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アイシュール【10】


「師匠、それはないですよ」


魔術士ファーマン某は不遜(ふそん)な笑みをその薄い唇に浮かべると、眼前の美女エルフに更に奇怪な召喚魔法をかけられた己自身の分身(ダブル)に向かい、暗黒の雷撃を放つ。


分身(ダブル)ファーマンは辛うじてそれを避け、仰け反ってバク転して自分の本体から距離を取る。


うっわ、ファーマンって里和ちゃんの弟子なの!?

いや、何ちゃらって財団とかと何か関係があるんだろうとは思っていたけど……。


私がその事実に愕然(がくぜん)としていると、美女エルフは上半身だけ壁から出た状態で、はて、と首を(ひね)る。


「あたしにマイケル・ファーマンって名前の弟子はいないんだけどね───20年以上前に逃げだしたヤツなら覚えてるけど」

「逃げた訳じゃないですよ、師匠。それは貴女(あなた)が………!」


と、ファーマン某が口を開きかけたところで、分身(ダブル)ファーマンが再び攻撃を仕掛けてくる。


また魔法を中心とした激しい格闘が始まった。

今度は分身(ダブル)ファーマンが若干(じゃっかん)押しているように見える。


「今更昔の終わった話をしたところで仕方ないかもね。じゃ、ここは香月(メグ)の召喚した分身(ダブル)君に任せて、すぐそこだから謁見(えっけん)の大広間にカイルと一緒に入ってきてくれる?」


あっ、そう言えばカイル氏は───?


「了解」


いきなり背後の頭上から、最近ようやく聞き慣れてきたぶっきら棒な調子のテノールが降ってきた。


私は思わず、わぁ、と声を上げる。


そのままばっと振り(あお)ぐと、派手な金銀(つた)模様の壁に腕を組んで寄り掛かって立っている黒髪の青年が視界に入った。


い、いつの間に!?

いやいや、それよりもあの翼つきギョロ目巨大ワンコ、えーっと、名前は───


「か、カーシモラル? は?? つか、いつからいたの!? いや、それより怪我は?」

「落ちつけ。とにかく中に入るぞ。話はそれからだ」


カイル氏は相も変わらず愛想なくそう言うと、当たり前のように私に向かって右手を差し伸べてきた。


四の五の言うなって事ね。


私は黙ってその黒髪の青年の手を取り、激闘が繰り広げられているであろう方向をちらっと振り返る。


壁から上半身だけ()えていた美女エルフの姿は(すで)になく、魔法攻撃の鋭い衝撃音が絶え間なく続く方に視線を移す。


ところがそこで、私の目を温かい物体が(おお)う。


「見るな。(まじ)をかけられるぞ」


そのカイル氏の言葉にはっとし、慌てて振り返ると物凄く近くに彼の日に焼けて浅黒い端正な顔があった。


切れ長の奥二重の双眸(そうぼう)は、ブラックオパールの(ごと)き 輝きを(たた)えている。


そのやけに真剣な眼差(まなざ)しにぎくりとし、反射的に身を引く。


いやいや、こっちの方が蠱かけられそうだよ……!


ところが、である。


なぜかそのまま抱き締められてしまっていた。



えっ?


えっ………!?


えぇっ───!?



軽くパニくる私は、当然のようにその腕の中でじたばた足掻(あが)きだす。


こんな場所でこのタイミングで、その上こんなおかしな格好で、なぜこんな事になるんだーーーっ!?


しかしそれは私の完全な勘違いである事がソッコー判明する。


そのままふわっと抱え上げられたかと思うと、黒髪の青年は身を屈める。


その私達の上を黒い雷光が走り抜けていった。


流れ弾ならぬ流れ魔法……?


いや、それとも(ねら)って打ってきたのかも───


それを確かめる間もなく、奥の方で通り過ぎた攻撃が何かに当たり轟音(ごうおん)を響かせる。


うわわ、勘違いしてる場合じゃない……!


そしてカイル氏は私を抱き上げたまま身を(ひるがえ)し走り出す。


ふと見ると、金髪のファーマンがこちらに背を向けダークブロンドのファーマンに向って魔法攻撃をしていた。


ちゃんと私達を(かば)う余裕のある、仕事きっちりな分身(ダブル)ファーマン君に私は内心拍手を送る。


頑張れ、分身(ダブル)君!


里和ちゃんの強力な追加魔法で頼もしくなったその背を見送り、ファーマンの魔法攻撃で破壊された壁の前をぞっとしつつ通り抜け、黒髪の青年に抱えられた私は廊下の角を左へ曲がった。


その奥に、この派手な建物の内装にしては小さくて地味めの観音扉が開いているのが見え、カイル氏は躊躇(ためら)う事なく更に暗いそこへ入ってゆく。


どうやらそこは使用人の通用口らしく、数台の豪華なデザインのカートが並んで置いてあり、その左側にまた扉があるのか、明るい光が差し込んでいるのが見えた。


当然のように黒髪の青年はそこに私を抱いたままで駆け込んでゆくと、見た事のないような豪勢絢爛(ごうぜいけんらん)たる金ピカ空間が眼前に広がっていた。


金糸に縁取られたレッドカーペットの中央には、見知らぬ高貴そうなおじ様達と権力を持ってそうなおじ様方が腰を抜かした様子で座り込んでいるのを、見慣れた面子(メンツ)がぐるりと囲んで立っていた。


場所と格好が違えば、ヤンキーに囲まれてオヤジ狩りされてるおっちゃん達に見えなくもない光景だ。


「───で、皆様、これはどういう了見で行われた事なのでしょうか?」


その中心にいるスケバn………もとい、美女エルフが両手を腰に当て、仁王立ちでそう詰問(きつもん)する声が聞こえてきた。


何度も加筆修正しまくっててすみません……

書いてるうちに寝落ちしてしまう昨今です


【’24/03/24 かなり加筆してます】

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