アイシュール【3】
私が寝かされていた紗の天蓋つきキングサイズのベットの左奥から、がちゃりと音を立てて扉の開く音が聞こえてくる。
その音にびくんとし、私は慌てて豪華な刺繍が施されたベッドカバーを手繰り寄せ、自分の身を隠した。
心音が耳元まで迫り上がり、爆音となって自分の頭蓋骨の中を反響しているようだ。
「メグっち、目が覚めたんだね」
白地に金色のアカンサス彫刻が施された豪華な扉から、肩に届くほどの長さがある緩くカールした茶髪の青年が、僅かに柔らかな笑みをその貌に浮かべながら姿を現した。
そのちょっと鼻にかかった甘めのテナーボイスの言葉に、私は多少ほっと胸を撫で下ろしながらも、緊張で声音が硬くなるのを抑えきれない。
「………眠らせたのは、サーシャでしょ?」
硬さがキツさに聞こえたのか、茶髪の青年は少し寂しげな表情を見せた。
「ごめん、そうだね」
「ここ、どこなの?」
「アイシュールだよ。東側のエイサルエ大陸にある大国」
あ、あいしゅーる……?
私はにわか仕込みのミズガルズの不思議な地形の地図を必死に思い出す。
北の大国、だよね。
確かサーシャの故郷。
随分と遠くまで連れて行かれてしまったものだ───自力で里和ちゃん達の所に戻るには、今の私にはかなり難易度が高過ぎる。
サーシャだとひとっ飛びなんだろうけども。
あれからどのくらい時間が経ったんだろ?
アリカント爺ちゃん、流石に里和ちゃん達に私達が消えたこと伝えてくれたよね?
とにかく、現状把握に努めないと。
考えるのはそれからだ。
「で、私、どうなっちゃうの?」
「平たく言うと、リワを誘き寄せるため、らしいよ。エルフ王の弟、オハラ公爵の娘が400年の眠りから覚めたと、かなり前から密かに噂が流れてたんだ」
えぇっ!?
だって、それって───
極秘の話が普通に地上の人間界に漏れてるし……。
ってか、疑いたくないけど間者でも───いや、魔法が当たり前のこの世界で、バレないのがそもそも無理なのかも知れない。
いくら稀代の魔法使いであっても、本人曰く、○ラえもんほどではないらしいからなぁ───って、いやいや!
アールヴヘイムで三日三晩寝ずにたった一人で詠唱して『光芒の宮殿』顕現させたり、エルフ王の話だとこの世界を救ったりしてるみたいなんだから、どう考えたって普通に猫型ロボット並に凄いよね。
「って、言うか……そんな事私にバラしていいの?」
その私の言葉に、茶髪の竜人たるサーシャは珍しく自嘲気味な笑みをその白い頬に浮かべ、ふんと鼻を鳴らす。
「別にボクにあいつらの秘密を守る義理はないからね」
ん〜!?
どういう話だろ?
「じゃ、何で私をアイシュールに連れてきちゃったの?」
「ボクを最初に捕獲したのが、アイシュールの皇帝に雇われた魔術士、マイケル・ファーマンだったからだよ」
魔術士マイケル・ファーマン………普通に、誰!?
何か、強そうな名前だけども!
つか、最初って、私じゃなかったんだ───って、事は、そもそも私とサーシャって従魔契約してないって言う話なのか?
だからあんなにサーシャ、自由に振る舞えてたって訳なんだね。
超納得。
「そっかー………うん、判ったよ」
まあ、冷静に考えりゃあの状況で信じた私が阿呆だっただけの話だ。
黒髪の青年はあんなに疑ってたのに。
誰かに裏切られるのはこれが初めてでもないし、裏切るも何も、そもそも論な訳だし。
自分の阿呆さ加減棚に上げても、ダメージが何気にデカいのは隠しようがない。
情けない自分が底無しに嫌になる。
「で、私はこの先───」
「大丈夫だよ。メグっちはボクが守るから」
しょぼーんな私が口を開きかけた時、透かさず茶髪の青年がおかしな事を言ってきた。
私の頭にでっかいクエッションマークが乗っかってくる。
「何言ってんの?」
「だってメグっちはボクの主だろ?」
「さっき、最初のテイマーはマイコー何ちゃらって魔術士じゃ───?」
「イヤ、ファーマンには捕まったってだけで、契約はしてない───って言うか、メグっちの強烈な魔力がそれを上書きしてくれちゃったって言うか。だから、ボクの主はメグだけだよ」
……………そんな馬鹿な話、ある?
「だったら尚更、何であいつらの言いなりになってるの、サーシャ?」
「コレのせいだよ」
そう言うと、サーシャは自分の首を指先でトントンと叩いて示した。
去年末からショックな事が多過ぎて……鳥山明さん、ご冥福をお祈りします
もう少し書きたいんですが、睡魔に勝てません
また後ほど追記修正させて頂きとう存じます
【’24/03/09 20:30 加筆修正してます】
今度はTARAKOさんまで……悲し過ぎる
ご冥福をお祈りします
【’24/03/10 01:21 加筆修正しました】
【’24/03/12 加筆修正してます】




