イティプ・アプク【10】
結局南極水道局───
サーシャが食べてしまった約50kgを補うため、里和ちゃんが泣く泣く偽オパールを急遽100kg追加した時だった。
私が茶髪の美少女にハウスしてもらおうとしたところ、その背後から素っ頓狂な嗄れ声が飛んてきた。
「何だべ、今日は!? なしてこったら可愛い女の子ばりおるべか?」
うぇっ?
驚いた事に、どこから出てきたのか一人の好々爺然とした老人が立っていた。
白い頭髪と長めのヒゲは頬で繋がっており、頭には焦げ茶色のコイフをかぶり、ベージュのチュニックに白の綿シャツ、茶のズボンと似た色の長めのマント、年季の入った足首までの長さの黒茶色のピガッシュを履いている。
「さっきから見てりゃ、珍妙な事ばりしおって───じゃが、このいい乳しとる女の子置いていくなら、案内してやっても良いぞ」
そう言ってサーシャの両胸を両手で持ち上げ、ぽよんぽよんと揺らしだした。
何てことすんだ、このエロ爺ぃ!
私は怒りのままに叫んだ。
「束縛!」
それと同時にサーシャの全身から青白い炎が吹き出し、当然不届きな真似をしていたエロ爺さんもそれに巻き込まれる。
ぎゃーーーーーっ!?
「サーシャ、やりすぎ!!」
私がそう悲鳴を上げるのと同時に、美女エルフが持っていた魔杖を振り早口で詠唱する。
「普く星々の清浄なる雫より湧き出づる泉の女神・シロナの名に於いて、彼の者の身を慈愛の御手に抱擁し速やかに癒やし給え!」
途端に清涼な水流が辺りを巻き、青白い炎の人影を輝きながら包み込んでゆく。
然して───
やがて炎が消え、渦巻いていた清らかな水がその場に吸い込まれるように消え去った。
そしてそこに横たわっているものを見て私は絶句する。
「………あ〜、間に合わなかったか」
里和ちゃんも同じ場所を見てがくりと肩を落とす。
「───? メグっち、これ、あれだよね? ボクには見えないけど」
茶髪の美少女はきょとんとして私の顔を見る。
「そう、アリカントだよ───あのエr……もとい、おかしな爺ちゃん、アリカントだったみたい」
偽オパールの山の上には、見覚えのある白と薄茶色のまだらの羽毛と少々長めの尾羽、青とオレンジ色の冠羽を頂き、クイナ系に似た筋肉質の長めの足が白い羽毛に包まれている鳥が、時折腹部から乳白色の輝きを放ちながら気を失って横たわっていた。
×××××××××××
それまで対アリカント用の里和ちゃんオリジナル捕獲魔法である、榛の枝にルーン文字を施した魔法具を各坑道に設置していたヴィンセントさん達は、里和ちゃんから持たされていた指輪型の魔水晶の通信器でアリカントが捕まった一報が伝えられた。
「何だよ、ソレ〜」
戻って来るなりヴィンセントさんの疲れ切った第一声がこれである。
まあ、そうだよね。
さっきまでやってた事が全て無駄になる訳だし。
経緯を聞いたイアンさんは豪快に爆笑するし、蘭丸さんに至っては呆れ顔だ。
で、そのアリカントはと言えば、また逃げられたり剰え攻撃されたりしても厄介なので、慌てて視える私が捕まえて里和ちゃんが用意していた綿布でぐるぐる巻きにしてある。
特に啄木鳥みたいに尖ったキャメル色の嘴と、ほっそりした身体にアンバランスな長めの筋肉質な足の指にある凶器みたいな黒い爪には、特に念入りに───
すると、アリカントの小さい目がぽかっと開いたかと思うと、私の頭の中にさっきの不可思議な老人の声が鳴り響いた。
『これ、そこのエルフのお嬢。何もここまでせんでも良かろう………わしゃ、一度死にかけたのじゃぞ。孤独で可哀相な年寄りが、ちょっと茶目っ気出して乳をぽよんぽよんしただけじゃあるまいか』
おいおい……。
現行犯逮捕の痴漢の言い訳は、ただの性犯罪の助長ですぞ。
「そのような事を仰られるなら、もっかい彼に燃やして頂きましょうか?」
私はそう言って傍らにしゃがみ、私の様子を見ていた茶髪の青年を指し示す。
「そうでなければ、この子が焼き鳥にして美味しく頂きたいみたいですよ?」
私は心からの笑顔で、そうアリカント爺さんを諭すのであった。
前話後半部にかなり追記修正等してしまってますので、前回から話続かないと思われる方はお読み下さい
気にならない方はこのままどうぞ
あと、エセ東北北海道弁もどきはスルーの方向でお願いします
またちょいちょい追記訂正等があるとは思いますが、何とぞ良しなに




