イティプ・アプク【5】
その美女エルフの後から、やはり疲弊しきったヴィンセントさんと里和ちゃんの従者の蘭丸さん、殿が竜騎士のイアンさんが次々と姿を現した。
「香月〜、なぁんで捕まえてくれないのよー」
いや、訳判ってないんだから、そもそも無理っしょ。
「だったらちゃんと説明しといてよ」
だからって、私にアリカントが捕獲出来るかは別問題だけれども───ってか、ぶっちゃけあんな速い鳥、どうやって捕まえればいいの?
「そぉなんだけどね〜……とりあえずババイ駆除してからじゃなきゃって思ったから───香月たち迎えに行った時って丁度、ババイの女王と皆でやり合ってたからホント余裕なくってさ〜。仕方なく比較的近くて安全な坑道に置いてきちゃったんだよね。さっきやっとその女王ババイ倒したばっかなんだよ」
なるほどね。
魔導師見習いのライカちゃんから聞いた話なのだが、里和ちゃん達は今もこういったニウ・ヘイマールで害をなす魔物が現れると、依頼があればほぼ断らず出向いて討伐を続けているという。
ただ、貧しい個人や団体、発展途上の小国や市町村などからは、討伐中の滞在宿泊場所を提供してもらう以外は無償で請け負っているとの事。
例外として私利私欲が絡んだ権力者や為政者、金持ちからは遠慮なくお金をふんだくっているらしい───但し、公金以外。
今回は後者らしいのだが、金持ち権力者ほどお金を出し渋る上に値下げ交渉は当たり前、更にそれを自分の手柄にしたがる、と可愛い魔導師見習いは頬を膨らませて怒っていた。
なので、よく逆恨みも受けているらしく───命懸けでやっている事でそれ相応の報奨を受ける事もままならない上に、その連中の意に沿わないだけで報復まで受けてしまう。
どんな世界も生狡い人間ばかりが蔓延って得をしようと暗躍するばかり。
それが偽善であっても、多少なりとも弱者のためになってるならまだ救いがあるけども。
ただただ強者が弱者を餌食にしては巣食おうとする。
そんな場所で里和ちゃんやみんなは頑張ってきたんだな───って言うか、今も頑張っているんだな。
その里和ちゃん御一行は現在、蘭丸さんも坑道の壁に背中を預けて項垂れてるし、ヴィンセントさんに至っては、疲れ切っているからか刃こぼれしたロングソードを杖代わりにしている始末だ。
以前、こんな風に皆が疲労困憊してる時に、なぜか里和ちゃん達はあまり回復魔法を使わないのを不思議に思い、従者の蘭丸さんに訊いた事があった。
こういう簡単に脱出できない鉱山や前人未踏の地下洞窟、砂漠や荒野、海上、両極地域、高山、樹海などの広大なアネクメーネに入らねばならない時は、パーティーの要である魔法使いの里和ちゃんの魔力をなるべく温存し、予期せぬ事態にいつでも対処出来るよう極力回復魔法は使わないようにしているとの事だった。
要するに今回、女王ババイの討伐でかなりの魔力と魔法アイテムを使ってしまったのだろう。
私が習いたての回復魔法、使ってもいいんだけども……。
脳裏にカイル氏の激怒顔が浮かび、私が回復魔法を使える(?)事実は黙っておくことにした。
ただイアンさんだけは───比較的元気そうっていうか、疲れてやけに色っぽく見える里和ちゃんにデレデレしてるっていうか。
色んな意味で鬼大変だったみたいなので、置いてけぼりにされた件は水に流そう。
「で、私がアリカント捕まえるにしても、どうしたらいいの? サーシャは気配しか判らないらしいし、私もただ視えてるだけだし……体張って捕まえろって言うんなら、頑張ってみるけど」
「視えていれば簡単なのよ。魔法で止めちゃえばいいだけだから」
「……その里和ちゃんにとって簡単な魔法が、私にはまだ敷居が高いんですが」
「ダイジョブダイジョブ! 簡単簡単!!」
何、その○島よしおみたいなノリ?
「さあ、やってみよっか!」
妙にうきうきした様子で私の肩をぽんぽんと叩く美女エルフなのであった。
その表情に嫌な予感しかしないのは、私の気のせいなんだろうか?
【’24/02/21 かなり加筆修正してます】
【’24/02/22 かなり加筆修正しました】
冒頭部分を前話末尾部分に移動させてます
【’24/02/23 1:11am 冒頭部分修正してます】




