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イティプ・アプク【4】


───って、それどころじゃなかった!


ズドドドドド……………ン!!


ババイが出てきた右奥の坑道から、激しい重低音と振動が響き渡る。

そしてその後を追うように遅れて、粉塵(ふんじん)が白い煙みたいにそこから()き上がってきた。


私とサーシャは粉っぽい土埃(つちぼこり)に軽く()せながら、各々(おのおの)(そで)で口を(ふさ)ぐ。


うわ、里和(りわ)ちゃん達、大丈夫なのかな⁉


こんな坑道内を揺るがす攻撃とか何度もして、岩盤(がんばん)が崩れてきて生き埋めとかになりそうで思わず身震(みぶる)いする。


伝わってくる音と振動が凄過(すご)ぎて、おっかないやら心配やらでめちゃめちゃ落ち着かない私であった。


「サーシャ、魔物の正体も判ったし、いい加減あっち行こうよ」

「………まだだよ。まだババイじゃない、おかしな気配があるんだ」


えー!?

他に何がいるって言うのよ?


「それホントー?」

「何で疑うのさ?」

「だって、サーシャお腹()いてるんでしょ? だったら、ババイ食べて助けられるんじゃ───」

流石(さすが)に数百単位どころか、うっかりしたら数千単位で()いてくる魔物は食べきれないよ〜。ボクが食べられるのはせいぜい百十数匹が限界。それにババイ系の魔物って、生より火を通した方が断然美味しいんだよねー。生だとちょっと苦味って言うか、エグ味があってさ〜」


百匹以上も食べらるって、フードファイターか!

それどころかこの()に及んで美食家みたいなこと言い出さないでよ、全く。

つか、ババイ系って、他にもあんなのいるの……?


「もう、いい! 私一人で行くから」


私は(あき)れて多少憤慨(ふんがい)しながら、粉塵の落ち着いてきた右側の坑道に速歩(はやある)きで向った。


「ちょっと、メグっち! 」


こうなると黒い火竜(ズメイ)のサーシャも、(マスター)になってしまった私に追随(ついずい)せざるを得ない。


とにかく里和ちゃん達と合流しなければ───


「里和ちゃーん!」


取り敢えず大声で呼んでみる。


悲しいぐらい返事はない。


嫌だな、どこ行ったんだろ……?


モクモクと黄色っぽい砂煙が舞う中、着ていたマントの(すそ)で口を(おお)いながら、安全ランプに淡く照らされた視界のきかない薄暗い坑道内を用心深く歩いてゆく。


()しか辺りに生臭さが(ただよ)い始める。


そこでブーツの足元に何か硬いものが当たった。


はっとして視線を落とすと、ババイが胴を真っ二つに割られて横たわっていた。


この怪力感、竜騎士のイアンさん……かな?


破壊された中からババイの黒っぽい深緑の体液や、()かれた白い筋繊維、蛍光オレンジのドロリとした内臓なんかが散乱していた。


おぇ……!


その鼻を突く臭いに思わずえずく。


目を()らすとあちこちに似たような死骸が散乱している。


ババイの大きさもまちまちで、大体が折り(たた)まれていた腹部を突かれたり割られたり、もしくは粉砕された状態で倒されていた。


その惨状のグロさに胸焼けしつつ、なるべく死骸を踏まないように先へと進んでゆく。


すると、(けむ)る先からぼんやりとした光が見えたと思ったら、その中から何かが猛スピードで飛び出してきた。


それとほぼ同時に、先ほどまで一緒にいた美女エルフの絶叫が坑道内でエコーする。


香月(メグ)、捕まえてーーーっ!」



えぇえぇえ………!?



しかし里和(りわ)ちゃんの懸命(けんめい)の叫びも虚しく、物凄い勢いで私たちの間を一陣(いちじん)の疾風が砂塵を巻いて通り抜けていった。


───鳥?


再び巻き起こった砂煙の中、私が呆気にとられてそれを見送っていると、サーシャは更にぽかんとして私の顔を見ていた。


「何か、鬼(はや)い鳥が通っていったね」

「ボクには気配だけで見えなかったんだけど、鳥だったの?」


へ?

気配は判るのに見えない??


「そう。何か地味な色合いの鳥。速すぎてよく見えなかったけど、時々光ってた」


まるでロードランナーのような勢いの───っつーか、乳白色に明滅してたって言うか。


「光ってたんだ───それきっと、アリカントだよ。里和(リワ)はアリカントを捕まえようとしてたのか……相変わらず無茶するな〜」

「アリカント?」

「うん、鉱物が主食の魔物だよ。金とか銀なんかの高い鉱物ばっか食べるから、坑夫達からは嫌われてるんだけどね。メグっちには()えるんだね」


何つー贅沢な物を食べる鳥なんだ。

そりゃ人間からは嫌われちゃうね。


でも人間には価値のある貴重品でも、それを(かて)としてる生き物にとってはただの食料でしかなくて、彼らにとっては人間こそ自分達の食料を奪う極悪人でしかないんだろうなぁ……まあ、今回は魔物だけど。


「サーシャには見えないの?」

「ボクだけじゃないよ。普通は見えないんだ。だから里和、メグっちに来て欲しかったんだね」


そこでちょっと甲高い声質のソプラノが私達の話の間に割って入ってくる。


「まあ、当たらずとも遠からずね」


落ち着いてきた砂塵の薄暗闇の奥から、少しくたびれた様子の姚冶(ようや)なエルフが、柄頭(ポメル)に水晶のついた魔杖(ワンド)を頼りにしながらこちらへ歩いてきた。


「里和ちゃん!」


塵も積もれば山となる

気づけば50話……地味に終わる気がしません

またぼちぼち加筆修正すると思いますが、何とぞ良しなに

【’24/02/17 18:57 地味に加筆してます】

【’24/02/22 部分修正してます】

次話冒頭部分を今話末尾部分に移動させました

【’24/02/23 01:03am 後半部分修正してます】

【'25/05/11 誤字修正しました】

こんな長い事間違いに気付いてなかった自分に驚いております……お恥ずかしい(^_^;ゞ

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