表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/215

イティプ・アプク【3】


何、あれ……?


私は思わず息を()んで後退(あとずさ)りし、そのままサーシャの左(そで)(つか)んでしまっていた。


大型犬ぐらいの大きさの奇怪な甲殻(こうかく)を持った魔物が、坑道の壁からこちらをそっと(のぞ)いているかの様に佇立(ちょりつ)している。


ヤシガニに似た身体に花咲(はなさき)ガニのような無数のトゲを(まと)い、若干(じゃっかん)細めのハサミをこれ見よがしに(かか)げ、その頭には角のようなトゲらしきものがあり、それを(はさ)むようにして有茎(ゆうけい)の目が赤く(あや)しげに光っていた。


「さ、サーシャ……」

「あれ、見た事ある。確か、ババイとかいう地下によく出る魔物だよ。そっか、こいつら相手じゃ里和(リワ)たちが苦戦するの当たり前だ」


後から聞いた話だが、ババイはなかなか面倒臭(めんどうくさ)い魔物らしく、硬い金属のような甲羅(こうら)で身を守り、同じく強力な両手のハサミで連続的に攻撃をし、手足やハサミなど体の一部を()り落とされても何度も再生するという。


こちらが一方的に強力な攻撃をすると闇に(まぎ)れて姿を消したり、周囲の風景に擬態(ぎたい)し、そこに女王ババイがいれば仲間を際限なく呼び続けるのでとにかく倒すのが厳しくなるらしい。


しかしその時の私達はと言えば、美女エルフに置いてけぼりにされてほぼ丸腰の状態。


「ど、どうすんの?」


私がおたおたしながら妙に落ち着き払っている茶髪の青年に訊くと、不意に彼のお腹が盛大に鳴った。


え………何、その緊張感のない音は?


(にわか)にうなだれて元気が無くなるサーシャ。


「お腹()いた………」

「サーシャ!」


流石の私も呆れて苦笑いのまま思わず彼の名前を叫んでしまっていた。


この緊急時にそれは無かろう……。


ところが私の叫びが合図になってしまったのか、ババイが強烈な金属音を立ててこちらに迫ってくる。


わーーーーーっ!!


すると当然のように茶髪の青年は私の前に出て、両手でガッとババイの両方のハサミを捕まえると、そのまま物理的にあり得ないほどの大口を開けて飲み込んでしまった。


えっ?


えっ…………………??


ぎゃーーーーーーーっ!?


その顔で、蜥蜴(トカゲ)喰うかや、不如帰(ホトトギス)………。


「サーシャ、それ、好きな子の前でやらない方がいいよ」

「えー、何で?」

すっごく(なーまら)不細工(ぶさいく)な顔になるから」


普段サーシャってば結構イケメン君な分、あの食事風景は千年の恋も冷める感じだよ……本気(マジ)で。


「そんな事言われてもなぁ。ボクお腹()いてるし」

「あ、私の前では気にせず、どんどん食べてくれちゃって大丈夫大丈夫、無問題(モーマンタイ)


どっちかって言うと面白いものを見せてもらえた感じで。

だから里和ちゃん、サーシャ連れてきたかったのかも。


すると茶髪の青年は不服そうな表情になる。


「それって───」

「それよりあんな硬そうな魔物、食べちゃって平気なの? 毒とかないの?」

「ボク、毒耐性はモノにもよるけど、あるから平気。硬くても、胃袋3つあるから大丈夫」


………牛?

牛は4つか。


黒い火竜(ズメイ)は雑食っぽいから、草食動物の反芻(はんすう)とかはないのかな?

いや、それより───


「サーシャ、まさか、人間とかは?」


私は急に(こわ)い考えに(いた)り、訊かずにいられなかった。


炎瑪瑙(ファイアーアゲート)双眸(そうぼう)が妖しげな光を(たた)えて見つめてくる。


「メグっち、ボクに食べられたい?」

「………」


意味合いが違って聞こえるのは気のせいだろうか?



【’24/02/15 23:45 誤字等訂正追記しました】


【’24/02/16 19:54 誤字等訂正追記しました】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ