アイシュール【4】
はて───?
茶髪の青年の長くて白くて綺麗な首筋がそこにはあった。
何も、無いんですけど………ん??
一瞬何かがギラリと光った気がした。
「サーシャ、ちょっとこっち来て」
茶髪の青年を私の傍らに呼んでベッドに腰を掛けさせると、体を隠していた派手な刺繍のベッドカバーがズレるのも忘れて彼の喉元に意識を集中させる。
ドス黒い何かが、サーシャの首元に蟠っていた。
また無意識のうちに知らないはずの言葉が口を突く。
「秘密の解放───」
すると空気に焼かれるように、禍々しい黒い蛇の造形のトルクが姿を現した。
これは───
「ファーマンの呪い、だよ」
その毒闇を凝縮したような瘴気を発するトルクに、悍ましさで吐き気がしてくるほどだ。
恐らく身体の支配だけではなく、このトルクをつけているだけで精気を吸われ、力や命すら削り取ってゆくような代物なのではないだろうか。
美女エルフだったらきっと解く事が出来るんだろうけど……私にはきっと無理だ。
「ごめん、サーシャ。私にはこれ以上どうにも出来ない」
「いいよ、気にしなくて。第一、不可抗力だけどメグっちやリワ達を裏切ったボクが悪いんだ。コレを見えるようにしてくれただけでも助かるよ。それにメグっち、ボクより小さいってだけで、貧乳じゃないから安心して」
───は?
そこでようやく、隠していたはずの自分の上半身がベッドカバーから出ている事に気づいた。
ふっちゃけ全く趣味がいいとは言えない、なぜかメタルビキニを着せられたマーガレットさんのほっそり白い半裸の姿がある訳で───今は私の体でもあるのだが……。
全然実用的ではない、ローズレッドの地布に金属部分は黒い蔦のような意匠が施されたトップス。
今は隠しているがボトム部分も同じ布地のほぼショーツで、金属プレートの装飾のある黒レース模様の入ったコルセットベルトが巻かれ、腰までスリットの入った黒のサテン地のミニスカートという、どう見ても悪趣味なコスプレ状態。
ぎゃあっ!?
私は慌てて腰まで落ちたベッドカバーを掴み、露になっていた上半身を再び隠す。
「まあ、武装解除しなきゃならなかったんだろうけど……趣味と実益を兼ねようとするあいつらの考えには呆れるね」
茶髪の竜人は苦笑しながらそんな私の顔を覗き込む。
今は自分の体であっても、本来は自分の体ではないこの綺麗なマーガレットさんの体なのに、違和感を覚えながらも恥ずかしいと思ってしまう。
自分の奇怪な感情を制御できないまま、そんな私を興味深げに眺めるサーシャを睨みつける事しか出来なかった。
後日談だが、女性であれば大抵半裸状態にしておけば、おいそれとは外に逃げ出せない心理状態になるという、悪党がよく使う卑劣な常套手段な訳で───その上、露出狂よろしく変態染みた格好という駄目押しだ。
「そのお陰でボクも目の保養ができるお零れ頂戴できたワケだけど───メグっち、顔も体も真っ赤だね」
「ほっ、ほほほ、放っといてよ!」
「ふふっ、可愛いなぁ」
「もう、あっち行って!!」
私はそう言いながら右手で茶髪の青年の肩を押す。
こんにゃろー、ここが○ラクエ世界ならパルプンテでもかけてやりたい気分だ。
その時だった───
何だか騒がしい気配が部屋の外から聞こえてくる。
「そろそろ来る頃だろうとは思ってたけど───」
サーシャは独り言ちるように呟くと、私の右手を掴み、そのまま体をベッドに押し倒した。
その弾みで、ベッドカバーで隠していたはずの体がひんやりとした室内の空気に晒される。
いきなりの事態に驚きと恐怖で悲鳴も出ない。
炎瑪瑙に似た瞳がキラキラと輝き、間近で私を見下ろしていた。
え、嘘でしょ………?
私は何か言おうと口をぱくぱくさせるが、なぜか一向に言葉は出ては来なかった。
しかし、すぐにそれが杞憂だと気づかされる。
「メグっち、逃げるよ」
とは言え、必要以上に私の左耳元まで口を寄せ、茶髪の竜人はそう囁くのだった。
毎度ですが、ルーンは沼過ぎて使い方も意味も間違ってると思いますので、後ほど訂正とかさせてもらうと思います
何とぞよしなに
【24/03/12 01:31 微修正しました】
かなり加筆予定だったりするのですが、睡魔に勝てません……
【24/03/12 21:05 加筆修正してます】




