イティプ・アプク【11】
私の脅し(?)が効いたのか、アリカント爺さんは割とあっさり、美女エルフが狙っていた高品質の魔鉱石化したオパールの地脈のある場所に案内してくれる確約───と、言うより、里和ちゃんががっつり魔法で契約させていた。
流石、この世界でダテに200年も生き延びてない。
「じゃあさ、私がサーシャとアリカント爺ちゃんで魔鉱石取ってくるよ」
ヴィンセントさん達もかなりお疲れモードだし、里和ちゃんも魔力使い過ぎてるみたいだからなぁ。
結果今の私、無理矢理アクロバティック召喚されたとは言え、金銭面から何から世話になりっぱだし、魔力も召喚のされ方のせいかアクロバティックな効果しか出せないし、それぐらい役に立たないと自分的に鬼肩身が狭いっス……。
「えぇ? 君達だけじゃ心配だよ〜」
「そうだ! 真夜とサーシャだけじゃ、こんな魔物の出やすい危険な場所でお使いなんて無理だよ!!」
ヴィンセントお兄様、○じめてのおつかいの父親みたいなスタンスで言うのはやめて下さい……。
「お前ら過保護だな。もうババイも退治したんだし、出る魔物も高々知れてるだろ? メグちゃんが魔法の練習するには丁度いいんじゃないか?」
「じゃ、後からカイル送り込めば? まぁ、メグちんが黒いドラゴンとエロ爺ィと一緒だって言えば、無言でぶっ飛んでくと思うけど」
心配されてるようで、何気にお子ちゃま扱いされてるのは気のせいではないはずだ。
『失敬な。わしゃ、形のいい大きめの乳が好みなだけじゃ。貧乳の女子は───』
最後の透明ミイラ状態のアリカント爺さんの台詞は、言い切る前に私が拳を振り上げ黙らせる。
爺さんの声は私にしか聞こえてないけど、私の身体の沽券にも関わる重大事項なので。
とは言え、なぜか魔法で契約を交わしても里和ちゃんにアリカント爺さんの姿は見えないらしかった。
理屈は全く不明だ。
ただ、普通は視えるようになり、コミュニケーションも取れるようになるらしいのだが。
それに関しては美女エルフの推測によると、本来の私が持っている魂の性質に因るのではないか、と───世界樹を魔法を使わずに目視できる事と、同一線上にあるのかも知れないらしい。
うーん、どう言う事なんだろう?
じゃあ、人化したアリカント爺さんが見えていたのは……?
まぁ、私が考えたところでまともな答えは出ないだろうから、その辺は忘れた頃にやって来た天才の里和ちゃんに任せよう。
兎にも角にも───
「大丈夫だよ。ヴィンセントさん達が持ってた指輪型通信器? あれで連絡できるんでしょ?」
「指輪の魔水晶、出先での迷子になったパーティー用の簡易機器だから、半径5km圏内が通信限界なんだよ。拠点のエシラまでは100km以上あるから通信は無理」
えっ、そうなんだ……。
「じゃ、他の便利道具は?」
「あたし○ラえもんじゃないんだから、そんなの簡単に出せると思ってた?」
うん、ぶっちゃけ思ってた───
と、そんな○び太みたいな了見も言えず。
「だ、大丈夫だよ! じゃ、せめてイティプ・アプクの地下集落で待っててくれる?」
と、日和った提案をする私であった。
×××××××××××
私の妥協案はどうにか皆に認可され、イティプ・アプクに残ると言い張った私の体の兄であるヴィンセントさんを里和ちゃんが説き伏せ、エシラにある拠点に戻ってもらう事になった。
何せ一番疲弊しきっていたし、魔力もほぼエンプティな上に、曲がりなりにも王族───想定外の事態で何かあっても洒落にならないお立場なので、美女エルフと緋色の髪の竜騎士に懇々と言い含められていた。
一番の理由はパーティーの緊急時に備え、回復して万全の態勢で待っててもらう事に尽きるらしい。
エシラと言えば、カイル氏は大丈夫だろうか?
「ヴィンセントさ……お兄様、お願いがあるのですが」
我ながら口幅ったい事言ってるなぁ、と思いながら、私の兄になってしまった豪奢な金髪の青年にそう声を掛けると、感極まった様子で潤んだサファイアの如き瞳がじっと私を見つめてくる。
お?
「真夜……私も頼みがあるんだが───」
え!?
「もう一度、私を呼んでもらえるかい?」
う───?
「ゔ、ヴィンセントお、お兄様………?」
私が恐る恐る再度呼び掛けると、その玲瓏とした美貌をくしゃくしゃに歪ませ、いつもの毅然としてはいるが物腰の柔らかいヴィンセントさんとは違う、とても人間臭い温かな表情になった。
「こちらに戻って来てから妻にも娘にも会えなくなって、幼い妹のマーガレットだけが私の唯一の心の拠り所だったんだ……」
あー……。
ヴィンセントさんが既婚者で娘さんがいた事には驚くばかりだが、御父上のグリフィスさんとはまた違った痛みを抱えていたとは───ある意味、グリフィスさん以上に重く辛かった筈だ。
なのにこの世界のために、王族という立場上の意味合いも大きいのかも知れないが、今もこうして献身的に動いている。
逆に、そうでもしていないといられないのかも知れない。
私も里和ちゃんやヴィンセントさんを見習って、自分に出来る事から少しずつこの世界で生きていく術を学ぼう。
時間は元には戻せないのだから。
と、思っていた矢先───
非常にもじもじとした態度でエルフ王の麗しき甥御さんが私に向かって言う事には、
「ついでと言ってはなんだけど、真夜。今度は『パパ』と呼んでもらっても───」
「それはサーシャだけにして下さい、ヴィンセントお兄様」
私は食い気味にぴしゃりとそうお断りする。
あからさまにがっかりするが、流石にそれやっちゃうとまわりが黙ってないでしょう。
意外にお茶目(?)な私の兄であるヴィンセントさんなのであった。
この章、まだ地味に続きます……予定外に色々遊び過ぎて長くなってしまいました
【24/02/27 19:15 追記修正中、です】
誤字脱字等多くてすみません
最近書きながら寝落ちしてる自分がコワイです
【24/02/28 00:45 加筆修正してます】
あと、もう雪が降りませんように……
【24/02/28 12:12am 加筆修正してます】
雪投げ地獄です……




