクルートの繁華街を抜け、無骨な街灯すらあまりないような、人影もまばらの少し寂しい感じのするうらぶれた住宅地に迷い込んでいた。
「…………あれっ?」
「考え事するなら戻ってからにしてくれ。さっさと帰るぞ」
カイル氏はそう言うと、私の左手を取りそのまま歩きだした。
や、ヤヴァい、また迷惑かけてる……!
「み、みんなは?」
「はぐれたらリトル・イェクルートの出入り口で待ち合わせしようって言っただろ」
あっ、そうだった───
「その、ごめんなさい……」
「気にすんな、仕事だ」
「でも迷惑ばっかかけてるし」
「……何か詫びでもしてくれるのか?」
「私に出来ることなら」
「判った」
妙に淡々とした声音に、私はマズったか、と思わず怯む。
デコピン程度で済んでくれればいいんだけど。
黒髪の青年は徐ろに左手を自分の黒マスクに掛けたかと思うと、そのまま引き下げて私の魔法のせいで白くなりますます綺麗になってしまった素顔をさらけ出す。
うっ、まぶしっ……!
心理的なものだが、白くなりイケメンさ加減に拍車が掛かった黒髪の美青年に思わず目を眇めてしまう。
何だか訳の判らない色気が増したように感じていた。
「じゃ、これで───」
そんな声が聞こえてきたかと思うと、目の前が一気に暗くなり私の唇を何か柔らかくて温かいものが覆った。
悩んだ挙句に追記してみました……私は根性なしです
【’24/04/13 修正しました】
悩んだ挙句に一部修正してます




