アイシュール【2】
うわ………何だろう、この大きさの割に異常なくらいの強烈なエネルギーの波動は?
魂が魔鉱石に惹き込まれ、呑み込まれてしまうのではないかと錯覚するほどだ───
いや、実際そうなってしまう人がいるのかも知れない。
えー………すっごい綺麗なんだけども、まさか、これだけじゃあない、よね?
私はぽかんとしたまま再び目眩に襲われ、岩壁にしがみつきながら腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
第一、魔鉱石化した黄鉄鉱を数百kg単位で保有することが出来る里和ちゃんが、大きめとは言えこのオパールひとつで納得できるとは思えない。
今回鉱山の所有者から魔物討伐の報奨金が出るにしろ、恐らくこのままじゃ赤字になるのではなかろうか?
と、私が余計な心配をしていたら、幾分砂煙が落ち着いてきた坑道の奥から、時折ガラガラと瓦礫が崩れる音が聞こえてくる。
げ、やっぱこのままだと危ないんじゃないの……!?
いやホント、魔鉱石これだけしか採掘できなかった上にこの坑道が崩れちゃったら、後からまた残ってるかもな魔鉱石掘り出す事も出来なくなるし、マジ洒落にならん!
「サーシャ、何か危なそうだから取り敢えずここから出ようよ」
すると茶髪の青年はやけに優しそうににっこりと笑い、
「大丈夫だよ、メグ。ボクがこのまま君を連れて別な場所に行けるから」
えぇ……?
「そんな里和ちゃんみたいな事、できるの?」
「できるよ───だから、メグは少し眠ってていいよ」
ん?
眠る??
サーシャのゴールドと呼んでもいい色合いの炎瑪瑙のような双眸が、蛍光のサルファイエローに輝いた。
突然のことに目蓋を閉じられず、鮮烈な光が私の脳髄を貫いたような錯覚に囚われる。
途端に視野が狭まり、意識が遠退いてゆく。
「ごめんね、メグっち」
力の抜けた私の体を抱き留めたであろう声の主が、少し悲しげな声色でそう呟いた。
サーシャ、様子がおかしいと思ったら……一体何をしようと───
そこで私の思考は途切れる。
遠くの方で聞き覚えのある声が、私を呼んだような気がした。
×××××××××××
「…………ほぉ、これが例のエルフか?」
中年男性と思しき無遠慮そうな声が頭上から俄に降ってきた。
エルフ………?
誰のことだ?
「はい、パーヴェル陛下」
「面立ちは綺麗だが、髪の毛の色はちと汚いな」
「瞳はオッドアイで、珍しい色合いだとか」
「ほほう、それは楽しみだな」
気味の悪い会話だ。
人を商品みたいに品評しくさって───
つか、どっかで聞いたような、見たような話だ………。
誰の話だっけ?
あぁ、夢だ───これは絶対夢オチに違いない。
目が覚めたらきっといつもの部屋で、いつもの冴えない日常が始まるんだ。
ビバ平凡、ビバ平穏、ビバありきたりの毎日!!
ところが、ちょっと甘めのテノールの声が私を本当の現実に引き戻す。
「あんたら何の話をしてるんだ? 彼女に手を出したら、ボクが許さないよ」
この声は───
嘲笑するような含み笑いが響き渡る。
「ヌシは吾に逆らえる立場か?」
「───約束は果たした。ただ、ボクはそれ以上にあんたらのやり口が気に入らないだけだよ」
サーシャ!
×××××××××××
はっと目が覚めると、そこはうそ寒い空気の漂う見知らぬ場所だった。
驕傲華美を絵で描いたらこうなる、というぐらいの無駄にギラギした趣向のだだっ広い室内だ。
無理矢理例えるなら、バロック様式チックと言うか───視界に入る情報量が多過ぎて胸焼けしそうだった。
謎の奇っ怪なデザインの金の香炉からは、個人的にはあまり良い匂いとは思えない香が焚き染められている。
陽あたりも悪い場所なのか妙に暗く、その所為もあってひんやりと肌寒い感じがするのだろう。
「………夢じゃなかった」
そんな中、ぽつんと一人。
帰りたい。
元の世界に帰りたい。
幼い頃、一人ぼっちの家に残される苦痛を思い出した。
この世界でも最後までそうだったらどうしよう?
久々に本気で泣きたくなった私であった。
だから強くなりたい。
毎日そう考えている。
そうだ、気弱になってる場合じゃない───!
気合いを入れ直し、改めて自分のいる場所を見回す。
「ここはどこだ………?」
そして自分の姿を見て、更に絶望的な気分になる。
そりゃ寒いはずだよ……。
嫌だな、これだとあれが見えてしまうかも。
それ以上に───
何でこの世界の連中は、人に変な格好をさせたがるんだ───!!
※ 3/6は○川に行かねばならないので更新投稿遅くなります
何とぞよしなに願います
【’24/03/07 01:20 加筆してます】
【’24/03/08 19:15 少々加筆してます】
【’24/03/08 12:45 重複表現訂正してます】
そういや○川の道中、オジロワシが頭上を飛んでいきました
今増えてるらしいですよ
【’24/04/05 少々加筆してます】




