アシレマ【3】
西の大国アシレマ───様々な種族、民族の集まる巨大な民主主義国家。
そのアシレマ大陸の東海岸にある大都市セレグナ・ソルに、美女エルフの拠点である宿泊施設の隠された部屋ごと私達は移動していた。
要するに、そのお弟子さんである可愛い魔導師見習い曰く、あの部屋自体は異空間にあるとの事で、移動したい場所に魔法で開けた出入り口にシンクロさせて、然もそこに存在しているかのように見せかけているだけだという。
その時私の単純な脳内に浮かんだのは、青い猫型ロボットが出したピンクの扉だったのは言うまでもなく───里和ちゃんに言ったらそんな簡単なモンじゃない、と怒り出しそうだけど、私にとっちゃどっちもどっち、である。
そんなミズガルズの中でも一二を争う大国で、尚且つ資本主義国家でもあるアシレマは、この世界の中でもかなり特殊な国で、とにかく人種も然ることながら様々な種族の坩堝でもあった。
現在私達がいるセレグナ・ソルは東側の緑が豊かな地域で、首都ではないがこの国の経済の中心となるアシレマ一の大都市なのだ。
そして美女エルフと私達は現在、アイシュールでの騒動の黒幕を追ってきた訳なのだが───
「すいませーん! ナシルタップ・イサタラス1つとナアダ・バベック1つ、レッドネクシ・バベック1つに───」
「あっ! ねぇ、ライカちゃん、レンド・バベックも美味しそうだよ」
「あっ、じゃあ、レンド・バベックも1つお願いします」
「飲み物は? それと甘い物も頼もうよ」
「スイーツは別ないいお店知ってるんで、そこに行きましょう!」
「うっわ、楽しみ!」
「───お前らどんだけ食うんだよ……ヒトの財布だと思って」
黒髪の青年はそう言うと深く溜め息をついた。
ここはセレグナ・ソルの繁華街で、イェクルート民族の人達が集まって出来たリトル・イェクルートと俗称されている地区だ。
その中にあるライカちゃんお奨めのイェクルート料理のお店で、賭けに負けたはずのライカちゃんに勝ったカイル氏が奢るというルールに変更させ、賭けのネタにされた私にも奢るという憂き目に遭わせている最中である。
それどころか───
ここは比較的温暖な地域なのだが、カイル氏は黒い覆面のような大きめのマスクをしていた。
「……ねぇ、その黒いマスク、暑くないの?」
私は木製のメニュー表で顔を半分隠しながら、黒髪の青年を横目にそう訊いてみる。
「そもそも、このマスクの原因を作ったのはあんただろ」
カイル氏は眉間に皺を寄せ、かなり不機嫌そうに私から視線を逸らした。
あわわ……めっちゃ怒ってはる。
そりゃそうだよね、毎度無意識とは言えまたおかしな魔法をかけてしまったんだから───
私はかなり自己嫌悪の底なし沼に落ち込んでいた。
何であの時、魔法なんか使っちゃったんだろう……でもなぁ。
折角仲良くなれたと思ったのに、自分が蒔いた種とは言え、これじゃまた元の木阿弥である。
するとそれまでメニューとにらめっこしていた魔導師見習いの美少女は、キッとなって黒髪の青年に視線を移して説教口調でこう言った。
「第一、ああなってしまったのは、カイルさんだって悪いんですからね。真夜さんを責めるのはお門違いですよ」
その言葉にぎくりとし、カイル氏は何か言いたげにライカちゃんを見る。
「でも、この真夜さんの不思議な魔法───師匠が知ったら、大いに喜びそうな魔法なんですけどねー。こんな肌を白く綺麗にしてくれる、美容に特化したお金になりそうな魔法なんて」
……ライカちゃん、その考え方、師匠に感化され過ぎだよ。
睡魔に勝てません……ちゃんと書けてるか心配なくらい眠い
マスクの顛末は地味に前回後半にかなり加筆してしまったので、気になる方はお読み下さい
恐らくまた加筆修正してしまうと思いますが、何とぞよしなに願います
【’24/04/01 加筆修正してます】
またうっかり発動してしまいました……申し訳ありません




