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アイシュール【12】


気の抜けたアイシュールの皇帝やその取り巻き連中と一悶着(ひともんちゃく)あった後、私と黒髪の青年の元へ来るなり美女エルフは変に(ほが)らかに私に向かってこう言った。


「がっかりしたでしょ?」


私は何と返事して良いか判らず、ただ困ったまま首を横に振った。


我ながら気の利かない(ヤツ)だな、とも思うが、今の里和ちゃんに私みたいな人間からのどんな(なぐさ)めの言葉も響きはしないだろう。


とは言え今回、里和ちゃんが背負っている物のデカさをまじまじと見せつけられた一件だった。


彼女が本気になれば、一国を滅ぼすことの出来る力を持つと言う事実。


それが彼女がこの世界(ニウ・ヘイマール)に呼び戻された理由なのかも知れないと思った。


そしてこの世界(ニウ・ヘイマール)地上(ミズガルズ)の国々の権力者たちにとって、どれほどの脅威(きょうい)として受け止められているのか。


案の定、里和ちゃん達はアイシュールに潜入する前に、同盟を結んでいた周辺のアイシュールの衛星国に声を掛け、これから起こる事態に一切介入無用いっさいかいにゅうむような事、もし今回の件でアイシュールに(なにがし)かの形で介入してきた場合、これからアイシュールに課すべき過料(かりょう)以上の損益(そんえき)(こうむ)るであろう事───そしてそれは、自分達に対する敵対宣言と(とら)えるであろう事を、その各国政府要人に言い含めてきたらしい………マジおっかな。


(ちな)みに、このど派手で金ピカな謁見(えっけん)の大広間に倒れていた衛兵たちは、宮殿の周辺を警護していた兵士たちも引っ(くる)めて皆、吟遊詩人(バード)かつ優秀な魔法使い(ドルイド)でもあるヴィンセントさんの華麗なリュート演奏と歌声で───要するに睡眠魔法で───眠らされているだけだったらしい。


「あたしもこっちに戻されてから約200年、アーロン様や他の大国の要人の方達なんかと国同士や種族間同志で争いが起こらないよう、色々試行錯誤(しこうさくご)してきたんだけど……結局、最終的にあたしがこんな真似しないと、世界を牛耳(ぎゅうじ)りたいような連中って黙ってくれないんだよね───あたしが悪者になる事で平和を保てるならいくらでもなるけど、それもなかなか、ね……」


上手くいってるとは言い(がた)い訳なんだね。


きっと(こと)ある(ごと)に今回みたいな騒動が、手を変え品を変え()り返し起こされているんだろう。


「ま、とにかく、今回の件を収拾(しゅうしゅう)しとかないと、ね。香月(メグ)には思った以上に危ない目に()わせちゃったけど、カイルとサーシャがいたからその辺は安心できたかな」


……………ん?


「そんなこったろうと思ったよ。だからあんたも信用ならないんだよな───って事は、ヴィンにも黙ってたんだろ」

(メグ)(おとり)に使ったなんて言ったら卒倒(そっとう)しちゃうからね」


───何ですと?


私の中で何かがぷつんと切れた音がしたような気がした。


ヴィンセントさんより先に───


何だか里和ちゃん達のやり取りが妙に遠くの方に聞こえていた。


「あんたが女じゃなかったらぶっ飛ばしてるよ」

「ふふん、君じゃ今のあたしをぶっ飛ばす事なんて出来ないよ。ソッコー返り()ちにしてくれる」


その言葉を聞いた途端(とたん)、再び私の目の前がぐるぐると回りだし、しがみついていた(はず)の全身黒ずくめの青年の足元にへなへなと(ちから)なく座り込んでいた。


「「メグ───!?」」


驚いた二人の声を遠くに聞きながら、私は意識を失った。


緊張の糸が切れたらしい。

のほほんとして見えても、私は私なりに物凄く頑張っていたのだ。


疲れた………底無しに。


脳味噌(のうみそ)が雑多な情報の処理を(あきら)めたみたいに、頭が真っ白になって何も考えられなかった。


そうだ、サーシャを………サーシャを助けないと………。


結局、気づけば今回の黒幕であるマイケル・ファーマンの姿はどこにも無く、闘っていた己の分身(ダブル)と共にアイシュールから忽然(こつぜん)と姿を消していた。


もし前回と話が繋がらない方は、前話末尾部分を読んで頂けると助かります

追記ばかりしてて申し訳ないです(読み返すたび色々気になってしまって

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