イティプ・アプク【7】
えっ⁉
うっそ、ヤッバ、はっや……!
里和ちゃんから手筈は聞いていたとは言え、典型的な本番に弱いタイプの私は、徐ろに判りやすく焦りまくる。
アワアワと我ながらみっともなく坑道の真ん中に走り出ると、無意識のうちに両手を前に出し、たどたどしさ丸出しで美女エルフから口伝された言葉を詠唱する。
「えーと………あ! 止まれ、ポイズン!!」
ところがそれを見た里和ちゃんがかなり驚いた様子で飛び出して来て、そのまま私の体を抱いて坑道の端に押し退ける。
直後、紙一重のところを猛スピードでアリカントが私達を躱していったのが視えた。
その奥でイアンさんと里和ちゃんの従者の蘭丸さんが持っていた網を掲げるが、上げきる前に網の上の隙間からするりとアリカントがくぐり抜けてしまい、時折乳白色に輝きながら坑道の薄闇の奥に消え去ってしまった。
うそーん……。
速すぎる………捕まえられる気がしない。
場の空気はぽかーん、である。
私以外は視えてないので当然の反応だ。
あまりにも手応えが無さすぎるから、ヴィンセントさんやイアンさん、蘭丸さん達にとっては徒労以外の何ものでもないのだろう。
私が里和ちゃんから壁ドン状態になったまま茫然としていると、綺麗な紫水晶のような瞳が私を真剣に見据えて言うことには、
「香月、油断してるとアリカントの嘴で刺されるから気をつけて!」
と、本気で叱られてしまった。
うっ……そうだった。
アリカントは自分を捕まえようとしてくる相手には容赦がなく、嘴や鋭い爪での攻撃は勿論のこと、追跡者達を地面の裂け目に誘導したりなどの罠にかけようとするらしい。
「じゃ、どうすればいいの〜? やっぱ私には魔法なんてまだまだ扱うの無理だよー!」
「う〜ん……サーシャが魔物とかの気配判るし、香月が視えるから魔法で楽勝かと思ってたんだけど、如何せん、香月の魔力がここまで不安定だったとは───」
流石の稀代の魔法使いである美女エルフもお手上げ、と言ったところだろうか?
まあ、魔法も所詮は道具だから、使う相手に因るのはしょうがないよね。
況してや私だし………ははははは。
そこで何事か決心した様子で里和ちゃんがその花貌をキッと上げた。
「じゃ、香月とサーシャ、今度はあたしが魔法使うから誘導してもらえる?」
「それは構わないけど───さっきも言ってたけど、アリカントが速すぎるから誘導しても魔法の発動、間に合わないんじゃなかったっけ?」
そこで美女エルフは凄艶な笑顔を作って言うことには───
「今度はあたし達もアリカントちゃん見習って罠にかけるのよ」
ワナ?
Oh, don't wanna cry!
逆に私たちがそのアリカントちゃんに罠を仕掛けられない事を祈る私であった。
毎度地味に間違え訂正してます
何とぞよしなに
【’24/10/28 微修正しました】




